ほんとは要らない子だった屋久島の「縄文杉」

週刊武春歴史というものはなにが幸いするか分からないものです。
世界遺産の屋久島の自然の代表である縄文杉は、まるで神がやどったような造形美に、目の当たりにした登山者はみな心震えるのだそうです。
ところが、あの縄文杉が現在まで生き残ったのは、「醜かったから」だったのです。

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photo by gnta

屋久島というのは、前人未到の無垢な大自然だったわけではありません。少なくとも江戸時代には山奥まで、たくさんの木こりたちが入っていました。そう「縄文杉」を切るためです。

江戸時代の杉は、もちろん建造物の資材としてですので、縄文杉のように大木である上に、さらに「まっすぐ」な杉は大変に貴重だったのです。
まさに江戸時代にあちこちで金山が発見され、そしてすぐに枯渇したように、屋久島の「茶色いゴールド」たち、とくにまっすぐで表面がでこぼこのない大木は次々に切り倒されました。

ただ、金山と違うのは、植物は生え替わる、ということです。

大木を切っても完全にはげ山になるわけではありません。切り取った縄文杉の空いた土地には、「切り株更新」といって次世代の杉がすくすくとまっすぐ伸びます。

現在、木材の市場では、屋久島でとれた杉を「屋久杉」とは言いません。
樹齢1000年以上の古木のみ「屋久杉」と呼んでいます。
では、樹齢1000年未満、主には江戸時代以降に自然に生えたり、植林された杉は「小杉」というのです。それでも樹齢数百年なのですが……。

もちろん両者はまったく値段が違います。樹齢1000年以上で、木目がまっすぐな良質なものはほとんど江戸時代に切り倒されているからです。
屋久杉のほうがテーブルができるくらいの大きさの板でも軽く100万は超えます。

いわゆる縄文杉はどうして残ったのか、という話に戻ります。
ここまでで想像されていると思いますが、現代の我々には神々しくさえ見えるゆがんだ姿は、江戸時代の木こりにとっては「木材としては使えない」と判断されて、放置されていたということなのです。

歴史作家 恵美嘉樹・記


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