『真田丸 完全版ブルーレイ全4巻セット』/amazonより引用

真田丸感想あらすじ

『真田丸』感想レビュー第45回「完封」 CGでもいい 大量兵士のワラワラ感が欲しい

 


大助の誘いに乗り、前田隊と井伊隊が次々に

早朝、初陣の真田大助は六文銭の旗を振り、「高砂や」を唄い始めます。これはかつて第一次上田合戦(第十三回)で父が果たしたのと同じ挑発役です。

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まんまと挑発に乗った前田勢は、真田大助らのあとを追って真田丸にまで引きつけられてしまいます。

真田丸真田大助

ここから幸村が采配を振るいます。佐助が爆発を発生させ、敵方に大坂方が内部分裂したと思わせます。勝永もお手並み拝見と言いながらやってきました。
前田勢は空堀に気づきますが、背後からは井伊勢が迫るため後退できません。

「敵はひとつの塊ではない。所詮、人の集まりじゃ」(第三十八回での昌幸の言葉より)

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空堀を上ってきた前田勢は、鉄砲の餌食となって転げ落ちてゆきます。あんな道を、しかも撃たれながら進むのははっきり言って地獄そのものですが、敵は手を緩める気はありません。

「真田勢有利で進むかに見えた……」
ここで不気味なナレーションが入ります。この直後、長宗我部盛親が石落としを開こうとするのですが閂が外れず手間取り、それと前後して真田丸の中に敵が侵入してきます。
幸村や又兵衛も刀や槍を振るって敵をなぎ倒し、内記は弓矢で敵を射殺。さらに勝永がやたらとかっこつけた笑顔を見せながら、盛親が手間取る閂を撃ち抜きます。おのおの力を思う存分に発揮し、前田勢はついにたまらず撤退し出すのでした。

この場面、豊臣方全員がカッコイイです。秀頼に「総大将は動いちゃダメ」と言っていたわりに、現場指揮官の幸村がちょろちょろするのはどうかと正直思わなくもありませんが……多分、主人公である以上白兵戦もしないというノルマがあるんだと思います。ハイ。ビジュアル重視だね!

 


「日本一の兵! 真田左右衛門佐!!」

「一兵たりとも討ち漏らすな!」
叫ぶ幸村。前田に混じり、徳川の旗印が虚しく倒れます。仕上げとばかりに幸村は出馬し、騎馬で敵に追い打ちをかけるのでした。

赤備えの真田勢は、さんざんに敵を打ち破ります。
その姿に感激したのは味方だけではありません。上杉主従が感極まった顔で幸村の活躍を見つめ、景勝に至っては
「日本一(ひのもといち)の兵! 真田左右衛門佐!!」

と絶叫までします。えぇ……気持ちはわかるような、わからないような。アイドルのファンですか。おまけに横ではあの兼続がにっこりと微笑み、あたたかいまなざしを主君に注いでいます。

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真田丸<a href=直江兼続霜月けい" width="370" height="320" />

家康はまたしても真田にしてやられた、と激怒。ひとまず前田と井伊を撤退させ、次の手を考えることにするのでした。

赤い旗がたなびく中、帰陣した幸村は歓呼の声に迎えられます。
まさにこれぞ真田幸村伝説です。
策と勇、まさに知勇兼備です。勝ちどきをあげる豊臣勢。たとえここに居る人がこれから全員斃れるのだとしても、この瞬間は輝いていた、そんな風に思い出したい場面でした。

幸村は戦果を絶賛し感激する木村重成に、他の者には内密にと前置きしてこう漏らします。
「かような大戦、私も初めてなのだ……心の臓が口から飛び出しそうであった」
長い、思えばここまで長い道のりでした。
今このとき、真田幸村は、大将として大輪の花を咲かせたのです。

 


今週のMVP

真田幸村です。もはや何も言うことはありません。言葉は不要でしょう。
次点は上杉主従で。突然叫び出す景勝、なんであのチベットスナギツネ顔の兼続の、慈愛に満ちた微笑み。よいものを見ました。

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総評

全体的に言えばすごくよい出来だと言いたいんです。
鹿角の兜、赤備えの幸村が疾走するだけでぐっときて感極まってしまいます。三白眼になるほど気合いを入れて疾走する堺雅人さん、最高でした!

しかし、どうにも何かもう一つ足りない。
脚本でもなければ、役者でもない。セットだって頑張っている。エキストラだって頑張った。

◆【真田丸】大坂の陣、徳川兵のエキストラに上田市民を起用する奇策(→link

うーん、なんだろう。ずっと考えていました。
それで思いついたのは「ワラワラ感」不足です。

前田勢のあとに井伊勢がいるから押し出される。上杉はじめ、大大名の大軍がいる。
敵は総勢三十万……となれば、地平線まで埋め尽くす、絶望的なまでの多くの兵士が見たいわけです。上杉勢が大勢いると言われても、目に見えるのは景勝と兼続しかいないわけです。
CGの鳥瞰図で真田丸も見えますが、兵士の姿までは確認できないわけです。

それもそのはずで、五十人程度のエキストラだからなんですね。
それ以上が画面に入らないように入れ込んでいるわけで、あとは画面の外にいると想像してくださいということなんでしょうけれども。幸村が馬上で戦う姿なんて本当に格好いいんですけれども、兵士の絶対数が足りません。真田丸だけで六千人いるはずなんですけどね。

これが「ワラワラ感」不足です。
2010年代の歴史ドラマとして見ると、これはあまりに物足りないのです。この点は2013年の『八重の桜』の方がまだ上だった気がするんですね。

私なりに理由を考えたのですが、おそらくエキストラを使用した実写にこだわったからではないか、と思うのですが。
しかし何度もくどいのですが、やはり2010年代の歴史ドラマならば、そこはCGに妥協してもよいのではないでしょうか。テレビ画面が大型化し画質が向上した現在、従来の大河ドラマのように実写だけでは迫力が出ないのです。
リアルな「嘘」であれば、その「嘘」があってもよいと個人的には思うわけです。

回りくどく書いていますが、要するに「VFXでもっとワラワラ感を出して、びっちりと兵士がいればなあ。現状でもいいけど、そうしたらばもう言うことないのになあ」というぼやきです。
十年前と違って、現在のCGは実写と見分けがつきません。
OPのラストで大勢、CGの騎馬武者が疾走しているではありませんか。あの技術を本編で生かしてもらえないでしょうか。

参考までに『ゲーム・オブ・スローンズ』シーズン6のVFXメイキング動画をあげておきます。2010年代の歴史ドラマにおける「ワラワラ感」はこれがおそらく最高水準です。これに近づく日が来ることを祈ります!!

著:武者震之助
絵:霜月けい

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【参考】
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