海北友松が芸術家として名を残せたのは、お市の嫁いだ浅井家が滅んだから?

 

織田信長が「非情な人間」だと思われている理由の一つとして、「身内にも厳しい」点が上げられます。
ところが、詳しく調べていくとそうとも限らなかったりします。
天正元年(1573年)のあす8月28日、信長の妹・お市の最初の嫁ぎ先である浅井家の小谷城が落城しました。

「妹の旦那殺すとかヒドイ!」と思われるかもしれませんが、信長もやりたくてやったわけではなさそうです。
そもそもお市は信長が超・超・超!溺愛していた妹。美人なことで有名ですが、信長が「お前が男だったらいい武将だっただろうなあ!」なんてベタ褒めするくらい頭も良かったそうです。

そんな可愛い可愛い妹を嫁がせたのは、浅井家を味方につけたかったから。
京都までスムーズに行き来するために、途中の近江国(今の滋賀県)を治めていた浅井家の協力が不可欠だったのです。

実際、お市と旦那さんの長政は仲がよく、子供も5人恵まれました。
1567年に嫁いで1573年までに5人ですから、ほぼ毎年出産していたことになります。

※TOP画像はイメージです(天龍寺「雲龍図」)

 

リア充がビッグバンしてアーチスト・海北友松が生まれる

しかし、うまくいったのは家庭内だけの話で、信長が浅井家の同盟相手・朝倉家を攻めたことにより両家の蜜月は終わります。
信長からすれば、「妹と旦那は仲いいみたいだし、浅井はオレにつくだろう」と見ていたのかもしれません。
ですが長政は「代々仲良くしてきた家を裏切るなんてできない!」と考え、織田家と敵対する道を選びました。その後、浅井家は滅びの道を辿ることになったのです。

さて、この後味の悪い戦の中で運命が変わった人がいました。
その名は海北友松(かいほうゆうしょう)(1533-1615)。
実は本日の主役はこちらの方です。

彼はお父さんが浅井家の家臣でした。
三男とも五男とも言われており、食い扶持を減らすためでしょうか、幼少のころから寺に預けられました。
そうしているうちに、浅井家滅亡とともに父やお兄さんたちが皆死んでしまったため、家を再興するために40歳で還俗したといいます。
しかし、お家再興はそうそううまくいくことではありません。

友松は歯噛みし、何とか実力者と交流を持つための方法はないか?と考えました。
そこで思いついたのが、連歌や絵画などの文化的な技術を身につけ、名のある武将たちと知り合うきっかけをつくることだったのです。

 

友の亡きがらを奪い取るカブキぶり

彼は当時広まりつつあった「茶の湯」にも親しみ、明智光秀の家臣・斎藤利三(としみつ)などの武将や東陽坊長盛(とうようぼうちょうせい)といった僧侶と親交を結ぶことができました。
特に利三とは仲が良かったらしく、光秀が滅びた後は処刑された利三の遺体を「ダチを返さんかい!!」と槍を振るって奪い去り、手厚く葬ったという説もあります。

芸術修行もしたとはいえ、やはり元は武家ですから、武家として家を再興したい。
どうしようかと再び悩む友松に、決断させたのはその頃天下人になっていた秀吉でした。
「お前、絵を描くほうが向いてそうだからそっちに集中しろよ」と。
秀吉が友松の気持ちを知っていたかどうかはわかりませんが、皮肉なことに手段が目的になってしまったのでした。
友松は納得いかなかったようですが、天下人の命令には逆らえません。
その後絵画の道に生きた友松は、数々の名画を生み出していきます。

でもやはり本望ではなかったのか「オレ、やっぱり芸術家よりも武家として生きたかったよ。年取っちゃったけど、まだどこかにチャンスないかなあ」なんてボヤキが残されています。
そんな未練を抱えていながらも、重要文化財級の絵画を描けたのですから、秀吉の見立ては当たっていたのでしょうね。

そんな友松のお墓は、京都の建仁寺というところにあります。
ここは教科書や資料集によく載っている「風神雷神図」があるお寺です。
友松の作品のひとつ、「雲竜図」などは元々ここのお寺の襖に描かれたものでした。
台風でそこの建物が壊れてしまってからは、掛け軸として仕立て直され現在も残っています。

ちなみに、友松のお墓の隣には親友・斎藤利三のお墓があります。
「オレが死んだら、友達の隣に墓を作ってくれ」と言い残していたそうです。
雲竜図などの名画は、もしかすると利三の供養の意味もあったのかもしれませんね。

本望ではなかったものの、人に見出されて立派な作品を残した友松。
もしかすると、現代でもこんな人はいっぱいいるのかもしれませんね。

参考:京都国立博物館 今日は何の日?徒然日記

 


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