朝鮮半島の線路幅が新幹線と同じ国際標準軌になったワケ

週刊武春韓国の交通がいろいろとニュースになっています。船とは直接関係ありませんが、朝鮮半島の鉄道路線についての歴史秘話です。

日本の植民地だった台湾や南樺太では、日本国内同様に狭い幅の線路が敷かれたのですが、なぜか同じ植民地だった朝鮮半島では、新幹線と同じ広い線路が採用されました。いったい、その背景にはなにがあったのでしょう?日中の国際関係を専門にする、みはぎのまりおさんの寄稿です。

日本の鉄道の線路の幅はほとんどが狭い

国際標準軌というのは、一般的には、線路幅が1435mmのものをいいます。

この幅は、鉄道発祥の国、イギリスで、最初に走った機関車の車輪幅がもとになっており、その後、欧米各国に鉄道が延伸するつれて、この幅が国際規格とされるようになったことから、「国際標準」軌と称されるようになったのです。

 日本では、新幹線がこの線路幅を採用しているほか、京浜急行電鉄阪急電鉄など私鉄の多くでも国際標準軌で鉄道を運用しています。いうまでもなく、線路幅が広い方が、高速で大量の物流を安定的に保つことができるからです。

 ところが、日本では、日本国有鉄道(現在のJR)を中心として、専ら1067mmの線路幅が採用されました。この線路幅はイギリスの植民地鉄道の規格で、ニュージーランドやオーストラリアでもこの線路幅が採用されていました。

日本がこの規格を採用した理由には諸説ありますが、日本で最初に敷設された新橋と横浜を結ぶ鉄道建設をイギリスに頼ったことと、鉄道網整備のための建設費用や工期との兼ね合いによるものとの説が有力です。

いずれにしても、その後の日本の鉄道の線路幅は1067mmのものが標準となり、日本が支配下に置いた台湾や南樺太(現在のサハリン南部)などでは、現在でも1067mmの線路幅で鉄道が運行されているのです。

台湾や樺太では狭い線路だったのになぜ朝鮮半島は広いのか

ところが、同じく日本の植民地とされた朝鮮半島では、国際標準軌である1435mm幅が採用されたのです。これは、当時の国際関係と日本の地理的な特性とに深く関係しているのです。

 

日英同盟と日露戦争が

1902年1月、ロンドンで、日本とイギリスとの間の同盟条約(第一次日英同盟)が調印されます。これは、日清戦争後の清国における権益を巡ってロシアと対立した日本とイギリスとが、相互に対ロシア戦争に際しての中立を保証することを主たる目的とするものでした。

やがて、1904年2月、日本とロシアとの間で戦争が始まります。これに伴い、東京で、戦場での軍需物資輸送を担う日本陸軍・野戦鉄道提理部が編成され、京城(現在のソウル)に近い仁川港から清国国境に近い新義州に向けて、鉄道の延伸工事が始まったのでした。これが、現在の京義線です。

このとき、線路幅をどうするのかが議論となります。

戦時経済を考えれば、日本規格の線路幅を採用した方が、既にある機関車や貨車、客車をそのまま転用できるので安上がりです。

しかし、日本の鉄道車両を転用するにしても、どのみち朝鮮半島までは船で運ばなければなりませんし、朝鮮半島で新たに線路を敷くのであれば、最初から大きな輸送力を得るために、幅の広い線路の方がよいという意見が多数を占めました。そして、もう一つ、日英同盟も、この多数意見を支えたのです。

当時、イギリスが、清国に敷設していた鉄道の線路幅は、イギリス本国と同じく1435mmでした。この線路幅と同じ幅の鉄道を敷いておけば、イギリスの敷いた鉄道も利用して、貨物や人を積み替えることなく軍需物資の供給を期待できるという冷徹な合理主義が、朝鮮半島の線路幅を決定づけたのでした。

ちなみに、この時のロシアが採用していた線路幅は国際標準軌よりも更に広く、1520mmもありました。日本の線路幅ではなく国際標準軌を採用した背景には、ロシアとの戦争に臨んで、できるだけ輸送力を近づけたいという戦略上の思惑もあったのかも知れません。

韓国で高速鉄道がバンバンできる背景に

ロシアとの戦争に勝った日本は、ロシアが中国東北部に敷設した東清鉄道の南半分を利権として獲得して、中国東北部へ勢力拡大の足掛かりを得ます。この鉄道が、その後、南満洲鉄道(満鉄)となり、日本による満洲国の実効支配に大きく寄与することとなるのです。

1910年8月、日本は朝鮮半島全土を併合しますが、日本が清国(その後、中華民国)に獲得した鉄道と一体的な運用を手掛けるため、線路幅は国際標準軌のまま維持されることになります。この結果、日本が支配した地域としては異例の国際標準軌の鉄道網が出来上がったのでした。その距離は、総延長で2万5千キロを超え、当時の日本国内の鉄道総延長をはるかに凌駕するものとなったのです。

 そして、現在も、朝鮮半島の鉄道の線路幅は1435mm。日本の新幹線のように新たに線路を敷かなくても、高速鉄道が運転できるインフラが整備された背景には、当時の国際関係が色濃く反映されていたのです。

 

みはぎのまりお・記








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