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英国版女の園歴史ドラマ『TUDORS』レビュー 太い流れを描いてこその大河である

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「花燃ゆ感想マンガ」筆者の武者震之助です。(8月2日放送の「花燃ゆ感想マンガ」31回のレビューは→「31回「命がけの伝言」伊之助との愛を芽生えさせるために幕末関係なく奮闘します!キリ」です)

2015年7月、何がなんだかわからない大河ドラマが、何がなんだかわからないまま「大奥編」に突入しました(実のところ毛利家奥御殿編ですが)。何が哀しくて女の園だの女のたたかいだの見ねばならんのか! ごもっともです。しかしちょっと待っていただきたい。女の園が舞台ならば、歴史劇とはつまらないものなのでしょうか。
『花燃ゆ』はどうしようもない駄作ではありますが、画期的な部分もあります。例えば、跡継ぎが必要だからと毛利元徳の側室が入ると描いたところです。近年の大河ドラマでは側室は絶対悪として削除傾向にあり、主人公の選択条件にも「側室がいないこと」があるのではないかなどと推測されるほどです。そんな風潮にあって、側室を出したことはなかなか画期的ではあります。
が、しかし。
世継ぎのためには子作りと子を産むための女が必要という理由は、幕末ではおかしいのです。江戸時代初期ともなれば実子がなければ最悪改易もありえましたが、時代がくだるにつれ養子による相続が増えてきます。そもそも毛利元徳も銀姫も養子なわけで、「いざとなれば養子ありなのに、子作り励むとか言われても」と困惑せざるを得ません。
なぜこんな間抜けなことがまかり通るのでしょう。そもそもまともに世継ぎ作りにがっぷり取り組む気もないくせに、乃木坂46を出して銀姫が美和をいじる理由を作るというくだらない動機でこんなことをしているからでしょう。
世継ぎ作りのドロドロをちゃんとやるつもりなら、ガッツリやれ。
乃木坂46が閨房で脱ぐ場面が見たいとか、そういう下世話な動機ではなくて、ですね。ちゃんとそこをきっちり描けばおもしろくなるという観点から、ここを強く私は主張したいのです。民放の大奥ものは、ちゃんとできていますよね。
そんなわけで、ここは英国版『大奥』的題材でおもしろいドラマ、『TUDORS』を紹介させていただきます。(下の画像は日本語版公式HPより引用)

イギリスで人気の英国王は6人も妻がいたヘンリー8世 Who?

それでは早速ドラマの紹介と行きたいところですが、歴史背景を知っていた方がよいと思いますので、今回の前編では本作の背景をざっくり紹介したいと思います。
ここでクイズ。イギリスにいて、最も人気がある歴代の英国王は誰でしょう? 答えはエリザベス一世でも、ジョージ六世でもなく、実は本作の主人公ヘンリー八世なのです。ただしネタとしての人気です。六人も妻がいて、しかもそのうち二人が斬首というワイドショー的に盛りあがり要素があるのです。

なぜ、ヘンリー八世は六人も妻がいたのでしょうか?

ただの女好きだからではありません。それならば愛人で済む話です。実際、彼には多数の愛人と私生児がおりました。ヘンリー八世は、妻とその間の子、しかも女児男児が欲しくてたまらなかったのです。ここを抑えておかないと彼がただの狂った暗君に見えてしまうので、ここは重要です。
のちのメアリ一世やエリザベス一世が女王として権勢を保ったことを考えると、別に女児しか跡継ぎでなくともよかったのではないか、と思えるかもしれません。フランスなどのようにサリカ法典に従っていないのであれば、問題ないのではないかと思うかもしれません。しかしヘンリー八世が「女児じゃ駄目!」と思うのにはそれなりに理由があります。それをちょっとドラマ本編の前にメモしておきましょう。

1. チューダー朝の正統性は薄い(もっと言えば、ほぼない)

チューダー朝の祖であるオーウェン・チューダーは、ヘンリー五世の未亡人の愛人でした。この時点で「あれっ!?」と思う人もいることでしょう。王家の子孫ならともかく、王家と血のつながっていない配偶者の愛人の子孫に(ややこしいですね)、何故王位継承権があるのか。これは当時からおかしいと思われていました。チューダー朝の者よりも正統性のある王位継承者は大勢いたのです。その多くは、ヘンリー八世とその後に続くチューダー朝の君主によって処刑されました。

2. イングランドの王権がまだ弱い

ヘンリー八世の娘にあたるエリザベス一世の時代に活躍したのが、かの文豪シェイクスピアです。彼の著作を見てみると、イングランド王の名がタイトルの作品が数多くあります。彼は自国の君主を扱えばネタに事欠くことがありませんでした。多くのイングランド王が玉座をめぐり、波乱の人生を送っていたからです。リチャード二世やヘンリー六世は幽閉され失意のうちに生涯を終え、リチャード三世は戦場で敗死しました。チューダー朝以前の英国王たちは、貪欲な諸侯に囲まれていました。ひとたび弱体化したら王位を狙われ、あっけなく死すら迎えるような境遇にあったのです。

3. 英国史上、女王はまだいなかった

ヘンリー一世の娘にしてヘンリー二世の母・モードは、父からイングランド王に指名されたものの、世間はそれを認めませんでした。チューダー朝以前、女系の王はいたものの女性の王はまだいなかったのです。その認識を変えることになるのは、ヘンリー八世の娘たちなのです。そんな未来を知るはずのないヘンリー八世は「女の君主なんて認められないに決まっている」と思い込んでも仕方のないことでした。

このように、虎視眈々と王位を狙う諸侯がいる国で、ただでさえ正統性の薄いチューダー朝に女児しかいないとなれば、また内乱が起きて王朝が転覆してしまうとヘンリー八世が思うのも、やむをえない状況ではあったのです。しかもこんな男児が大事な状況なのに、なぜか流産、死産、夭折が相次いでしまうのでした。運命のいたずら? いいえ、実はヘンリー八世が梅毒持ちであったからという説もありますので、あまり同情はしなくてもよいかと思います。

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ヘンリー8世最初の王妃の悲劇

それでは本編の解説を……と行きたいところですが、まだ前振りが続きます。ドラマが始まる前のヘンリー八世とその一番目の王妃であるキャサリン・オブ・アラゴンについてです。
日本語版公式サイトによりますと、ヘンリーの父にあたるヘンリー七世は野心がないと書かれておりますが、そんなわけはありません。そもそも野心がない男が、王位継承の正統性が薄いにも関わらず諸侯を押しのけ、玉座に座るわけがないのですから。

世間的にヘンリー七世が野心家ではないように思えるのは、シェイクスピアのおかげもあるかもしれません。ヘンリー七世が打ち破ったライバルがリチャード三世。シェイクスピアの作品で醜悪な野心家として描かれた王で、幼い王子たちを幽閉し殺害した逸話も有名です。シェイクスピアのスポンサーは、ヘンリー七世の孫にあたるエリザベス一世です。スポンサーの機嫌を損ねないためにも、チューダー朝に倒された側を悪辣に脚色するのも、仕方のないことであったのでしょう。文学は文学としてさておき、最近の史学では「リチャード三世よりむしろヘンリー七世の方が謀略を駆使していたのではないか?」という説もあります。日本でも「はかりごと多きは勝つ」とも言いますしね。

スペインから実家のお金目当てで嫁がされたのに愛する夫はすぐに死亡

さて、このはかりごと多き勝者ヘンリー七世によってとんでもない目に遭わされた人はたくさんいます。それがライバルならまだしも、息子の嫁にあたるキャサリン・オブ・アラゴンも含まれておりました。

キャサリンは、アラゴン王フェルナンド2世とカスティーリャ女王イザベル1世の末娘として産まれました。イングランドにとって当時のスペインは大国であり、そこから王妃を迎えるとなれば多いに箔が付くというものです。キャサリンは1501年、インランド王太子・アーサーと結婚することとなりました。このときヘンリー七世の脳裏にあったのは、スペインからもたらされる莫大な持参金でした。病弱であったアーサーはキャサリンとの結婚後、夭折してしまいます。未亡人となったうら若きキャサリンは、本国に返されてもよいところですが、持参金に目がくらんだヘンリー七世はイングランドにとどめました。

しかもあきれたことに、
「持参金支払いも中途半端な金づるのくせに、生活費を払うなんてやってられるか!」
と、驚異の吝嗇家ぶりを発揮し、キャサリンの生活費をギリギリまでカットしました。キャサリンは、侍女たちはリストラされ、生活必需品にすら事欠くほどの暮らしを強いられました。

義父に迫られ、そして夫の弟・ヘンリー8世と

キャサリンの困窮ぶりはスペインにも伝わっていたはずですが、末娘ということで愛情が薄かったのか、ほぼ無視されました。しかし王妃に先立たれた義父のヘンリー七世がキャサリンを後妻に据えようとすると、流石にスペイン側が激怒しこれは実現しませんでした。

そんな哀れなキャサリンを、熱いまなざしで見つめる若き王子がいました。アーサーの弟であるヘンリーです。虚弱であった兄とは似てもにつかず、堂々たる体躯の持ち主でした。一人で尻が拭けなくなるほど肥満するのは、もっと後のこと。美貌で知勇兼備の若きヘンリーはディズニー映画に出てきそうな、まさに夢の王子様でした。
ヘンリーはがめつく計算高い父とも違い、騎士道にあこがれるロマンチックな性格の持ち主でした。ヘンリーの母の父にあたるエドワード四世は、ハンサムなプレイボーイとして浮き名を流しており、多くの愛人がおりました。エドワード四世は、国王としては珍しく身分が低く、また未亡人でもあったエリザベス・ウッドヴィルと恋愛結婚しています。ヘンリーの美貌とロマンチックな恋愛脳ぶりは、この祖父に似たのかもしれません。

ロマンチックな愛の成就も男子にめぐまれず・・・

ロマンチックな王子は、父の死後王位を継承しヘンリー八世となりました。そして彼は、廷臣の反対を押し切ってキャサリンを王妃としました。ディズニー映画ならここでめでたしめでたしなのですが、歴史とは非情なものです。もしも夫妻の間に王子が産まれ、健やかに育っていたらば、ハッピーエンドであったことでしょう。寵愛が薄れてからのイメージが強いキャサリンですが、実はヘンリー八世と夫婦として仲むつまじく過ごした時間は、六人の妃の中でも最も長いのです。

ヘンリー8世(公式HPより引用)

赤ん坊は次から次へと産まれました。ところが次から次へと夭折し、かろうじて育ったのは女児のメアリ一人だけでした。前述の通り、この不幸な結果はヘンリー八世がフランス遠征時に梅毒をうつされたためという説もあり、キャサリンが気の毒です。
キャサリンは出産適齢期を過ぎ、度重なる出産で老けこんでいきました。このまま王子がいないとなると、父から受け付いた王朝を後に残せないかもしれません。ヘンリー八世は焦り始めます。
そんな時、ヘンリー八世の目の前にブルネットの若い女が現れます。キャサリンの侍女であるアン・ブーリンです。かくしてチューダー朝の数奇なドラマが始まります。ここまでがざっくりとしたドラマの背景です。映画の『1000日のアン』、『わが命尽きるとも』、『ブーリン家の姉妹』、BBC作成の『ヘンリー八世(邦題はなぜか『キング・オブ・ファイヤー』というひどいもの)などが映像作品としてありますので、こちらも興味があれば是非ご覧ください。またヘンリー八世の宮廷を家臣の目から見た『ウルフホール』という新作ドラマが2015年のエミー賞にノミネートされております。小説もたくさんありますが、ここはとりあえず、映像作品を取り上げるということで割愛させていただきます。
さて、長くなりましたが、ここまでが前振りです。いよいよ、容赦なき女の園バトルドラマの特色を解説させていただきます。

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