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軍師官兵衛レビュー 書籍・映画

軍師官兵衛感想マンガ最終回50話「ヤンキー魂は永遠に不滅です!」

更新日:

こんばんは、武者震之助です。今日でついに最終回ですね
最終回だから好意的に見ようと頑張ってみますが、きっとたぶん無理です(冒頭の馬鹿笑い如水を見た瞬間そう判断)。裏の古田織部についての番組の方が戦国ファンにはよろしいかと思います。

さて、始まりました。
如水が九州でヒャッハー!していた頃、関ヶ原はまさに決戦の時を迎えていました。どういう経過だったかまるでわかりませんが、ともかくクライマックスを迎えているようで、ここでやっと駆け回る騎馬武者が出てきた……
と思ったら!
場面が切り替わって輿の上でシエスタを楽しむ如水です。

起きろ!
寝たまんま指示出すな!!
で、ここで「徳川に味方すると見せかけて九州ぶんどるぜ!」とかべらべらしゃべって馬鹿笑いです。そういうの、徳川方の忍びにでも聞かれたらただじゃ済まないと思うのですが、このへんのセキュリティ意識のなさが戦国らしさを薄めている一因かと。

ここでオープニングになります。
CGやプロジェクションマッピングを多用し、水死体みたいなイメージをその合間に入れてきたこのオープニングとも今回でお別れですね。名残惜しくはありません。

松坂桃李の次回の大河に期待しよう

オープニングのあとは関ヶ原の映像が流れます。騎馬武者が元気に走り回って大砲がうなりをあげても(ちなみにもはやお約束の、『葵』からの使い回しです)、肝心の誰がどこで何をしているかがわからない不親切仕様です。
布陣図くらい出してもよいとは思います。

こんなわけのわからない中で熱演する家康と長政、本当に頑張っています。長政、本当にいいですねえ。松坂桃李さん、彼は猛将も知将もできる可能性を感じます。一年間収穫がないと思った本作ですが、松坂桃李さんが時代劇にとてもよく似合うとわかったことは、本当にうれしく思います。

秀秋についてはそうですね……まあいつも通りですよね。

今ドラマの良心黒田長政です(霜月けい・絵)

今ドラマの良心黒田長政です(霜月けい・絵)

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戦国にしてはマイルドなヤンキーを貫く

『葵』の使い回ししか迫力のある映像はなかったのかと思っていると、やっと九州の如水陣が出てきました。かっこいいBGM、それなりに頑張っている戦闘シーン、まあまあマシかなと思っていると数分で終了。そしてそのあと、如水の元に関ヶ原の結果が届きます。あれだけヒャッハー!していたから落差が大きいですね。はなっから無理のあり計画でしたよね……と思っていたら如水、パンチで板を殴って最後までブレないヤンキー魂を見せ付けました。どう見ても完全に山賊の親玉です。

家康は大坂城に入り、淀と面会します。淀は抑揚のできていない発声のため、そのあたりがはっきりしている家康との対比が目立ちます。台詞の読み方をもうちょっと練習して欲しかったですね。残念な淀でした。

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名シーンも「さすが官兵衛」の台詞で台無し

次にとらわれの三成、行長、恵瓊の処刑前となります。長政が三成に向かって陣羽織をかけます。この場面はとてもよかったですね。恵瓊が「流石如水殿の息子」と長政に言わなければもっとよかったのですが。

長政の出番はさらに続きます。家康と面会し、さらにそのあと如水の元へ戻り、その顛末を報告します。家康が自分の手を取って褒めたと言うと、如水が「反対の手で家康ぶっ殺せばよかったじゃねえか!(意訳)」と言います。
講談でありがちなネタですが、長政が家康を殺したところで如水に天下を巡ってくるわけもありませんし、そうなったら確実に長政は死ぬでしょう。ファミリー路線でさんざん感動を狙ってきておいて、ここで長政が死んでも家康ぶっ殺せばよかったのによぉ、はないだろうと思います。
そもそも序盤から散々待望してきた戦のない世になったのに、何を今更言っているのでしょうか。家を守った我が子に対しこんなことを言うとは、もうどうにかしてしまったのでは。

ちなみに歴史考証の小和田哲夫先生はこの左手エピソードに否定的で、入れたくなかったそうです。この場面を見て小和田先生が悔し涙を流しているのかと思うと、別の意味で泣けてきますね!
確かに有名な挿話だけど、平成のこの時代にこんな古くさいでたらめ挿話を持って来なくてもよかったですよね。

(参考「黒田官兵衛が長政に「ばかもの!お前の左手はなにをしていた」は200年後の創作」

このあと家康と如水のミーティングがあって、如水がドヤ顔で「負けたぜ、おまえにはよ」となぜか思い切り上から目線で家康を認めます。いや、どう見ても一目でおまえが家康には勝てないってわかるから。こんな演技力的な意味で公開処刑とも言える場面を、どうしてこんなに長々と流すのでしょうか。こんな場面をやるくらいなら、『葵』の使い回し映像をもっと見たかった!

長政は刺し違えて死んでもいいがファミリー路線は譲れない

最終回までファミリー路線を貫くブレなさも発揮されます。長政と栄の間に子供が生まれた場面が入ります。本当にこのスタッフ、時間稼ぎに出産場面とかちょくちょく入れますよね。最終回と言ったらどんな作品でも無駄をそぎ落とされているものかと思うのですが、私の見通しは甘かったわけです。

(参考:「黒田長政から離縁された糸姫と迎えた栄姫のその後【軍師黒田官兵衛百物語86話】 」

家康が将軍となり江戸幕府となったあと、如水は北政所と情勢を語り合います。私の目が釘付けとなったのは、秀吉の仏壇の蝋燭が真っ赤だったことです。信長の趣味の悪い部屋を飾り、秀吉と淀の悪趣味なインテリアとして登場し、さらにここでまで使い回されるとは!

スタッフのリサイクル精神を垣間見た思いがします。合戦シーンだって『葵』のリサイクルですもんね。

いよいよ最終回らしく、如水の老けメイクも濃くなってきました。如水は長政に今後の心得を語るのですが、長政と如水の発声の差が気になりました。如水はぼそぼそとした話し方になると、棒読みでかなり聞き取りにくくなっています。一年と通してずっとこれは感じていたのですが、岡田さんの発声はどうにかならなかったのでしょうか。ドスを利かせても、今回のような声をひそめた場面でも、聞き取りにくく腹の底から出ていないのか、本当に聞き取りにくいし抑揚もついていなかったです。この点、長政役の松坂さんの方がはるかにしっかりとできていました。

このあと場面、黒田家臣たちと光も出てくるわけですが、彼らもしっかりと老けメイクをするべきでした。女優の老けメイクが弱いことは大河では毎年指摘されていますが、今年は男優もちゃんとしていなかったと思います。光なんて一本の白髪もありません(昨年の最終回、40代設定の八重は白髪が少しりました。光はその八重より年上のはずですが)。

メイクだけではなく、演技全体も経年変化が少なく、特に光の一本調子の声を震わせるだけで押し切りましたね。演技ができない俳優ばかりではないはずですので、演出面に大いに問題があるのでしょう。あ、それと最終回の主人公臨終まで出すほど、侍女のおふくは重要だったのでしょうか。この人は生きてここにいるのが不自然なほどの高齢ではないかと思いますが。

さよなら!1年間ありがとー(霜月けい・絵)

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何年たっても見た目も演技も変わらない淀君

如水の死から十一年後、場面は一気に大坂の陣まで飛びます。で、淀もまた老けていません。演技も変化なしです。大坂で籠城する淀といえば、作品によっては衣装も替えて鉢巻薙刀を身にまとっていたりしますが、秀吉の寵愛を受け高慢だった頃からまるで変化していないとは……。

あのころから変わらない(絵・霜月けい)

あのころから変わらない(絵・霜月けい)

この大坂に長政の元から出奔した後藤又兵衛がいると説明されますが、その出奔の過程も何もかも省かれているので感慨も何もありません。こういう、説明なしでいきなり意味ありげに殺して、BGMだけで感動させようとするのは、前回の味噌汁武将で終わりにしてよかったんですよ。あれよりは又兵衛の方が多少マシですが。

又兵衛のあと淀と秀頼の死が描かれます。三成といい、彼らといい、淡々とノルマをこなしているだけという感じはありますね。

そして次にまた赤いキャンドルが揺れる秀吉の仏壇が! ヤンキー魂と赤い蝋燭だけは不滅だったな!

(参考「大坂城陥落!豊臣国松ら秀頼の子供たちはどうなった?【その日、歴史が動いた】」

家康「官兵衛の望んだ平和な世が」←おいおい30分前の暴走老人忘れるなよ

ここで家康がコメント。「如水、おまえと約束した戦なき世がようやく始めるぞ……」

光と長政も「乱世がやっと終わりました」と感動もひとしお。如水のヒャッハー!を喜んでいたことも、光はすっかり忘れたみたいですね。そんな光の前に如水の幻が見えるのですが、ガンをつける様子にヤンキー魂を感じます。一年間、官兵衛は戦なき世を望んだと見せかけて最後の最後でヒャッハー!するなど態度にブレがありましたが、ヤンキー魂だけは不滅で貫き通されたなあとしみじみ。

あ、あと赤い蝋燭も。

総評:ヤンキー魂(と赤い蝋燭)は不滅、それが『軍師官兵衛』

ではなく、最終回スペシャルということで、もう少し続きます。

 

最終回スペシャルその一「官兵衛への懸念は当たっていたのか答え合わせ」

放映の一年前、私は『軍師官兵衛』がこうなったら嫌だという予想を書いておりました。果たしてそれがどこまで当たったか、ここで答え合わせをしようと思います。(こんな「軍師官兵衛」はイヤだ!NHK大河ドラマ 7つの悪夢的予想

 1 一人の妻を愛し尽くしたことがメーンテーマの「恋愛」大河ドラマ→◎(正解)

これは当たったと言えるのではないでしょう。しかも予想をさらに上回る強化ぶりで、家庭人としての官兵衛も不必要なまでに強調されていました(中国大返しの最中に愛児を抱く場面が入る等)。

官兵衛のみならず、長政夫妻の合コン馴れ初めを経ての戦国武将の妻がこんなにツンデレなわけがないバカップル、荒木村重とだし、無愛想なキャバ嬢・淀に貢ぐ成り上がり社長・秀吉とか、はたまた栗山善助とお道とか、一体どこにそんなニーズがあるのかと言うくらいカップル要素がつめこまれていました。

が、しかし……

どのカップルもイマイチ萌えないというか、薄っぺらい描写でした。例えば長政夫妻は政治がらみで離縁されるのですから、もっと生木を裂くような描写をしてもよいところですが、糸が鬱陶しすぎて退場して安堵させられる始末。これは何も男女だけに限らず、家臣や親子の絆すらなんだか薄っぺらく、描く時間の割に印象に残りませんでした。

これでは恋愛目当ての視聴者もがっかりしたのではないでしょうか。

2 官兵衛がウルトラマン並みに正義の味方すぎる→△

軍師である主人公がこうなったら一番がっかりだと懸念しておりましたが、これは当たったとも言えますし外れたとも言えますが……今にして思うとむしろこの予想が当たっていたらどれほどマシだったことか。

この予想は的中と私も11月末までは思えていました。天下に平和をもたらすどころか生き延びるのが精一杯の頃からやたらと平和の尊さを語った前半。床を拳でブン殴りながら「ムボームボー!」と叫びつつ朝鮮出兵を批判していた後半。が、なぜか天下分け目の直前に、九州の片隅から天下を狙う山賊行為を開始!

こんなふうに予想を裏切られてもうれしくないよ!

いっそ九州から長政と家康をサポートし、乱世を終わらせるのであればどれほどマシだったことでしょう。トホホ。

 3 ジャニーズで予算がなくなったので合戦シーンはナレーション→◎

しかし、予算がないというよりはめんどくさくて逃げていた気がします。予算は結構ガッツリ使っていたと思われるんですよね。

わざわざ水責めで堤防を作りましたし、馬や騎馬武者もやたらと投入されていましたし。

しかし甲冑を着た武者が斬り合うのではなくマラソンして水を所望しまくった中国大返し、絶対味方を撃ち合って大打撃になりそうな距離で一斉射撃などなど……せっかくの予算をドブに捨てているような場面が多かったのも確かです。

合戦の正味が少ないのに描写も駄目という最悪のパターンを見せてもらいました。

 4 あまちゃんビッグバンドによる感動シーンや説得シーン専用のBGM→×

不思議なほど本作におけるBGMは印象に残っておりませんので、これは外れたかと思います。説得シーンには何か重々しい音楽が流れていると思ってはいましたが、官兵衛の唾液噴霧インパクトで消されただけかもしれません。

 5 清盛の悪夢の再来 画面が5まみれ→×

これもはずれましたが、だからといってよいわけではありません。

『平清盛』での視覚効果や、『八重の桜』でのCG多用は、画面の大型化やハイビジョンの時代にあわせた試行錯誤の結果であるわけです。『軍師官兵衛』では以前のオーソドックスな映像に近づけてはいますが、工夫は感じられませんでした。確かに明るく見やすい画面ではありましたが、のっぺりとしていて古くさくチープに見えていたことも事実です。特にスタジオ撮影丸わかりの合戦シーンなどは限界を感じました。

『平清盛』の失敗ですべきことは、変化を恐れて懐古趣味に戻ることではなく、どこが駄目だったか丁寧に分析して、そこを修正し進化させていくことだったのではないでしょうか。本作も新しいことをしていないわけではありませんが、目立った変化も面白みもありませんでした。

 6 いつまで経ってもなんてたってアイドル~ アンチエイジングしすぎな女優陣→◎

これは想像のはるか斜め上をいきました。アンチエイジングに関してはもう山ほど文句があります。

女優陣が老けメイクを嫌うのは仕方ないかもしれません。が、本作は衣装や演技指導に関してもエイジングが考慮されておらず、しかもそれがストーリーを破綻させている部分があったと思います。

光のテカテカしたメイクと前半の淡い色あいの衣装は、中谷美紀さんにまるで似合っていませんでした。イメージだけでかわいらしい衣装を選ぶのは設定上せいぜい十代あたりにして欲しいものです。光も貫禄がなかなか出ませんでしたが、糸はさらに深刻でした。衣装もメイクも若々しすぎて経年変化が出ていないため、十年以上の結婚生活を終える重みが感じられませんでした。

女優陣のみならず、男優陣も老けませんでした。黒田家臣団はツヤツヤの顔に髭だけつけるので、コスプレ感が高すぎてちぐはぐ。官兵衛は晩年になっても敵をどなりつけ恫喝し、両手のおにぎりをムッシャアと汚らしく喰い散らかし、加齢の重みも何もあったもんじゃありません。

エイジングに関して言えば、ここ数年のワーストクラスであったと言えるでしょう。

7.最後にお願い 視聴率よりも大事なものがある…そう、クオリティ→◎

クオリティより特番の増量、最終回カウントダウンといった宣伝だけで人気作と印象づけようと必死であった本作。その情熱を、作品そのものの底上げに使えなかったのでしょうか。

 

ここまで書いてきても、私は自分が預言者であるとは思いません。『天地人』、『江』ときて、このくらいのていたらくを予想することは決して難しいことではありませんでした。

それに私にも予想だにできなかったことは山ほどあります。

主人公の活躍を増やすどころか徹底的に削り、さらには軍師という設定でありながらまともな説得をせず、中国大返しではありのままに策を安国寺恵瓊にバラし、前半は小寺政職、中盤は荒木村重、終盤は石田三成と騙されっぱなし、ボンクラ扱いされるのではないかと危惧された長政はかえって賢明、一方で賢夫人と名高い光は危機においてはおろおろしているかはしゃぐしか能がなく、前田利家や豊臣秀次や小早川秀秋といった超重要人物すら唐突に出てきて唐突に消え、一本筋が通っていたのはヤンキー魂(と赤い蝋燭)だけだなんて。

一年間にタイムスリップして過去の私に「『軍師官兵衛』はクオリティとしては『天地人』、『江』と同程度かちょっとマシな程度の残念さで、視聴率は『平清盛』、『八重の桜』よりちょっとマシな程度のこれまた残念さだよ」と言ったらどうなるでしょう。「いくら何でも嘘だ!」と否定するのではないかと思うのです。

が、そうなってしまったのですから、本当に悲しく残念なことです。

最終回スペシャルその二「ヤンキー魂と赤い蝋燭以外の総評と、レビュー全体について」

一年間長文乱筆、かつかなり辛辣なレビューにおつきあいいただきまして、改めて心より御礼申し上げます。

ここ一年、コメント等で寄せられた意見を元に、自分なりに大河ドラマとはどうあるべきかをふまえ、総評を書いてみたいと思います。もう少しおつきあいください。

史実に忠実じゃないから駄目、、、なんてことはない

大河ドラマの批判に対し「歴史ファンは史実に忠実ではないと文句ばかりつけている。そんなことを言うくらいならばやめろ」と言った意見があります。

この場で反論させていただきますが、熱心な歴史ファンならば歴史ドラマや小説は史実の再現だけでは成立しないことくらいわかりきっています。
大名とその妻が何を話していたかなど、記録に残っているわけがありません。そうした場面は、作家が創作してこそ成立するものなのです。歴史ファンは史実と違うから頭に来ているとは限らないのです。
例えば『水戸黄門』のような作品に「水戸黄門はそもそも全国を旅して回るわけがない」と文句をつけたところで、そんなものはただの野暮なのです。お歯黒をつけた武家女性や、泥まみれの雑兵が見たい視聴者は、『タイムスクープハンター』を見ていればよいのです。大河ドラマはあくまでエンタメ枠で歴史考察番組ではありません。

では史実と違うと文句を言う歴史ファンがいるのはなぜなのでしょう?
歴史創作には自由が許容されているとはいえ、最低限のルールがあります。

登場人物が未来を知っているかのような言動をしてはならない。
政略結婚を忌避し、戦うことで俸禄をもらっているのに戦を絶対悪とみなすような、現代人の思考回路で動いてはならない。
新幹線を使っているかのような速度で移動してはならない、等。
また作品としての格が上がるほど、このルールが厳格になるという暗黙の了解があります(大河では民放時代劇のような、現代人がタイムスリップするような内容のドラマはおそらく今後も作られないであろうと思われますが、それはこうした格の問題があるでしょう)。

歴史ファンはこうしたルール範囲内の逸脱であれば、特に目くじらは立てません。伝奇や架空戦記という、ルールがかなり緩いジャンルもありますし、おもしろくするための改変ならば創作として認める傾向もあります。そうでなければ歴史創作は成立しえません。

今年の大河が叩かれているのは、こうした基本ルールを逸脱し、しかもつまらないからそうされていることは頭の隅にでも入れて置いてください。
ルール違反をしているのに勝てない選手は、批判されてもやむをえないでしょう。おもしろみは薄くともルールを守っていれば、真面目だと評価するファンはいるでしょう(『八重の桜』前半)。
ラフプレーが多くても個性があれば、熱心なファンがつく選手になる可能性は否めません(『平清盛』)。
が、本作のようなルール無視上等でおもしろくもない選手はどちらにもなりえないのです(『天地人』、『江』)。

大河にとって原作はルールブックです。参照している限りは、ゲームのルールを踏み外さずとりあえずは戦うことができます。黒田官兵衛という題材には幸いにして、著名作家による原作となり得る作品がありました。

時代劇の実績のない脚本家に原作なしで丸投げのスタッフの責任放棄

にもかかわらず、時代劇実績も長期スパンでの執筆実績もない脚本家に任せて、挙げ句の果てにルール違反ばかりしている……脚本家を選んだのも、原作なしでゴーサインを出したのも、すべてスタッフの責任です。そこをふまえ、私には「ま、オリジナル脚本なんだし」「原作がついていないもの」と本作を甘く見る義理なぞありませんからね。

大河はかつてのように、民放の時代劇や過去の再放送だけが敵ではなくなりました。昔とちがい、今は海外のドラマが簡単に見られます。海外には一話当たりの予算が大河の十倍、数億円規模映画スケールの大作ドラマがあります。セットどころか本物の城でロケをし、桁違いの映像やハリウッドスターすら出演させるような歴史劇が今は簡単に見られるのです。そうした作品とスケールで競おうと思ってももはや太刀打ちできません。
大河が日本の視聴者にとって有利な点は、日本のなじみある歴史題材を一年かけてじっくり扱うことなのです。だからこそ小手先の話題作りをするよりも、日本史の魅力を大切にし、一年間丁寧に作品を作って欲しいと切に願うのです。

低視聴率を受けてすでに言うまでもないことかもしれませんが、危機感を抱いてください。丁寧なドラマ作りをもう一度思い出してください。欠点を洗い出し、何が悪かったか考え、安直な宣伝や話題作りで数字を稼ごうなどと邪道に走らないでください。

何年後かにふと思い出す、そんな大河が見たい

一年の長丁場で登場人物も多いドラマです。毎週傑作でなければならないとは言いません。すべての人物がハマリ役でなければとも求めません。長い一年のうちにダイジェスト回や、出来の悪い回があってもよいのです。どう見ても駄目な役があってもそれはそれで仕方有りません。教科書で読んだ合戦の場面が実写化される感動、人の情念を揺り動かすような丁寧な描写。そうした職人が作り上げた細工もののような場面があり、それを何年か後に幸せな気持ちとともに思い出すことができる……。そんなドラマを願うことが高望みだとあなたが思われるのであれば、私からこれ以上申すことは何もありません。

繰り返しになりますが、今年一年ありがとうございました。来年の『花燃ゆ』レビューもお読みいただけましたらば幸いです。

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平成二十六年十二月二十一日 武者震之助 筆

1年間ありがとうございました(霜月けい)

1年間ありがとうございました(霜月けい)

 




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