ま、まぐれじゃないよ(岡本亮聖・絵)

剣豪・忍者

銃弾すら斬る!ルパン三世・石川五エ門の技は不可能に決まっ……てないのか!?

「居合」と聞けばどんな技や遣い手を想像する?

おそらく『座頭市』の市や『ルパン三世』の石川五ェ門があやつるアレ。抜く手も見せぬ抜刀術を思い浮かべるのではなかろうか。

刀を鞘に納めたままの状態から片手斬りを繰り出し、刃鳴りの音の一瞬後にはすでに刀は元の鞘に収まっている――。

マンガなどでは飛んでくる弾丸をそのまま斬り落としたりして、痛快な「ジョーカー」としての演出にも一役買っているが、

「そんな技術は漫画やフィクションの世界だけでしょ、ハハハハハ!」

と思う人がほとんどだろう。

ところが、である。

「高速で飛来する物体を居合斬りで両断する」という離れ業を体現している人物が実在するのだ。

 


世界が知るNo1剣士町井勲とは

その名は「町井勲(まちいいさお)」。

彼の名は武道家の一人として、国内外を問わず広く知られるている。

 

1973年生まれ。

幼少のころより各種の武道に親しみ、2005年、「無双直伝英信流(むそうじきでんえいしんりゅう)居合術」を元にした独自の流派、「修心流(しゅうしんりゅう)居合術兵法」を創始した居合術家として活動している。

 


剣術で数々のギネスを更新

そんな彼が世界的に知られるようになったのは、2007年のことだ。

フジテレビの『ザ・ベストハウス123』に生放送で出演し、「居合千本切り」のギネス記録を大幅に更新、36分4秒という新記録を樹立したことが大きな契機となった。

また、2004年にすでに成功していた「据斬七太刀」の記録が新たにギネス記録として認定され、2011年にはイタリアのテレビ番組「Lo Show Dei Record」収録中に「三分間速斬り」で252太刀の世界記録を樹立。

同年のTBSの「飛び出せ!科学くん」の収録では、時速820㎞で発射されるテニスボールを居合斬りで両断し、これらもそれぞれギネス記録として認定された。

その他、ピッチングマシンから発射される軟球を目隠しした状態で居合斬りで両断するなど、非常に高度な技を成功させてきている。

 

また、過去に海外TV番組で成功させた、初速約350㎞毎時で放たれる6mmのBB弾を居合斬りで両断するという技が凄い。

これも2013年6月、NHK BSプレミアム番組『欽ちゃんの全国びっくり王!』収録において再現し、ギネス記録として認定されるなど計5つのギネス記録を保持しているのだ。しかし……。

 


実は居合には存在しない飛来物体を斬る技術

実は、高速で飛来する物体を迎撃するというコンセプトは本来の居合術には存在しない。

町井氏が長年の鍛錬と独自の工夫によって編み出した技術であると考えられる。

そこで、町井氏のBB弾斬りなどにみられる技の秘密を、居合術のセオリーと比較することで考証してみよう。

まず、「構え」について。

居合とは本来、敵の急襲を受けた際に迅速に迎撃する技法群を指す場合が多く、したがって特殊な状況や特定の形を除けば「構え」というのは存在していないとされている。

しかし高速で射出される物体を素早く両断するため、あらかじめ刀の柄に手をかけていつでも抜刀が可能な体勢を整えている。

また、刀を鞘ごと大きく前に突き出した様子も独特だ。

一部の流派をのぞいてこのような体勢をとることはほとんどなく、町井氏の場合は、切先が鞘を離れる瞬間に鞘を引くことで刀勢を加速させる「鞘引き(さやびき)」を最大限に行うための工夫であると考えられる。

「刀を鞘から」抜くスピードと「鞘を刀から」抜くスピードを合わせ、抜刀の最高速度を狙ったものだろう。

岡本亮聖・絵

岡本亮聖・絵

 

ややかがめるような独特な姿勢にも合理性あり

そして、まるでガンマンの早撃ちのようにやや身をかがめるようにした前傾姿勢にも秘密がありそうだ。

小さな物体が高速で飛来するため、まずはその目標を正確に捕捉する必要のあることが予想される。

したがって、姿勢を低くして焦点を集中し、標的に確実に狙いを定めているのではないかと思われる。

居合では「柄で攻める」という言葉に表されるように、攻撃対象を柄の先端からの延長線で捉えて狙い、斬りつけるという方法が伝わっている。

町井氏もおそらく前傾姿勢で視線と柄を接近させ、あやまたず目標に一刀を放っているのだろう。

この試みで町井氏の技の卓越した点を考えると、単に速さや動体視力のみに留まらず、「間と間合い」の正確さを挙げることができる。

「間」とは、相手や物体との時間的な差、すなわち「タイミング」のことをいい、「間合い」とは、相手や物体との空間的な距離のことをいう。

居合においては、この「間と間合い」の見極めが重要な要素となり、これらの修得が眼目の一つとなっている。

挑戦にあたっては察するところ、通常よりも短めの刀を選んだようだ。

抜刀をより迅速にするためにはそれに適した刀のサイズや重さ・造りなどがあるため、最も適した刀を選択したことが予想される。

武器の選び方までを含めてこその武術であるとされるため、おそらく刀の選択には細心の注意を払っていることだろう。

町井氏はプライベートでは自身が創始した「修心流」を教授する道場、「修心館」の館長を務めるとともに、刀剣研ぎ師・刀剣商としての顔もあるため、まさに「日本刀のプロフェッショナル」ともいえる人物だ。

いつも刀を身近に感じながら生活しておられる氏ならではの努力と研鑽が実現させた絶技なのだ。

なお、「修心館」は兵庫県川西市に本部道場が、大阪府豊中市に「岡町道場」が、横浜市に「関東道場」が開かれ、「修心流居合術兵法」を学ぶことができる。

ギネス記録以外でも数々のテレビ番組などで難易度の高い斬術を成功させており、独自の境地を開き続ける武道家として熱い注目をあびている。

現代で最も注目される剣士の一人であることは間違いない。


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