『おんな城主 直虎』感想レビュー第6回「初恋の別れ道」 甘いロマンチックの中に一匙の腹黒さ

 

こんばんは、武者震之助です。
序盤の二月に主人公のその後の人生を左右する初恋を扱うのは定番といえます。
しかし今年の場合、苦い結末となるのは確定しているわけです。昨年のきりに続き、二年連続「愛する人と結ばれなくても、その人生を見守ること」を選ぶ今年のヒロイン。さて、苦渋の決断はどう下されるのでしょうか。

 

今川に確認の必要などない!と強がる直平に対し左馬助は……

十年ぶりに井伊谷に期間した亀之丞は、元服の後には還俗した次郎を妻にすると宣言。
亀之丞は元服して肥後守直親になります。
井伊直親本人の凛々しさもむろんのこと、この希望の星の帰還と成長に喜ぶ井伊家の面々を見ていると、切なくなってきます。

今までは井伊直政の父で短命という認識しかなかった人も多いと思います。
しかし今年改めて、井伊直親には波乱万丈の人生があり、周囲の人々や領民から愛され、前途ある若者だったとわかるわけです。その後の運命を思うと、四百年前の人物なのに気の毒だなあと思えてきてしまいます。

さて、懸案となった次郎(井伊直虎)の還俗です。直親も次郎も、その周囲もすぐにでもそうしたいのはやまやまなのですが、そう簡単にはいきそうにありません。
まっすぐな気持ちを次郎にぶつけてくる直親、それに応じられず戸惑う次郎。二人は直親の父・井伊直満の粗末な墓を参拝します。
このあまりに粗末な土饅頭を見ると、直満が謀反人であり死後十年を経ても今川の目を気にして改葬もできないという、哀しい現実がわかるわけです。次郎はこの場面で、自分の出家は井伊家本領安堵と引き替えであるから、還俗はできないと打ち明けます。謀反人の子である直親の帰参を認めてもらったうえに次郎の還俗を認めてもらうのは難しいと次郎は言います。
直親は何か策を考えると言うものの、井伊家の人は策を考えるのが苦手ですからね。

ここで強引でアバウトな井伊直平は「十年前だし忘れていたとごまかせるだろう!」と言い切るわけですが、今川の目付である新野左馬助は「そんなわけにはいかない」と渋ります。
結局、左馬之助は、今川家の様子を探るために駿府へ行くことに。

 

マウンティング女子会で”痛い女子”扱いされる瀬名

今川家は尾張攻めが絶好調で、兵数が足りないほどです。そのため何かを頼もうとすると引き換えに兵役を課されると、今川家臣から聞かされる左馬之助。これはなかなか厳しそうです。

駿府には瀬名(築山殿)がいます。
女友達と和歌を優雅に詠んでいる瀬名ですが、和やかな集まりというわけでもないようです。

「私も縁談決まりましたの」
「まあまあそれはよろしいこと」
「瀬名様もそろそろ決まるんじゃないですか。再婚相手を探している人いるみたいですし」
優雅なようで、その実態は容赦ないマウンティング女子会でした。今川氏真に強引なアプローチをした挙げ句袖にされた瀬名は、ちょっと痛い女子として見られているようです。

瀬名は「私は急いておりませんので」と捨て台詞を言い残し、その場を去ります。
目線の先には鷹に餌をやる氏真の姿。そしてもう一人、雀に餌をやる竹千代(のちの徳川家康)の姿が。

「鷹をいただけないからって、雀の世話するなんてあんたバカ? 雀なんて人にも懐かないし狩りもできないでしょ! いくら育てても鷹にならないのよ!」
と、理不尽にも竹千代に八つ当たりし、キレる瀬名。
どうやらストレスが溜まっているようです。

ちなみに史実での家康は、人質時代に雀ではなく百舌鳥を育てていたとか。

 

南渓和尚の例え話に対して次郎は何を思う?

話は井伊谷に戻ります。
次郎は村人の噂話から「還俗なんて意外とラクですよね」なんて話をふられて動揺しております。寺に帰った次郎は、自分が井伊家の女(むすめ)でなければ還俗なんて簡単なのにと愚痴ります。

そこに南渓和尚が饅頭と酒瓶を持ってこう例え話を出します。
「昔、超の国の道威(どうい)という王に、中と伯という大臣がいた。ある争いから王はどちらか一人を追い出さねばならなくなった。二人は主君から饅頭を二つもらった。中は主君からもらった饅頭を一つ食べ、もう一つを飢えた子に与えた。伯は一つ食べ、饅頭を取っておいて黴びさせてしまった。王は伯を残すことにした。何故だろうか?」

この答えは保留となったまま、画面が切り替わり直親の姿が映し出されます。
弓術が得意、仕事熱心で領民思い、カリスマもある直親。
小野政次と弟の玄蕃は、そんな彼の噂話をしています。玄蕃は素直に褒めますが、政次は「聖人君子ではあるまいし、苦労を重ねたわけだから、直親は人がいいだけではないだろう、小野一族に何か一物あるのでは?」と推測します。

そこに直親本人が訪問して来ます。
直親は、政次が父の悪評のあおりを受け未婚であることを気にしており、互いに親のことで苦労するものだと慰めます。さらに直親は、これからもよろしく頼むと爽やかな笑顔で声をかけます。父に似て若干屈折してきた、そうならざるをえない政次に対し、直親はまっすぐな人柄のように見えます。

 

「ここはもう、死ぬしかないと思うんだ。死んで一緒になるしかない」

直親は、帰ってきた左馬助と現当主の直盛から、何かを今川に頼むと軍役を課される、直親帰参はともかく次郎還俗を頼むことは難しいという話を聞かされます。
直親は納得し、二度と次郎還俗は持ち出さないと言うのですが、果たして本心はいかに。

千賀も、還俗ができないだろうと次郎を説得し、謝ります。次郎は自分の暴走が出家につながったとわかっていますし、納得するほかありません。千賀は愛娘の犠牲に心を痛めますが、南渓は、あれはあれで僧としての暮らしを楽しんでいるようだと慰めます。

本当に直親はあきらめたのでしょうか。
直親は直平に相談を持ちかけます。直盛には言えなかったそうですが、果たして何でしょうか。

次郎は「直親は何かしら策を考えると言ったけど結局なかったのか……」と井戸の前で立ちすくんでいます。そこへ直親がやって来てこう言います。
「ここはもう、死ぬしかないと思うんだ。死んで一緒になるしかない」
まさかの心中宣言かと思っていたら、
「死を偽装して別人として結婚すればいい」
と斜め上の提案をします。
偽装死のあと、直平の協力で川名の里にほとぼりが冷めるまで隠れることにするとまで決めている直親。実は直平や直満に似て、なかなか無謀なことをしたがる性格です。

直親は「仕方あるまいとあきらめて生きていくのか?」と次郎を焚きつけ、恋愛街道を駆け抜ける宣言をします。押しの一手に次郎も同意し、遺書を用意するところまで話は進みます。
実はヒロインより相手の方がロマンチックで無謀でした。
続きは次ページへ

 

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コメント

    • 匿名
    • 2017年 2月 19日

    前回、真田丸で20年ぶりに大河ドラマを最後まで見たと書いた者です
    今回はやはり主演の柴咲コウさんの熱演ぶりがスゴいですね、存在感が違います、インタビューで本人が語られてましたが大河ドラマ初出演で主役抜擢ですから気合いが違うのでしょう
    脚本の森下桂子さんもサスガのひと言です、ハードな展開にチョッとしたギャグを盛り込むところなど三谷さんにも通じるところがあると思います、ドラマは長丁場になればなるほど脚本家の技量がモノを言いますからね、さすがは「仁」で泣かせてくれた方だと感心しております

    今回は1554年の話で太源雪斎が翌年に亡くなり、1560年に桶狭間の戦いで井伊家の人々が無くなる展開なのでしょうが雪斎の死はナレ死で終わってしまうのかどうか気になるところです

    • 匿名
    • 2017年 2月 16日

    今回の次郎と直親の決意のシーンを見ていると、韓国ドラマの「イ・サン」や「トンイ」でこういった感じの決断のシーンをよく見たような気もします。これらが日本で放映されていた頃は、NHK大河は少々物足りなかったような記憶も。

    • 渭伊さん。
    • 2017年 2月 15日

    歴史オンチで 今までの大河もさほど見てはいませんでした。こちらにかいてあることが本当に大河を見る上で参考になります。地元の話なのに全く知らないで いました‥。おんな城主 直虎は 初回から楽しんでみています。今回の話で切ないシーンがいくつかありましたが、亀之条元服の時、めでたい、喜ばしい表情が多数ある中で今村藤七郎の涙が印象に残りました。亀之条を背負い山中を逃げ、10年間 側に仕えこの日を迎えられたと思ったら胸がいっぱいになります。これからたくさん悲しい場面が、悲しい別れが待っているかと思うと、泣かずに見られる自信がありません。

    • 匿名
    • 2017年 2月 14日

    笑いを誘うシーンは重い場面の傍らに差し挟まれてきており、余計笑ってしまいます。「お手つき」「おじ上ーーッ!」ときて、今回は自害を偽装しようとし、別れの辛さに泣きながらかかしを作っているシーンでしょうか。
    コミカルなシーンを演じる柴咲コウさんはあまり見たことがなく、新鮮な感じがします。

    • 匿名
    • 2017年 2月 13日

    「策を考える」と言いはしても実際にはなかなか考え出すことができない井伊一族の面々。
    一方、策を考えることの大好きだった昌幸はじめ昨年の真田一族。でも実際は構想倒れで使えなかったり、何か策を考えているように見えて実は空っぽだったり。
    二代目服部半蔵の「我に秘策あり」の中身に大笑いしたことも思い出されるところ。
    神ならぬ身の人間のすることである以上、角度を変えてみるとあまり違いはないのかも。

    あ、ここでもまた引き合いに出してしまった。

    • えびすこ
    • 2017年 2月 13日

    一昨日の土曜スタジオパークに柴咲コウさんと三浦春馬くんプラス新井美羽ちゃんと藤本哉汰(ふじもと・かなた)くんが出ていました。
    2月から春馬くんが出てきて日曜の楽しみができました。
    ひきあいに出して申し訳ないのですが大河ドラマに三浦春馬くんが出てきたことで、彼1人で朝ドラ・べっぴんさんの男性陣を吹き飛ばしてしまったような感じがします。
    ただ春馬くんが後半で別の人の役も兼任することがなければ、直親死去をもって春馬くんの出番が終わってしまい、史実どおりに行くと小野兄弟もどうなるかわからないので、「次郎法師・直虎と(年齢で見て)同世代の男性陣がいなくなるのでは?」の懸念があります。いわゆる「直親ロス」です。そうなると直虎体制での井伊家家臣団は顔ぶれが総入れ替え(父親の代からの老臣もほとんどいなくなる)になるので、新しく家臣となる人を演じる新キャストには30歳前後の俳優を起用しないといけないのでは?
    菅田くんが出るまではやや男性陣が寂しくなりそう(平均年齢も上がる?)な予感もするので、井伊家を取り仕切るようになった後の直虎を支える家臣役には頼もしく見られる俳優さんを当ててほしいですね。
    最後に気になった点で直虎の母方従兄弟の「新野孫一郎」と言う人物が今後どういう立ち位置になるか?

    • 匿名
    • 2017年 2月 13日

    いつも楽しく拝見しています。
    よく真田丸のきりや信繁を引き合いに出されますが、あちらはあちらで存分に楽しみましたし、こちらはこちらで今充分に楽しめる作品なので、そう頻繁に触れずともいいかなと個人的には思います。
    さて女大河の鬼門、恋愛が出て戦々恐々でしたが、後の火種をにおわせつつ、次郎の覚悟を確かにする爽やかな終結で安心して見られました。
    自分で考えて運命を受け止めていく様子は清々しく好感が持てます。これからのさらなる過酷な時代にどう立ち向かうのか今から楽しみです。

    • 匿名
    • 2017年 2月 13日

    第一回の時はつい真田丸と比べてしまってましたが、今やこの作品をかなり楽しんでます。
    往年の名作少女漫画のような真面目で切なく深い恋愛ものを見てるみたいです。
    三角関係で皆魅力があるってのも悲劇なのも王道ですね。
    直親の実はちょっと強引ってもう定番じゃないですか。
    それにしても男性陣は僧侶以外は皆性格が危なっかしくて不安が高まります。
    そんな中での竹千代の性格の安定感。
    直親の完成系としての直政も楽しみです。もう決まってる役者さんが癇の強そうな顔であるところを見ると、
    甘いところを削ぎ落とした隙のないタイプになるんでしょうか。
    死んでいく運命の人たちに感情移入してしまうように出来てる作品なのでこれからが辛い。
    幼いころのあの無邪気さがじわじわ効いてくるんでしょうね。
    皆倒れていっても竜宮小僧になると決意したあのピュアな所を持ち続けて生きていくんでしょうか。

    風林火山みたいに最初かなり面白くて後半でがっかり(個人的意見ですが)にならないことを期待しています。

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