東に新潟大学あれば、西にアシュビー・スクールあり? 第一次世界大戦の貴重な勲章を売ろうとして非難囂々

 

先日、財政難に見舞われている新潟大学の窮状がJ-CASTニュースで報じられ、卒業生らの涙を誘っていたのは記憶に新しいところですが、苦しいのは同校だけでは無い? 英国のレスターシャーにあるアシュビー・スクールも財政事情が苦しいらしく、校内の運動施設の増築を捻出しようと、母校が生んだ第一次世界大戦の英雄が寄贈してくれたヴィクトリア十字章を売って金にしようとして、囂々たる非難を浴びているのだそうです。

何だかな〜って話ですね。英国のテレグラフ紙が報じています(2016年2月23日付け)。

 

「虎の中の虎」と呼ばれるも、26歳の若さで戦死

えー、まずはヴィクトリア十字章について触れたく思います。ウィキペディア日本語版より引用いたします。

ヴィクトリア十字章(ヴィクトリアじゅうじしょう、Victoria Cross)は、イギリス及び英連邦王国構成国の軍人に対し授与される最高の戦功章。敵前での勇敢な行為を対象とした顕彰に於ける第1レベルの賞とされるクロス章であり、受章者は”VC”ポスト・ノミナル・レターズ[ 1]を使用することが許される[ 2]グレートブリテン及び北アイルランド連合王国及び殆どの英連邦王国構成国に於いては、ポスト・ノミナル・レターズ[ 1]の記載順位や佩用序列が全ての勲章・記章の最上位に位置付けられている[2]

イギリスの勲章オーダー(Order)とデコレーション(Decoration)に分けられ、デコレーションにはクロス(Cross)、メダル(Medal)及びデコレーション[ 3]の種類があるが、受章者によって騎士団が形成され、勲位が与えられるのはオーダーだけであり、ヴィクトリア十字章を含むクロスやメダル、或は章の名称に”Decoration”が付く章は、功績や栄誉に対して与えられる功労章或は記章である[4]。そして、クロス章は勲章とは言えないとする見方もあるので[5]、本項では「ヴィクトリア十字章」とするが、それらも広い意味での勲章ではあり、日本ではヴィクトリア十字勲章[6]或いはヴィクトリアクロス勲章[7]と表記されることも多い。

滅多に授与される事はなく、フォーシスTVというサイトの報道によると、1856年に勲章が制定されてから現在までに貰った人は1358人しかいません。裏を返せば、希少性はもの凄く高い訳ですね。

そんな勲章を貰っていたのが、同校出身のフィリップ・ベントという陸軍中佐。1891年にカナダのハリファックスで生まれ、1917年10月1日にベルギーのゾンネベーケという戦場で若き命を散らせました。享年26。

生前のベントは、レスターシャー連隊の第9大隊に所属。この大隊は、勇猛さからタイガースと呼ばれるほどでしたが、本人は「非常に勇敢な佐官」だったと評されています。つまり、「虎の中の虎」とでも言うべき存在でした。サイトより、生前の本人と勲章の写真を引用させて頂きます。

フィリップ・ベント

ドイツ軍側の猛攻にもめげず、「虎に集え」との呼びかけに触発され、攻撃の先頭に立って反撃したと、当時のロンドン・ガゼット紙に書かれています。結果として戦死してしまうのですが、その勇敢さが称えられての授与となりました。なお、ヴィクトリア十字章の他にも4つの勲章を授与されていたとの事ですから、英国陸軍の入れ込みぶりが感じられますね。

 

「息子の事を皆さん忘れないでね」と母親が寄贈したのに…

ベントはアシュビー・デ・ラ・ゾウチにあった同校(当時はアシュビー・グラマー・スクールという名称でした)で学んだ後、1907年に陸軍に入隊しています。そんな縁もあって、戦後の1923年に母親がヴィクトリア勲章を含め5つとも寄贈しています。書簡も残っており、そこには「これらの勲章が次の世代の高き理想を末永く喚起し続ける事を祈っております」とあったそうです。息子さんの事を後輩に忘れて欲しくないとの思いがあったのでしょう。涙を誘いますね。

ところが、どうした訳か、学校側は王立レスターシャー連隊博物館に貸し出します。希少性があるので保険金が高額となり、負担に感じた博物館ではニューワーク・ハウス博物館に展示させていました。現在は銀行の貸金庫に保管され、かれこれ40年近く眠ったままだそうです。

もぅ ここで「ちゃんと展示しろよ」な感じありまくりですが、アシュビー・スクールでは新しいスポーツ施設の建設の資金にしようと、勲章を売りに出す計画を立て ました。パビリオンも込みの建設で、お金がかかるからというのが動機らしく、売れば25万ポンドになるとの皮算用まで弾いていたんですって。日本円に換算したら4000万円。確かに建設資金にはなりそうですね。

 

「街の通りの名前にまでなっているのに!」

これに怒ったのがレスターシャー連隊の関係者。連隊の評議委員長を務めるティム・ウィルケス大尉は「学校側は、未来の世代を触発して欲しいとの思いから、ベント中佐の母君が寄贈した経緯を考えるべきだ。勲章を売るなど、我々は望んでいない」と非難。連隊の関係者は、ハンプシャーという街に住む中佐の御子孫にも面会しましたが、「レスターシャーから勲章が流出するのをお望みではなかったぞ」(ウィルケス大尉)。また、連隊に勤務する家族も、これらの勲章の重要性を良く理解してきており、売るなどとは論外だと怒っています。

正に十字砲火。学校側のエレン・ブラント理事長は「学校法人としては、勲章の価値を算定して貰い、アシュビー・スクールの未来の世代の利益の為に施設の建設 費の資金としたい。様々な意見が出るのは重々承知の上だが、売却が学校や地域の広い範囲に利益をもたらすという意見の一致をみた」と発言しています。スポーツ・パビリオンは地域のスポーツ団体にも使ってもらう意向だそうで、それが地域奉仕にもなるだろうと思っているようです。

…ただ、ウィキペディアの英語版のフィリップ・ベントの項目を見るとですね、アシュビー・デ・ラ・ゾウチでは2015年に開通した新しい道路に「フィリップ・ベント通り」と名付けているのです。100年近く経っても、街の英雄と位置付けている訳です。そんな人の活躍を称える勲章を売りに出して、「地域奉仕になる」と言われてもねぇ。というか、学校だって客商売だろ。そんな事をしたら誰も進学してくれなくなるぜ。天国でベントとお袋さんを泣かせて良いのか!

 

南如水・記

 

 


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