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朝日もびっくり?大迫力の空中戦写真が全世界で注目!→「捏造でした」「えっ!?」【第1次世界大戦100年】

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新聞記者やジャーナリストが一度は夢見るのが「大迫力のスクープに、全世界が注目!」。ワタクシメ、遂に1度もありませんでした(聞いてないって)。(編注*南氏は元全国紙の新聞記者です)

 

さて、100年前の第一次世界大戦の頃にも、そうしたスクープは勿論ありました。カメラが徐々に軽量化しつつある時代でしたので、写真報道が重視されるようになる中で、このような驚かされる代物がドッカーンと。

捏造写真

「うわ、パイロットが落ちている!」と、今なお目を引きますよね。実際、当時の世界中の書籍や雑誌、新聞に掲載されたそうです。

ところが、これ、実は捏造だったんですって。英国のテレグラフ紙が報じています。

 100年後の記者も騙された!

 

トホホな事に、この記事を書いている記者自身もコロッと騙されたクチ。

 

この写真は、飛行機のモデルを「見えない」糸で吊り、スタジオ撮影したニセモノだ。その上、別の模型飛行機の写真を挿入し、レタッチ合成までしているのだ。

 

と、記者さんもお怒りの様子。そう、捏造には厳しくないとね。それにしても、フォトショップの無い時代に、ようやったわねぇ。後20年ほど遅く生まれていたら、円谷英二さんのライバルになっていたかも。もっとも、円谷さんは人を楽しませる為にしていましたけどね。これはどう考えても詐欺行為っす。

さて、捏造したのはウェズリー・D・アーチャーなる人物。アメリカ人なのですが、英国空軍に入隊し、「こんな写真を撮ったぞ!」と主張していたのだそうです。

テレグラフの記者は、元々この写真をミック・マノックという当時の軍人の話を書く際に引用したのだそうです。その後、元偵察パイロットのジミー・テイラー氏という方から「あれ、合成写真だよ」と意見され、脂汗をかきまくったという次第。

テイラー氏は御年91歳。第二次世界大戦中に英国空軍の一員として活躍なさっておられました。この写真が掲載されたアーチャーの著書も買った事があるそうです。著書の名前は「空の死:空軍パイロットの戦争日記と写真」(Death in the Air: The War Diary and Photographs of a Flying Corps Pilot=1933年初刊)だったそうで、「グレート・ウォー(第二次世界大戦が起きる前、第一次世界大戦は、こう表記されていました)の初の鮮明な空中戦写真」という触れ込みなのですが、写真そのものは1931年に出された「コックバーン・レンジ・コレクション」という本に掲載されていました。

つまり既出。この時点で、もう嘘を付いていた訳ですね。

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 「撮影者の名前は明かせない」と大嘘でベストセラー

 

さて、このアーチャーの書籍はベストセラーになりました。戦争中の英国空軍では、パイロットが空中戦を挑む際にカメラを持ち込む事を禁じていました。それを、「名前の分かっていない」操縦士が破ってドイツ軍機との死闘の様子を撮影したと主張したものですから、信じ込む人が続出。機銃にカメラを装着し、弾が出るとシャッターが下りるようにしていたと、入念な嘘をついたのも大きかった。

トドメは、ピンぼけだった事。当時のキャメル(英国)、アルバトロス(ドイツ)などの戦闘機の外観が何とか分かる程度の解像度だったのですが「戦闘中に撮影したのだから」と、返って信用度を増す結果となったのですって。

こうした写真が全部で44枚も収録。前文は、次のような出だし。

「このタイプライターに書かれた草稿は、あの戦争中の空中戦を撮影した写真のパイロットによるものだ」

そして、ヌケヌケと次のように続きます。

「タイプに打たれた部隊名を明らかにするべきなのだろうが、残念ながら伏せさせて頂く。それが出版に当たっての唯一の条件だったからだ」。

で、トドメは献辞。こう書いてありました。

「敵や味方を問わず、雨や嵐、雪の中で死の翼が舞う大空を駆け抜け、銃火にさらされながらも相手の命安からん事を祈りながら撃墜していった方々全員に、本書を捧げたい。理想のために生涯を捧げ、そして続く数年を敵と相対した全てのパイロットに、こう献辞を述べたい。こうしたパイロットの仕事が、ある考案によって、具体的な形として後世に残されたのである」

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 嘘じゃぁ、みんな嘘じゃぁ〜

 

…読んでいて感動させられますよね。これが本当ならば。

実際のアーチャーはというと、1914年から18年にかけてパイロットをしていたのは事実。で、当時の記憶を頼りに一大捏造ストーリーを上梓して、夫婦揃って巨万の富を得たという訳だったそうです。悪い奴よのぅ。

上記の元偵察パイロットのテイラー氏は「子供の頃、こうした大空の戦士に感動した私は、『空の死』の第2版を1936年に購入し、写真に大興奮しました。対空砲火で2機が落とされるところとか、空中衝突している写真とか、燃え落ちるアルバトロス機からドイツ人のパイロットが脱出しているところとかにね」。

ただ、先にも書きましたが、第二次大戦中に偵察要員としてパイロット勤務をこなすようになってからは、これ本当なのかなと疑問に思う仲間の声を聞くようにはなったそうです。もっとも、御本人は古い話なので真贋を見極める方法が無かったのだとか。

転機が訪れたのは1985年。第一次世界大戦空戦史協会という1000人を超す会員を擁する専門家集団が、発行誌のクロス&コックデートに掲載された写真はニセモノだと知らされたのです。もっとも、この発行誌は季刊で、部数も少なかったので世間には広まりませんでした。

その後、同誌の編集に当たるポール・レーマン氏とテイラー氏の調査によって、ニセモノである事が確認されました。テレグラフ紙でも、今後は事実写真としては使わないそうです。

2人の調査によると、次のような経緯だったようです。まず、出所とされたのは「グラディズ・マウド・コックバーン・レンジ」なる女性。パイロットだった夫を第一次世界大戦で亡くし、その後再婚したとの触れ込み。「話し合った結果、機が進まなかったものの、亡き前夫に哀悼を表するべく、名を出さずに公表する事に決めた」としながら、世に問うたのだそうです。

 半世紀後にまただまそうとするやからが

で、アメリカで先にボロが出ていた事も分かりました。スミソニアン国立航空宇宙博物館に、出版後半世紀近く経ってから、ジョン・チャールトンという人物からスーツケース一杯の写真を寄贈したいとの申し出があったのです。チャールトンは捏造したアーチャーの友人でした。

 

ところが応対に当たったピーター・グロスツ(ドイツ航空史の専門家)とカール・シュナイド(博物館の航空学局に所属)が、ネガなどを精査したところ、これが「コックバーン・レンジ・コレクション」に使われていた原版であるのに気づきます。同時にコックバーン・レンジなる人物が、アーチャーの妻のペンネームである事にも気づきます。また、チャールトンも本の出版で一儲けしていたのも分かりました。

 

二匹目のドジョウが、裏目に…

 

どうやら二匹目のドジョウを狙ったのかも。だとすると、完全な裏目となりました。アーチャー本人に、博物館の関心の矛先が向くようになったからです。

 

更に調べを進めると、次のような事が露見しました。アーチャーは、1918年10月に撃墜され、英国で療養生活を送った後、1920年に帰国。そして、デザイナーとモデラーを雇って悪巧みします。

 

ところが、頭隠して尻隠さず。持ち込まれた資料の中から、捏造中のスタジオの模様を撮影したスナップショットが紛れ込んでいたのです。これが決定的な証拠になったのは言うまでもありません。

 

グロスツとシュナイドのご両人は共同執筆し、クロス&コックデートに寄稿します。お2人によると、アーチャーは著書で2万ドルを儲けていました。大恐慌時代のアメリカでは、立派な財産であったのは言うまでもありません。

 

アーチャーは1955年にキューバで世を去ります。その4年後に、妻も旅立ちます。もしチャールトンがノコノコとスミソニアンに現れなかったら、事は露見していなかったでしょう。

 

もっとも、テイラー氏はアーチャーに腹立たしい思いは無いそうです。

 

「全体の描写が生き生きしているし、写真だって本物ではないにせよ、凄くリアルですからね。夫婦で騙して巨万の富を得ていたとは言え、大したもんですよ」と、感心すらしています。レーマン氏も同意見で、「日記は読んでて面白い。写真もそう。例え嘘だとしてもね」。

 

とは言え、今なお本物と信じ込んで使う人が後を絶たないので、スミソニアンの広報担当者は注意を呼びかけているのですって。

 

という訳で、皆さんも気を付けましょう(脂汗)。

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