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軍師官兵衛レビュー 書籍・映画

【軍師官兵衛感想マンガ】第45話 「秀吉の最期」でついに家康おまえも感染か

更新日:

 

こんばんは、武者震之助です。第四十五回「秀吉の最期」のレビューの前に、要約すれば「こんなにおもしろい今年の大河、でもどうして賛否両論なのでしょう?」と言いつつ褒めてばかり、お約束の提灯記事を見かけたのでちょっとつっこんでみます。

  • 「史実に忠実なのがいい」との声も→ 「朝廷黒幕説」だの、長政と糸の合コンノリ結婚が史実だと思っていたり、そもそも官兵衛の事績を知らない人にはそう思えるのでしょう
  • 官兵衛の助命懇願土下座は見たことのないシーンにしたかったから→官兵衛ファンが絶対に見たくなかったシーンの間違いですよね?
  • 『平清盛』と『八重の桜』と比べて視聴率が堅調→ この二作は題材的に数字が取れないと言われていたもの。源平、幕末のうえに主人公がマイナーだったこの二作品ではなく、戦国三傑大河と比較すべきでは? 題材の有利不利を考慮したら視聴率が巻き返したとは到底言えません
  • 官兵衛のような軍師の場合、戦場に着くまでが勝負。「中国大返し」で秀吉軍が必死に走るシーンや、食料の補給など兵站関係のシーンを映すことで、戦いの裏にあったやりとりや人間模様、ドラマを綿密に描きたかった→ そんなこじつけで実際に官兵衛や重要人物が戦中に活躍した事例をカットしまくらないで欲しいわけですが。人間模様やドラマって光が顔をテカらせてぷるぷるしたり、糸がウザいドヤ顔でエールを送るところですか? その場面が本当に視聴者のニーズに合っていたとお思いですか? ああ、あと『中国大返し』のマラソンと水をくだされのループは思い出すだけで悲しくなってくるのですが
  • 放送に合わせ、多くのユーザーがツイッターで“実況中継”を行うなど、ユニークな盛り上がりもある→ ツイッターもの盛り上がりはツールとして定着したからでしょう。それを言うなら再放送中の『独眼竜政宗』だって盛り上がっていますよ。『風林火山』の頃はMAD動画作りで盛り上がっていたし、ツイッターならドラマ専用アカウントまであった『平清盛』、あんつぁまの見事な筋肉が話題沸騰した『八重の桜』だって活発でしたよね。この二作の時は記事にしなかったのに、なぜ今年はこんなことを褒めるのでしょうねえ
  • 「中間管理職の官兵衛に共感するという声も→ 人それぞれでしょうね。俺なんか何やっても褒められないのに、官兵衛は失敗ばっかりなのに「流石官兵衛じゃ!」とえこひいきされていてムカつく人だっていると思いますが
  • 官兵衛みたいな人が会社にいたら、すごく発展したのではないか。今の人も官兵衛から学ぶことは多いのではないだろうか→ えっ、あの死に神が会社に欲しいって自殺願望!?

 さて番組にも辛口でレビューしていきましょ

はい、このへんにしてそれではレビュー本題です。

今週はいきなり小早川秀秋がまだ十六歳で、朝鮮において総大将を任されたと黒田家臣が愚痴りあっています。こんな前振りもなしに出すくらいなら、なぜ先週小早川隆景の死に際にふれておかなかったのでしょうか。

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それもそのはずで、小早川秀秋は同い年の熊之助へと場面をつなぐために言及されたようなものなのですね。熊之助を乗せた船はアバンで沈没するわけですが、この悲報を受け取る場面がプルプルしつつ気丈に振る舞う光と、私が止めなかったのが悪いとメソメソする糸という、うんざりパターンなので出かけた涙もひっこみます。

次の場面は、先週オリーブオイルまみれになりながら……いや、酒飲み勝負でぶんどった日本号を振り回す太兵衛の筋トレです。猛将ぶりを飲酒とトレーニングでしか発揮できない母里太兵衛って一体。

先週のオリーブさん(霜月けい・絵)

先週のオリーブさん(霜月けい・絵)

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次男沈没 孫がうまれてハッピー?

この太兵衛に如水が熊之助と太兵衛の息子が乗っていた船が沈んだと書状を持って来て、君臣で感動的なBGMを背景に「申し訳ありませぬ!」「こっちこそすまぬ」「うわーーーーん!」を繰り返します。

もう二度もなく場面を繰り返したのだからそろそろいいだろうと思ったら、光が熊之助の書状を読む場面にうつります。ここで侍女が産まれたとかなんとか言うので、てっきり熊之助誕生を回想するのかと思ったらば、糸が女児を産んだ場面でした。

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秀吉と家康のやりとり つたない脚本を熱演がカバー

もうろくのはじまり(霜月けい・絵)

もうろくのはじまり(霜月けい・絵)

やっと子供が死んだ、孫が生まれたというファミリーパートのリピートが終わるかと思ったら、秀吉耄碌(もうろく)パートが始まってがっかり感が……。秀吉は何かを悟ったのか「醍醐の花見が最後の豪遊だったかもしれんのう」と語り出しますが、まあ死神官兵衛をブレーンにしたわりにはここまで長持ちしたわけですから、秀吉はやっぱり傑物だと思いますよ、うん。

秀吉と家康の会話は、どの三傑ものでも定番の「秀頼を頼む」「任せてくだされ」というもので、脚本を切り詰めたら三十秒で終わりそうなところをやたらと引っ張ります。脚本がスカスカなのを、ベテラン役者の演技でそれらしく見せているだけですな。

ベテラン役者のマンツーマントークで引っ張るパターンはこのあとも続き、秀吉とおねが「流石は官兵衛じゃ」トークをしだします。ここでおねが如水をさして「得がたき軍師」と言いますが、何かの聞き間違いでしょう。

初孫パートを挟むので秀吉逝去へ猛ダッシュ

そろそろ朝鮮情勢が見たいなと思っていたら、初孫を抱く如水と無理矢理ハイテンションに振る舞う光というファミリーパートです。もう本当にファミリーパートとベテラン役者マンツーマン水増しパートのリピートしか引きだしがない……。で、この場面の「熊之助は生きておるはずでございまするぅ」という光のニタニタ現実逃避笑いからの号泣が怖すぎてですね。胸焼けしそうです。

熊之助の死で尺を採って、もう半分くらい経過しております。あと残り半分で秀吉を死なせなければなりません。さあ脚本家、腕の見せ所ですよ。

それにしても如水最大の引き立て役でもあり、序盤からここまでドラマを引っ張ってきた秀吉の死に、ほっとしているのは何故でしょう。来週から脂ぎってギトギトとくどい竹中秀吉を見なくてすむのかと思うと、鶴太郎政職の退場以来の安心感があります。

「どうじゃワシの凄さがようやく分かったか」(霜月けい・絵)

「どうじゃワシの凄さがようやく分かったか」(霜月けい・絵)

ドラマ開始前は期待度の高かった竹中秀吉だったが

竹中秀吉は、キャスト発表の時点で間違いなく本作屈指の見所でした。以前竹中直人さんが主役を演じた大河ドラマ『秀吉』では、秀吉晩年の暴虐ぶりは描かれませんでしたから、今作でその補完ができると期待した方も多かったと思います。

結論から言えば、今年の秀吉によって『秀吉』は晩年をカットして正解であったと確認できたと言えます。竹中さんがよい役者であることは確かです。しかし、陽性の演技が魅力的な彼では、晩年の秀吉が持つ狂気や陰性の部分は似合わないのです。今週で最後の出番であるわけですが、死の床においてもどこかユーモラスで、発声は元気がありすぎて、はっきり言いましてまだまだ死にそうには見えないわけです。

そうした演技の質だけではなく、ドラマの質すら竹中秀吉の再登板に影響を受けた部分があります。
本作の秀吉も、『秀吉』での決め台詞であった「心配ご無用!」をトレースして使用しておりました。大河ファンをニヤリとさせたいファンサービスのつもりかもしれませんが、一度や二度ならばよいところをくどいほどに使い、かえって二番煎じのいやらしさが出ていたのです。また、新たな作品を作るという気概よりも、過去の栄光にすがってファンを引き留めるという守りの姿勢が感じられ、私は失望を感じました。

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陰のない竹中・岡田のミスキャスト

以前、岡田准一さんには知能派の如水よりも、溌剌とした真田幸村の方が似合うのではないかと書いたのですが、豊臣政権の影の部分を担い、かつ主役と準主役である如水と秀吉の二人が陽性でミスキャストであったというのは、本作のかなり致命的な欠点でしょう。しかも脚本家は人物の書き分けができないタイプなのか、かなり重要な人物まで出番を極力削って、後半はこの如水と秀吉のぶつかりあう場面ばかりにしてしまいました。

さて、秀吉に思いっきり駄目だしをしたあとで、家康が出てきます。この家康、如水や秀吉と比較すると相対的にマシに見えるのですが、本当に相対的だったんだよなあと悲しくなるのがこの次の場面です。

これまでまともだった寺尾家康も悪演出の感染

秀吉の訃報を聞いた瞬間、家康の手元にあたっていたカメラがいったん遠くへ引き、ドンドンドン……と重低音を鳴らしながらカメラがじーっと寄ってきます。で、アップになった家康が片目をこすると、それまで閉じていた家康の目が開き、ジャジャーンとBGM。

眠いから目をアップってわけではないです

眠いから目をアップってわけではないです

やめてくれよ、もう。邪気眼かよ! 子供向け戦隊ものでもこんな尻の青い演出しないよ! ギミック系家康は『天地人』のコブ家康でこりごりなんですよ。本作の雷鳴を背後にドスドス歩く三成、スイーツを食って笑う淀、そしてこのジャーン目を見開く家康……こういう中二病をこじらせきった演出は誰得なのでしょうか。

家康が中二病をこじらせている一方で、淀はおろおろと焦るわけですが、死んでからでなくて死ぬ前にもっと動揺しているべきだと思うのですけどね。死ぬ間際は枝毛探しながらスマホをいじるフードコートの女子高生みたいな態度でしたよね。どいつもこいつも、もう。

いやあ、早く来て欲しいですねえ、乱世の終わり。それが意味するところが中二病であるならば、戦なんて終わった世界の方がよいに決まっています。これ以上見ていると、中学二年の時に書いた黒歴史ノートを思い出して身もだえしたくなるので、勘弁して欲しいものです。

 八重の桜と比べたくなる肉親の死の描き方

今日はもうちょっとだけ駄目だしを続けさせてください。

今週の熊之助の死。家族の死は涙の稼ぎ時だと言わんばかりですね。ここで比べたいのは、昨年の『八重の桜』のおける肉親の死です。

今週の如水と同じく、我が子覚馬と三郎の訃報を知った権八は、その時泣くわけでも取り乱すわけでもなく、目を真っ赤にしながら「武士として死を以て奉公できた三郎はよかった。覚馬はその機会もなく無念であったろう」と感想を述べます。父として子の死を悼む気持ちは、ひとまずは見せないわけです。そのあと、用事があると席を立った彼は、妻子の目の届かぬところで背を丸め、声を押し殺して泣きます。

兄弟の訃報を知った八重は、光と同じく嘘だと信じ、やはり泣きません。ところが訃報からしばらくたったあと、弟と同じ年頃の少年に「三郎」と声を掛けてしまい、そのことを指摘された八重は取り乱し、それまで見せなかった涙を見せて泣き崩れます。

権八と八重は、幕末を生きる武家の一員であるという意識と、肉親を失った人間としての苦しみの間でこのような反応を見せます。肉親の死は悲しいのですが、武家の規範としてはそのことをおおっぴらに出せないわけです。そこが現代人である視聴者との違いですが、その奥には時代を超えて苦しい感情があるわけで、それが見るものの胸に響くわけです。

感情むき出しの「サムライ」のうすっぺらさ

一方で本作の人物は、如水、光、太兵衛、糸と、皆揃って感情を剥き出しにします。こうやって皆が合唱するように泣けば、もらい泣きくらいしたくはなるかもしれません。しかし、武家の父である哀愁が丸め震えた背中なら伝わってきた権八とは、まったく深みが違うと言わざるを得ません。そしてこうも熊之助の死で皆泣くまでやめないというのは、時間稼ぎのように思え、しつこすぎてしらけてしまうのです。

何度か指摘していることですが、現代人とまったく同じような感情の出し方だけで描くつもりならば、戦国時代を舞台にする意味が感じられません。残念ながら、こうした脚本と演出をするスタッフである時点で、本作はもう失敗していたと言えるのではないでしょうか。

頼むから再来年の本多小松あたりは、今年のへなちょこ光みたいにしないでくださいね。

武者震之助・記

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霜月けい・絵




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