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週刊武春 音楽家

偉大すぎる音楽家ベートーヴェン 実はスパイだって? ジャジャジャジャ~ン♪

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 当「週刊武春」の(一方的)兄貴分「週刊文春」の大スクープにより、現在、クラシック音楽界隈が「現代のベートーヴェン」によるスキャンダラスな話題で揺れています。

 名曲や大作曲家にまつわる伝説が後付けで作られることは、わりかしよくある話です。例えば、メディアが「現代のベートーヴェン」などと安直に引き合いに出しているベートーヴェン本人について、私たちはどれほどのことを知っているのでしょう。

 

伝説に彩られたベートーベン…と言っても学校の怪談ではない

Beethoven

 よく知られるベートーヴェン像は、「後付けの伝説」に溢れていると言ってもいいでしょう。例えば、彼の交響曲第3番「英雄」にまつわるエピソード。
ベートーヴェンは、フランス革命とともに世に躍り出た英雄ナポレオンに対し、ヨーロッパの古い体制を壊してくれるという期待をかけ、「英雄」を作曲します。しかし1804年、ナポレオンは皇帝の位につき、激怒したベートーヴェンは、献呈の言葉を書いた表紙を破り捨てた……というものです。

 

 この話、実話であるかどうかは疑問視されています。それどころか、ベートーヴェンは終始親ナポレオン的な立場でした。
ベートーヴェンの弟子シントラーが「曲の表紙を破り捨てた」という明らかにおかしい証言を伝記作家に残したのは、ナポレオン没落後でした。官憲の検閲を通すための方便だった可能性が高いです。史実というものはえてしてそういうものだったりします。

 

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「007」だった? ベートーヴェン 

 しかし、「事実は小説よりも奇なり」といいますか、近年になってベートーヴェンにまつわる大胆な新説が登場し、話題を呼びました。人気音楽家として貴族や富豪、知識人たちと交流できる立場を利用して、政治的諜報活動を行っていた―――というものです。しかもその仮説の根拠は、ベートーヴェンの書いた「ラブレター」にあったというのです!

 

 新説を打ち出した書物は、古山和男『秘密諜報員ベートーヴェン』(新潮新書、2010年)。国立音楽大学で教鞭をとる著者は、ベートーヴェンの遺品の中にあった三通のラブレターに着目しました。宛先は不明―――ミステリアスなその手紙は「『不滅の恋人』への手紙」と呼ばれ、誰宛に書かれたのか、様々な推測を呼びました。

 

著者の古山氏

 

 宛先として、ベートーヴェンに近かった何人もの女性の名が挙げられました。しかし、手紙の書かれた1812年の政治状況に着目した著者の推理は、誰も予想しないものでした。曰く、その手紙はラブレターに見せかけた「密書」であり、政治的なメッセージを含んだ「暗号通信分」だったというのです。

  本書の推理小説的面白さは是非お読みいただいて体感して欲しいですが、導かれた結論のエッセンスを紹介しておきましょう。

  1804年帝位についたナポレオンは、オーストリア・プロイセン・スペインなどと戦ってヨーロッパに覇を唱え、1812年ロシア遠征を企てます。

 ナポレオンによる旧体制の打破を歓迎する改革派と、それを阻止しようとする守旧派。そのせめぎあいの中で、ベートーヴェンは改革派のために奔走、ボヘミアにおいて手紙をしたためます。それこそが「不滅の恋人」への手紙であり、その実像は同志である実業家に向け、敵対する守旧派の動向を伝える緊急の連絡であった、というのです。

 

 この仮説をトンデモと見るかどうかは読者の判断次第です。
しかし、ベートーヴェンは守旧派から危険人物としてマークされていたと思われる証拠も、本書で紹介されています。ベートーヴェンは耳が不自由だったので、コミュニケーションに筆談を使いました。

 その筆談帳に、「そんな大きな声を出さないで下さい。あなたの人相は知られすぎているのです……」「ではまたの機会に―――あいにくここには、スパイのヘンゼルがいます……」という記述が残されているのです。思想・信条的な理由から監視がついていたのでしょう。

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 理想のため政治的活動にも身をささげる

 一般的なベートーヴェンのイメージとしては、「聴力を失うという悲劇を超え、音楽に全てを捧げた偏屈な天才」というものでしょう。しかし本書は、「自らの理想のため政治的活動にも挺身した芸術家」という全く新しいベートーヴェン像を作り出しています。政治・経済史と文化史を結びつけた、本書での大胆な試みは、一読の価値があるのではないでしょうか。

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 三城俊一・記




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