志賀島の「漢委奴国王」 磐井の乱に想いを馳せる古老の昔語り

 

漢委奴國王印文/Wikipediaより引用

九州・福岡市の北に位置する志賀島から出土した 国宝「金印」。
歴史教科書の図録に蛇を象った取手を乗せた、黄金に輝く四角の塊を目にした人も多いだろう。 志賀島在住だからこその思いで、現在の「金印事情」を紹介したい。

福岡市の東側から延びる12キロの砂州の先端と繋がって浮かぶ国宝「金印」出土の志賀島(右側)

福岡市の東側から延びる12キロの砂州の先端と繋がって浮かぶ国宝「金印」出土の志賀島(右側)

中国の正式な歴史書『後漢書』は建武中元2年、つまり西暦57年に、「漢の光武帝から北部九州に盤踞(ばんきょ)した国の一つであった、奴国の王に下賜された」と語っている。

金印には、「漢委奴国王」と刻印されている。
「委奴」を「イト(伊都国か)」と読む説もあるが、ここでは「倭(わ)の奴(な)」との読み方で進めていく。とにかく、中国から日本列島へ金印が渡ってきたのだ。

時代は1700年ほど下った江戸時代の天明4年(1784)2月23日。
光武帝下賜の、この金印は福岡市の北に浮かぶ志賀島で畑を耕していた百姓・甚兵衛によって、偶然、掘り出されることになる。
甚兵衛はもちろんのこと、志賀島では 大変なものが出て来たと村をあげて大騒ぎとなり、村おさなどの連名で福岡藩庁へと、うやうやしく差し出される。

ところがこの金印、甚兵衛が見つけた時の状況を始め、金印発見時にまつわる話しに辻つまが合わない点が多いことや、祭祀遺構や古代住居跡などと全く関係がない畑の下に埋まっていた、などのことから偽造されたものではないかとの説まである。

志賀島の西側の那國王の海・博多湾を臨む丘陵にある金印出土地に広がる金印公園。金印はこの斜面に耕された畑から出てきた。対岸の伊都国のと向きあって金印を象ったモニュメントが置かれている

志賀島の西側の那國王の海・博多湾を臨む丘陵にある金印出土地に広がる金印公園。金印はこの斜面に耕された畑から出てきた。対岸の伊都国の方を向いて金印を象ったモニュメントが置かれている

 

島に伝わる古墳時代の戦いの秘話

そんな、謎めいた金印だが、地元の志賀島では継体21年(527)に九州を舞台に起きた「磐井(いわい)の乱」にかかわって埋められていたのではないかという話しが伝わっている。

磐井の乱とは、古墳時代中期に、筑紫国造(つくしのくにのみやつこ)という北部九州の豪族である磐井が起こした反乱だ。朝鮮半島へ出兵しようとした大和王権の軍の侵攻を阻む形で開戦、半年にわたり戦闘が繰り広げられ、最後は磐井が敗れた。
鬼籍に入り3年が経つ、志賀島島内の古老の一人が、「その昔、御井(みい)の流れを境に東からやって来た敵と戦い負けた筑紫王が逃れてきて、代々引き継がれ、持っていた王としての徴の黄金に輝く印を、島の西に埋めた」という昔語りを伝えていた。

御井とは、福岡県南部の都市・久留米市の近郊の地域であり、御井の流れとは、貫流する九州最長の河川・筑後川のことだと推測される。
そして、筑紫王を筑紫君と置き換えると、筑後川を挟んで畿内から下ってきた物部麁鹿火(あらかい)の兵をむかえ戦った後、敗走した筑紫君磐井のことと符合する。
古代史の謎解きの一つに古老の昔語りを借りるにしても、建武中元2年・西暦57年に奴国王へ下賜された金印を、どうしたわけで、およそ500年後の継体22年(528)に列島を二分する争乱を引き起こした筑紫王・磐井が持っていたかということについては謎のままだ。

歴史は勝者が作る。
日本書紀などで「反乱」とされているが、磐井にとっては「自分こそが正義」との思いから「権威のお墨付き」となる金印を守り、隠すことに執着したのだろうか。志賀島に住むものとして「いつか磐井の声が聞こえないか」と日々感じている。

Frco Don記(志賀島在住)

 

なお、金印偽物論にはこうした本がある。








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