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応仁の乱/Wikipediaより引用

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呉座勇一『応仁の乱』は勧善懲悪不要のモヤモヤ時代だからベストセラーに!?

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呉座勇一『応仁の乱』がベストセラーと知って、意外な気持ちがしたのは私一人ではないでしょう。

そもそも歴史書って、そんなに売れましたっけ?
大河ドラマタイアップでもないのに、ベストセラー?
人気のある題材ならばともかく、「応仁の乱」ねえ……やたらと新聞の広告で腕組みをした呉座先生の写真を見かけるようになり、「一体これはどういうことだろう?」と感じました。

半信半疑で何がそんなにすごいのかと手に取り読み終え、やはり今、首をかしげています。
それと同時に、何か腑に落ちるところもあります。

本書の読了後の感想は、曇天のようなすっきりしない思いが残ります。
しかしそれが現代社会にマッチしていると言えなくもないのではないでしょうか。

 

「この一冊でわかる!」ではない本書

書店で見かける本のタイトルに「この一冊でわかる!」というものがあります。この手の本だけで本当にわかることはまずないとはいえ、安心感のあるタイトルです。

ところが本書は、これ一冊を読んだところで「応仁の乱」とは結局何なのかがスッキリとわかるわけでもありません。
むしろ従来の「我が子を将軍にしたい悪女・日野富子のせい」だとか、「足利義政が無能だった」とか、そういうわかりやすい構造を否定するのです。
否定されることによって、キャラクター性やストーリー性がぼこっと抜けてしまいます。

歴史の流れを追うときは、特徴的な人物やわかりやすい動機を手がかりにする、そういう読み方や覚え方をする、そんな人にとっては、これはキツいものがあります。
我が子可愛さで戦乱を引き起こし、両軍に金を貸す富子は悪女としてインパクトがあります。捨ててしまうにはもったいない面白さもあります。

それでもこれはあくまで歴史書であり、歴史ベースのフィクションではありません。毒々しい悪女像は捨てられました。

本書は敢えて、そういうわかりやすさを放棄しているのです。

 

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誰もが出口戦略を抱いていたのに……

本書を読んでいてモヤモヤする点は、この乱の関係者たちほとんどが、私利私欲によっててんでバラバラに行動しているどころか、事態を収拾させようと考えているところです。

出口戦略を持ち、終局に向けて動いている――にも関わらず、かみ合わずにずるずると揉めてしまい、解決の糸口が見いだせないのです。
英雄不在の大乱という、どんよりとしてカタルシスと無縁の展開が続いてゆきます。

筆者があとがきで比較するように、こうした状況は第一次世界大戦と似ているように思えます。
それだけではなく、シリア内戦にも通じるものがあるのではないでしょうか。
アラブの春が最初に起こった時、むしろ希望や新時代の始まりではないかと期待する報道が目立ちました。シリアに暮らす人々は、短時間の間でここまで事態が悪化するとは思っていなかったことでしょう。

足軽が闊歩することで事態が悪化していった応仁の乱の京都と、テロリストがうろつき周り凶悪な犯罪を繰り返すシリアにも、共通点があるように思えました。安易に現代の情勢と歴史を並べることには抵抗感があるのですが、このすっきりしないもやもや感の正体は、今にも通じることがあるんではないかと感じるのです。

 

現代の空気にマッチした一冊

今では少なくなってきましたが、かつて歴史書といえば「戦国武将に学ぶビジネス」という趣旨の本が数多くありました。

司馬遼太郎や山岡荘八の歴史小説はエンタメとして楽しむだけではなく、「歴史上の偉人に学ぶ」という意義もありました。そうした作品では「愚行は愚か者が引き起こすもの」であり、結果から逆算して敗者には何か致命的な欠点があったのだろう、という結論がありました。

しかし、本書も含めて最近の歴史書は、人間の器や資質だけで事態はこじれない、様々な要素がからみあっている、と説明するものが増えてます。
愚か者にはそれにふさわしい結末が待っている、そんな単純明快な歴史論は現代人にとってはむしろリアリティが感じられなくなったのでしょう。

これだけのベストセラーとなったからには、ただ優れているだけではなく、時代のニーズに合致する部分があったはずです。
すっきりしない時代に、もやもやとしたベストセラー。歴史ファンはもちろんのこと、そうではない人にも読まれる現代の空気にマッチした一冊、それが本書ではないでしょうか。

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小檜山青・記

 



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