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軍師官兵衛レビュー 書籍・映画

【軍師官兵衛感想マンガ】39話「跡を継ぐ者」将来の大河への悪影響を心配するレベルに

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(全50回のレビュー一覧はこちらから

こんばんは、武者震之助です。

第三十九回「跡を継ぐ者」のアバンは、家康が語る形で「官兵衛こそが次の天下人と秀吉が考える理由」が披露されました。どうやら黒田家には錚々たる勇士がいるそうですが、オリーブオイルを飲む能力が勇士としての資質ならば納得できますが、そうでないなら一体いつそんな家臣が出てきたか甚だ疑問です。

オリーブの人「味方を投げ飛ばしたり活躍したじゃん!」(霜月けい・絵)

オリーブの人「味方を投げ飛ばしたり活躍したじゃん!」(霜月けい・絵)

茶々のドヤ顔だけは褒めてやろう(ドヤ)

続いては茶々の懐妊に浮かれる秀吉の場面です。

茶々、秀吉、三成以下、これで豊臣家は安泰と浮かれまくっていますが、当時の産褥死や乳幼児死亡率を考えたらここまで喜ぶのは大げさという気がしますし、茶々はただの嫌がらせのためにおねのもとを訪れています。

彼らが現代人思考の持ち主であるのだとか、脚本家が未来を逆算して書いているのであればわかりますが、そんなことはドラマの作り手としてはならないことです。茶々はドヤ顔の作り方はうまいのですが、不明瞭な発言でもごもごと棒読みするので、もうちょっと発声を何とかして欲しいものです。

茶々「秀吉が滑舌よすぎるんです」(霜月けい・絵)

茶々「秀吉が滑舌よすぎるんです」(霜月けい・絵)

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おれたち口ひげ似合うよな、な、な、な(絵・霜月けい)

おれたち口ひげ似合うよな、な、な、な(絵・霜月けい)

このあとは官兵衛の隠居宣言です。

要するに「俺が有能すぎて関白を警戒させちゃうから」と真剣に語るわけですが、必殺技が唾飛ばしと恫喝だけのいい歳こいてもヤンキー系の官兵衛がそんなことを言うと、まるっきり地獄のミサワにしか見えなくてつらい!

しかもこのあと、先週さんざん馬鹿にされてハブられていた長政が、いきなり家臣からの信頼を集めて家督を譲られているから、もう脚本家はせめて自分の書いたものを見直せと怒りすら感じます。その怒りを煽るように、ピンク着物の糸がなんかくだらないことを言います。糸の「あなたが家を繁栄させることで死んだ者も報われます」発言はあまりに無神経です。宇都宮一族をこれ以上鞭打つのはやめて欲しい……と思っていたところに、

「あーーーーおいしぃーーーーー!」

という、糸の調子っぱずれな高い声がテレビから流れてきて、もう……もう…精神力を鉋で削られているような気分になりました。この糸の跳ねっ返りキャラは一体誰のニーズなのか……そのあとは顔がテカった光の愛妻ショー!

 脚本家は家族を人質にとられていて、「糸と光を毎週出してコントやらせねば、おまえの家族の身柄は保障できない」と脅迫でもされているのでしょうか!?

女衆が消えて、いよいよ官兵衛と秀吉のマンツーマン対談になりました。秀吉の凄味というのは、ドスの利いた声を腹の底から出すのではなく、官兵衛につられたのかやたらでかい声で怒鳴り散らすだけです。これではまるでドラマというよりは猫の発情期のようです。

 

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官兵衛の隠居話はなぜか世間を騒がせており、家康のところまで届いております。

徳川家の皆さんは大変親切なので、どうして官兵衛の隠居が問題なのかを、君臣で語り合って解説してくれます。全部台詞で説明するのはドラマの禁じ手ですが、徳川家の皆さんは耳にやさしい常識的なトーンで穏やかに話すため、まるでオアシスのように心が洗われます。

大坂城で起こっている出来事を、はるか遠くの駿府でなぜこうも詳しく語ることが出来るのかはわかりませんが、あまりにオアシスなので敢えて無視します。むしろずっと徳川君臣が語っているドラマでよかったんだ!

徳川家のオアシスは悲しいことに一瞬で終わり、秀吉と茶々コントの時間です。この場面ではしばらく見ていなかった、頭痛を誘発するような信長愛用赤いろうそくが再登場します。正直、こんなものは二度と見たくありませんでした……。

次に秀吉が自分を中傷する落首を見つけてブチギレる話です。ここで秀吉の怒りを表現する演出は、雷鳴、焼かれる手紙のアップ、そして「あ〜〜〜〜〜〜!」と叫ぶ秀吉とそのアップと、どんな鈍感な視聴者にも怒りを見せ付ける幼児性たっぷりです。まあ要するに、陳腐そのものです。演出全体が陳腐すぎて、おね迫真の演技ももはや白々しく思えます。

おこっちゃうよ~。ほらおこっているっでしょ(霜月けい・絵)

おこっちゃうよ~。ほらおこっているっでしょ(霜月けい・絵)

秀吉の怒りをなだめるため、おねが最後の切り札として官兵衛に頼ってきました。ここでもまた官兵衛の周囲を回るカメラワークを披露しますが、くどいわりにはよい演出とも思えません。
このあとスローモーションで歩く秀吉と三成に大仰な効果音を重ねる陳腐な演出も入りますが、最近は脚本のしょうもなさをこうしたくどくしつこい演出と音楽でごまかす場面が増えてきましたね。かえってひどさが際立つだけですが。

官兵衛「秀吉は人を殺したことがない!」視聴者「えっ」秀吉「えっ」

そしていよいよ、官兵衛の秀吉説得パートです。

「殿下はこれまで人を殺さずに来ました」

はい、早速ツッコミ入りました。

いやいやいやいや、そんな戦国大名いないから。秀吉はドラマで省かれただけで見せしめにたくさん人殺してきているから。
官兵衛はこのあともメンチを切りながら、ドスの利いた声で怒鳴り散らし、一般論を喋るだけ。こんな奴が切り札なら豊臣の天下はもうだめだと思わせるものがありました。対照的に三成はクールで礼儀正しいものですから、そりゃまあギャンギャン喚くヤンキー野郎よりはこちらを頼りにしたくなるなと。

ところがなぜか秀吉は、官兵衛の説得になぜか納得するのです。そして危険ドラッグをキメたかのようにはしゃぎだし、「金を配れ!」とはね回ります。本編を見ているはずなのに、予告編並にはしょされているのではないかと思うほと、唐突すぎて見ていてつらくなってきました。

そうこうしているうちに、茶々改め淀殿が男児を産みました。ここで気になってくるのが、世継ぎ問題をクローズアップするのであれば秀次あたりを出すべきではないかという点です。赤いろうそくをバックにしてはしゃいでる暇があるならば、そのあたりを描くべきだと思うのですが。秀次は切腹の前にいきなり出てきて、いきなり退場するのでしょうか。

それと淀殿の出産の際に非常識な文句を垂れ流すおねの侍女・マグダレナですが、彼女は小西行長の母です。そんな立場でこんな淀殿を侮辱する台詞はおかしいと思います。

それ以上に、落首であれだけブチギレていた秀吉がこんな危ない台詞を聞いたならば、マグダレナのみならずおねすら危険が及ぶのではないかと思います。どこまで脇が甘い人物ばかりなのでしょうか。

今週のラストは長政の家督相続ですが、先週までの暗愚っぷりはすっかりロンダリングされて、さわやかにこやかすっかり好青年に変貌しています。こんな週替わりで性格を変えられても戸惑うばかりです。そうそう、賤ヶ岳をまるごとカットされた福島正則は、三成の悪口を言う要員Aにされました。

このあとようやく大河らしい徳川家と北条家の場面が入ります。北条氏政からは戦国を感じます。清水宗治といい、宇都宮鎮房といい、出番が短い脇役はよいのですよねえ……。

永遠の若者たちが重臣の黒田家…官兵衛も如水になれませんな

今週ラストは黒田家臣団が当分隠居できないと言い合いますが、全員コントっぽい口ひげをつけただけで、演技にもメイクにも加齢が感じられないため「そりゃおまえらは隠居できないよ!」とつっこまざるを得ませんでした。

今回の官兵衛隠居するしないを見ていて感じたのは、なぜもっとドライにできないのかということです。

家督を譲る理由に幽閉以来の体調悪化や、長政体制を盤石とするためといった実際的な理由を入れてもよいのではないかと思いましたし、三成との牽制のしあいは、秀吉が三成をえこひいきしていてずるいとか、そんな理由に見えます。

官兵衛は播磨方面の攻略が終わって用済みとなり、内政外交手腕に長けた三成がかわって浮上してきたとか、そういう大人も納得できるような理由にすることは何故できないのでしょうか?

二十一世紀の今、豊臣を駄目にしたのは三成と淀殿だという、手垢がついていて戦国ファンをうんざりさせる説にのっとって陳腐なドラマにするとは呆れます。どうやらこのスタッフたちは、重厚でおもしろいドラマにすることよりも、官兵衛をロンダリングすることしか頭にないようです。ですから官兵衛周囲の人物の造形が週ごとに変わり、陳腐な演出でごまかす局面も増えるのでしょう。

原点に返って、ともかくおもしろい作品を作るという志を取り戻して欲しいものです。今年や来年という短いスパンでは難しくとも、『真田丸』あたりではそうなって欲しいものです。

武者震之助・記

霜月けい・絵
38話はこちら「追い込まれる軍師」を追い込んでみる

40話はこちら「小田原の落日」1話目のシーンに戻ったが主人公の成長見られず

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