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少数精鋭と大量生産どっちが強い?『戦国の軍隊―現代軍事学から見た戦国大名の軍勢』を読む

更新日:

 

――「なぜ織田信長はあんなに強かったのか?」

これって、戦国時代最大の謎ですよね。兵隊の質だけでいったら、甲斐や薩摩あたりの怖そうな奴らに尾張兵なんかが太刀打ちできる気しないじゃないですか! 武将でいっても戦国時代一流のメンツを腹背両面にで相手して倒しちゃってるし。

もちろん、いくつか理由はあげられてますよね。

楽市・楽座のような近代的自由商業主義を取り入れたから経済的に豊かだったとか、
鉄砲をいち早く導入してうまく使いこなしたからだとか、
自由な人事制度で有能な部下を引き上げたり、ヘッドハンティングしたからだとか。

まぁ、そういうのも一つの理由ではあるかもですが……本書の目の付け所は「戦国時代の兵制」。あんまり強そうに思えない尾張の兵隊をどのように組織化し、どのように運用していたのか? これを解き明かすことで、信長・秀吉の強さの秘密をあぶりだしています。

そして、なぜ結局家康が天下を取ったのかも……。

城郭研究家として著名な著者が、畑違いながら書かずにいられなかったのも頷ける。軍事学で解剖した戦国大名たちのお話です。

Amazon.co.jp: 戦国の軍隊―現代軍事学から見た戦国大名の軍勢: 西股 総生: 本

 

目次

  • 第1章 戦いの現場から――天正十八年の山中城攻防戦
    • 箱根路の戦雲
    • 渡辺勘兵衛の活躍
    • 山中城落城
  • 第2章 中世の軍隊――封建制軍事力編成の原理
    • 武士とは何者か
    • 封建制的軍隊の成立
    • 元寇から南北朝・室町時代へ
  • 第3章 戦国の兵士は農兵か――軍団の編成と戦争の季節――
    • 後北条軍団を解剖する
    • 後北条軍団の解剖
    • 戦争と季節
  • 第4章 足軽と長柄――軽装歩兵の戦列化――
    • 兵種別編成方式と領主別編成方式
    • 足軽とは何者か
    • 戦争を変えた長柄鑓
  • 第5章 鉄炮がもたらした確信――集団戦から組織戦へ――
    • 鉄炮と戦国の軍隊
    • 軍事上の画期
  • 第6章 侍と雑兵――格差社会の兵士たち――
    • 侍と軍役
    • 侍たちの戦場
    • 戦国時代の非正規雇用兵
    • 二重構造の軍隊
  • 第7章 補給と略奪
    • 戦国時代の兵站
    • 小田原の役と補給
    • 飢餓と略奪
  • 第8章 天下統一の光と影――信長・秀吉軍はなぜ強かったのか
    • 兵農分離と民兵動員
    • 鉄炮神話の再検証
    • 覇者の素顔
    • 戦国軍事革命の結末
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勘兵衛、暴走しすぎやろ!!

本書は秀吉の天下統一事業も大詰めとなった、小田原征伐の一エピソードから始まります。小田原城の支城・山中城の攻防戦です。

この戦いでは豊臣秀次率いる7万の軍勢が山中城を攻撃。守将・北条氏勝以下4000の守兵の奮戦により、豊臣方は部将・一柳直末をはじめ多くの犠牲者を出すも、わずか半日で城を陥落させた、という戦いです。当時中村一氏の麾下であった渡辺勘兵衛は、この攻城戦で見事一番乗りを果たしますが……

なんか戦国無双みたいになっとる( ゚Д゚)!

記録(勘兵衛の思い出話みたいな感じ?)は残っているのですが、武将=指揮官のくせに兵を率いたような描写が一切なく、なんか一人で突撃してるような感じしかしない。ひたすら「ここ突破したった\(o)/」「あそこの守り、くっそヤバい(;´Д`)」「あいつと出くわしたけど、すげえ頑張ってた( ゚Д゚)」みたいな話ばかり。

これっておかしくない? というのが最初の問題提起です。

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戦国武将の2つの役割

もちろん、勘兵衛はちゃんと指揮を執っていて、でもわざわざ書かなかったのかもしれません。でも、あまりにも大局的な話がないのはやっぱりちょっと違和感があります。その違和感は、本書を読み進めると氷解していきます。

実は、当時の中級以下の領主には2つの役割があったようなのです。

  • 与えられた領地から言われた通りの人数と武器をそろえてくること
  • 戦場で個人的な武勇を発揮する(他に役割が与えられれば別化も)

連れてきた兵はそのまま指揮するのではなく、一度親分に預けちゃう。そして、自分は馬回りを若干引き連れて、一個の騎兵として戦う。親玉に預けられた兵は、槍部隊や鉄砲部隊として組織化され、集中的に運用される……戦国時代ではそうした運用が進んでいたようです。

歩兵戦術の大改革 ――歩兵 vs 騎兵、弱兵の大量動員 vs 少数精鋭

以前、『兵器と戦術の日本史』という本を紹介しましたが、日本の武士というのは本来、弓騎兵でした。訓練を受けた少数精鋭の弓騎兵が殴りあうって感じです。

しかし、戦闘が大規模化し、素人まで駆り出されるようになると(のちの足軽ですね)、少数精鋭の武士側は直接な刀・槍での突撃にシフトしていきます。よっぽど訓練でもされていないと、騎馬突撃の恐怖に耐えることなんかできません。

でも、足軽側もやられてばかりではありません。足軽は数が武器。弓を集中運用したり、槍衾で突撃するというスタイルを編み出すと、なかなか侮れなくなってきました。

image2

要するに、「少数精鋭の武士(騎兵)」と「安価大量の足軽(槍兵)」のどちらを決戦兵力として使うかが当時の戦争のテーマの一つだったといえるわけです(もちろん、非決戦兵力としての大量の「雑兵」も必要です)。本書からは少し離れますが、双方のメリット・デメリットをちょっとまとめてみましょう。

  • 少数精鋭の武士: 強いけど、維持が大変。古い封建制と相性がいい
  • 安価大量の足軽:うまく使えば安上がり。でも、安定供給や集団運用がうまくいくかという問題も

前者を比較的重視したのが(どの大名も一辺倒というわけではありません!)武田などの比較的古参の大名、北条などの関東氏族を束ねることに成功した大名。後者を選択したのが、封建的な土台をもたなかった織田・豊臣だったというわけです。

とくに織田氏はひっきりなしに戦争をしていましたので、常に足軽の労働市場がありました。安定供給と、練兵・運用の問題が解決されていたわけ。ほとんど常備軍みたいなもんですね!

そして、強力な同盟者・徳川氏。「少数精鋭の武士」路線を維持している彼らを味方につけることで、織田氏は両方の旨味を引き出すことができたわけですね(根性の要るしんどいところは家康に丸投げしたともいう)。小牧長久手で家康が数的不利をあんまり気にしていなかったらしいのも、「少数精鋭の武士」路線に対する信頼があったのかもしれません。

しかし、家康のような古い大名が結果的に天下を取ってしまったのは、日本の歴史にとって良かったかどうか。「安価大量の足軽」路線は封建制度を打ち崩し、下々に政治的発言権を与えました。これが欧州では市民革命につながっていくのですが、日本の場合はそれが寸でのところで阻止され、長く安定した・平和な封建社会が築かれることになるのです。

ちょっと本書の内容から脱線してしまいましたが――正規雇用の武士と非正規雇用の足軽、なんていうメタファーもわかりやすいですし、説得力ある感じ。小田原征伐の補給の話なども、なるほどと思わされました。戦国時代の軍隊についてのイメージを補うのに有用な本だと思います。

文・ やなぎ ひでとし(33歳、独身♂)

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1980年、大阪府大阪市で爆誕。中学・高校時代は伊賀、大学時代は京都で過ごしたため、あちこちの言葉が混じった怪しい関西弁を操る。
現在は東京・千葉を経て、愛媛・松山に在住。普段はWindowsソフトウェアを専門とするフリーライターと、舞鶴鎮守府サーバーの提督(大将)の二足わらじ。
中国史(とくに春秋戦国時代など)が割りと好物で、好きな人物は漢の光武帝、尊敬するのは管仲・晏嬰。コーエイの『三国志』シリーズではもっぱら馬騰で遊んでいる。日本の武将では武田信玄が好き。

 

 




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