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人物叢書『最上義光』は迷わず買いだ! 発売直後にバカ売れ瞬殺で重版決定のナゾを解説

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出版不況、ともかく本が売れないと言われています。そんな中で、発売日当日に事前注文・予約分だけで品切れとなり、重版がかかった本があります。

吉川弘文館発行、伊藤清郎著の人物叢書『最上義光』です。

日本史上の人物を取り上げた人物叢書は価格も決して安くはなく、内容も一般書としては難しい部類。所謂お堅い本、敷居が高いシリーズです。しかも最上義光は世間的に知名度が高いというわけでもありません。

当の吉川弘文館も予想外であったらしく、「書店さんで見つけた時点で即ゲット、をお勧めいたします」と公式ツイッターで驚きのコメントを出しました。

この不思議な現象は、最上義光という人物であるからこそ起こったことではないかと思います。もちろん中身も素晴らしいのですが、世間にある最上義光を知りたいという需要が供給を上回った、というわけです。

 

ネットで徐々に人気上昇した最上義光!

インターネットの普及に伴い、戦国時代を知るきっかけも増えました。そんな中で人気があるのが、2ちゃんねる戦国板の投稿をまとめた「戦国ちょっといい話・悪い話」です(まとめブログ)。

このサイトをきっかけとして、イメージが変わった武将もいます。代表例が鬼武蔵こと森長可で、以前は森蘭丸の兄であるということくらいしか認識されておらず、ゲームのグラフィックも地味なものでした。ところがこのサイトで、彼の持つまがまがしいまでの凶暴なイメージが広まり、今ではある意味クレイジーな猛将として知られるようになりました。

最上義光は森長可とは異なり、その茶目っけのある人柄や内政手腕、人情味のあるエピソードが人気を博しました。家臣の北楯利長への書状で鮭がおいしかったと書いたものが複数あること、鮭欲しさに庄内を支配しようとしたという伝説から、「鮭様」というニックネームもうまれました。

こうしたネットから広まっていった武将のイメージは、ユーザが編集できるアンサイクロペディア、ニコニコ大百科、ピクシブ百科事典、やる夫スレ、オンライン小説などでも広まります。最上義光はこうしたユーザ編集辞書系の記事もユニークであったため、ますます人気が出ました。

こうした人気は、ネットの中だけではとどまりません。カードゲーム、モバイルゲームなどにも、こうしたネットから広まったイメージを取り入れたものが出てきました。戦国ゲームの決定版『信長の野望』でも、従来烏帽子姿で目つきが悪かった顔グラフィックが、最新作『創造』では兜をかぶり鉄棒を持った凛々しい姿に変更されました。

さらに今冬、人気のブラウザゲーム『刀剣乱舞』では、最上家に伝来した宝刀「髭切」が実装されました(最上家での銘は「鬼切丸」)。このように、紙ベースではないメディアでは、徐々に知名度が上がっていきました。

 

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しかしオフラインでは盛り上がらない義光人気……

その一方、オフラインでの義光人気は不完全燃焼でした。

歴史的経緯をたどると、最上義光は常に不人気武将であったわけではなかったのです。江戸時代初期に最上家が改易され、周囲の伊達家や上杉家によって不利な記録を残される等不利な状況ではありましたが、地元では「山形全盛期を作り上げた伝説的な名君」として慕われていました。

最上家臣が記したという軍記物『最上記』等では、知勇に優れ情に厚い理想的な部分と、冷酷非情なところが混じり合う姿が描かれてきました。冷静に戦歴や内政功績を眺めてみても、東北の英雄として名高い伊達政宗にそうひけを取るわけではありません。今回の人物叢書を読むことで、義光の評価や伝説化について、より深く理解できるでしょう。

このように地元では人気も知名度もそれなりにあった最上義光ですが、不幸にも彼が全国的にお茶の間デビューを遂げたのは、悪役としてでした。

昭和62(1987)年の大河ドラマ『独眼竜政宗』は全国的に大ヒットしました。

このドラマでの義光は、陰険な策謀をめぐらせ、主役である伊達政宗を迫害する伯父という役所でした。とはいえ、本作の義光は単純な悪役ではありません。原田芳雄さんの熱演もあってか、ヒールとしての存在感と格好よさ、さらには我が子の死を悼む情け深さや人間臭さもありました。悪役といえど、魅力的ではあったのです。今でも「原田芳雄さんの最上義光は格好よかったのに何が不満なの?」と言われることがあるほどです。

しかし、地元山形にとってこの義光像は受け入れがたいもので、NHKに抗議しました。

前述の通り義光像は魅力もありましたし、フィクションだから抗議するほどでもないという意見もあり、山形側の抗議はおかしいという意見も聞かれます。ただ、『独眼竜政宗』は現在の大河で同じ事をしたら袋だたきにあうほど事実をねじ曲げていることは確かです。

例えば長谷堂合戦では、実際には参戦しなかった伊達政宗が山形まで駆けつけ、直江兼続と戦う描写になっています。しかも史実では兜に銃弾を受けるほど勇猛果敢に戦った義光が、怯えてろくに戦わなかったような描かれ方です。個人的にはこれは抗議もやむなしではないか、と思います。

次に最上義光が大河に出演するチャンスがあったのは、平成21(2009)年直江兼続主役の『天地人』でしたが、なんと出番がありませんでした。

長くなってしまいましたが、『独眼竜政宗』は義光像に大変な悪影響を与えました。それほどでもない知名度の人物が、お茶の間テレビ全国デビューで陰険な悪役像を植え付けられてしまったのです。

この影響はゲームにも及び、初期の『信長の野望』では最上義光の顔グラフィックが原田芳雄さんによく似ています。さらに一度も謀叛を起こしたこともない義光の義理パラメータが全国的にもワーストクラスの「2」に設定されたため、「ギリニ」という不名誉なあだ名まで発生しました。「武将列伝」の記述も姦悪なイメージを強調したものでしたし、他のメディアにおける戦国武将紹介でも似たり寄ったりでした。

ここで疑問が湧いた人もいるとは思います。大河のスタッフにせよ、ゲームの制作者にせよ、義光関連の資料を調べてみなかったのか、と。

実は昭和期に発行された山形の県史市町村史や戦国系の本では、何故か最上義光について感情的な悪口のようなことばかりが書かれているという、不思議な現象があります。こうした書物を手に取った人は多くはないと思いますが、いざ調べるとなると手に入るのはこうしたものであったことは、創作物に大きな影響を与えたであろうことは想像に難くはありません。なぜそうなったのかは謎で、当時の山形県の有力者が義光を毛嫌いしていたという噂もありますが、推測の域を出ません。

このように、オフラインでは長いこと最上義光のマイナスイメージが定着していました。これに対して、前述したオンライン経由で義光の魅力を感じていたファンがどう思うか。ギャップが生じるのです。

オフラインVSオンライン、埋まらないギャップ

大河ドラマで義光を知った層は、最上義光は基本的に不人気で冷酷な人物だと思っています。

ですから、義光の本を作っても売れないだろうと考えるため、出版しません。あるいは、出版したとしても「悪人らしく悪人として描こう」と考えます。この考えは義光を主役とした小説において顕著です。義光はライバルの伊達政宗や、対峙相手の直江兼続の足下にも及ばない、いやらしい小悪党として描かれていることばかりでした。

最上義光について知りたくて買ったのに、延々と政宗や兼続を賞賛することばかり書かれている、という嘆きのレビューがネットにはあふれました。ひどいものでは、巻末のあとがきで「以前書いた伊達政宗小説を使い回した」というような内容を書いてあるものもありました。こうした状況は、義光を好意的に描いた天野純希『北天に楽土あり』が出るまで続きました。

そして、これまでのオフライン、従来の最上義光評価とオンラインで義光を知ったファンの間ではギャップが生じてしまいます。

最上義光をネット以外でもっと知りたい。しかし知ろうと思っても、気軽に購入でき、わかりやすく、悪役バイアスのかかっていない書籍がない――。ギャップの中身は、このようなものだと想像できます。

 

そのギャップを満たす理想の最上義光書籍が登場した!

ここで、前述のギャップを感じた最上義光ファンが本当に欲しかった本の条件を整理してみましょう。

  1. 一般書店で購入でき、かつ安価である
  2. 最上義光の生涯や事績が一冊で把握できる
  3. 悪役バイアスがかかっていないニュートラルな語り口

今回の人物叢書はこうした条件を満たしていました。それにもかかわらず、おそらくオフラインの義光人気を考慮したものの、オンライン人気は把握しておらず、需要を低く見積もった可能性があるのではないか、と推察しております。

今月はもう一冊、柏書房より最上義光関連書籍が発売されます。

松尾剛次『家康に天下を獲らせた男 最上義光』です。こちらも売れ行きが好調となれば、最上義光人気は定着したと言えるのではないでしょうか。

家康に天下を獲らせた男 最上義光 柏書房

家康に天下を獲らせた男 最上義光/柏書房公式HPより

 

人物叢書『最上義光』はマストバイなのか?

ここまでなぜ本書が売れたのかばかりに焦点を当て、肝心の中身について触れないままで来ております。

既にレビューも出てきているようですが、ズバリ結論から書きますと「買い」です。

最上義光に興味がある、ファンである、最上義光やその愛刀で二次創作したいのであれば、迷うことなくカートに入れるべき書籍です。

では、義光ファン以外はどうか? 以下のような方にお勧めします。

  • 伊達政宗に興味がある、ファンである、伊達政宗やその愛刀で二次創作したい
    伯父と甥という関係でありながら、いまひとつわかりにくかった最上義光の動向がわかります。ここを把握せず、従来の伊達視線から描いた東北戦国史を語ると、「古い」と言われる可能性があります。そうした事態を防ぐためにも買って損はありません
  • 東北の歴史、特に戦国史を知りたい
    暗闇の中、伊達政宗というスターにだけスポットライトが当たっているかのようだった東北戦国史。最上義光を知ることは、暗闇にもうひとつ光源を発見するようなもの。新たな地方史を学ぶために、きっと役に立ちます!
  • 大名と国衆の関係に興味がある
    今年の大河ドラマ『真田丸』でも注目される大名と国衆の関係。最上義光は、弱小大名から国衆を打倒、あるいは臣従させて勢力を築き上げた大名です。武田信玄との比較も面白いかもしれません
  • 豊臣政権にいち早く接近した地方大名として、外交の事例として
    豊臣秀吉は出羽の支配を、最上義光を通じて行おうとし、また最上義光も豊臣政権を権力の後ろ盾にできると判断しました。戦国大名の中央への接近や外交手段の例として知ることができます
  • 戦国大名の教養を知る
    最上義光は連歌に長け、絵画への鋭い審美眼も備えていました。中央の大名のみならず、都から遠く離れた東北の大名であっても高い学識を持ち得た好例と言えるでしょう

このように、最上義光は山形・東北ゆかりの人としてとどまるだけではなく、戦国時代の歴史においても特徴があり、大変興味深い人物と言えるのです。義光本人のファンだけが買うのではもったいないのが本書、戦国ファンならば、買って損はないと言えるのが本書です。

話題になっているのは何かの仕込みや陰謀ではなく、ちゃんとした理由があってのことです。迷っている方も、戦国ファンであれば手元に置くべき本かと思われます。

まとめ:

  • 最上義光本が売れるのは、需要と供給のアンバランスがあったから
  • オンラインで義光のことを知っても、紙媒体で入手できる経緯が限られていた。かつ、出版社はその人気を把握できていなかった
  • 義光ファン以外でもマストバイアイテムとなる予感

というところが今回の現象であると分析します。

記:最上義光プロジェクト(http://samidare.jp/mogapro/



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最上義光の知名度アップを目指し、オンラインで情報発信を続けているサイトです。

 

 

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