1297年永仁の徳政令に江戸時代の棄捐令 武士の必殺技「借りた金はチャラでござる」

 

いつの時代も、身分の低い人ほど生活が苦しいものです。

日本の場合、皇室も幕府も一般人もビンボーだったという、とんでもない時代があったのも事実ですが、まぁそれは気候や天災のせいだから仕方がありません。

しかし、「下っ端が働けずに上も苦しくなる」あるいは「上に対する不満が凝り固まってあらぬ事件が起きる」なんてことが予測されるときは、一応上の人達も「なんとかしてやるか」と行動に出ねばならず、実際そうしたことが何回かありました。

ただ、その方法が現代から見ると、「どうしてそれで解決できると思ったのよ」とツッコまざるをえないものだったりして……。

永仁七年(1297年)3月6日、鎌倉幕府によって永仁の徳政令が発布されました。平たく言えば「エライ人から金融業者に“ウチの下っ端の借金を免除するように”と命じた」というものです。

もともと「徳政」という言葉の意味にはお金のことは含まれていないのですが、生活が苦しい→借金が多いせいだ→ならチャラにすればいいよね! という流れで借金チャラ法になったようです。まさに現金な話ですね。

永仁の徳政令は9代執権・北条貞時の代で実施された/Wikipediaより引用

永仁の徳政令は9代執権・北条貞時の代で実施された/Wikipediaより引用

 

借金チャラにされるなら、もう、お武家さんには貸さないよーだ

永仁の徳政令の場合は、さらにイヤな感じの裏事情もあります。
この時期、幕府の中では御家人の元寇への働きに対し、ロクに褒美を出せないことが問題になっておりました。他国から攻められた防衛戦で新たに土地や物を得たわけではなかったので、「ない袖は振れない」という感じだったのです。
それでも働いたのは事実ですから、御家人達は褒美を今か今かと待っています。

そこで「褒美の代わりに、今している借金をチャラにできるよう取り計らうから、それで勘弁して(´・ω・`)」というわけで金融業者にしわ寄せがいったのでした。
一時的には効果があったものの、マイナスがゼロになっただけで収入が増えたわけではないので、結局御家人達の貧乏っぷりは以前と大して変わりありません。

それどころか「お武家さんにお金貸しても返してもらえないし、訴えても聞いてもらえないんならもう貸しません!」ということで借金すらできなくなってしまいました。

保護されたはずの御家人も「金を借りないと生活ができないのに、お上のせいで借金できなくなって余計苦しくなったじゃないか!」と思うのは当たり前ですよね。

こうして鎌倉幕府打倒の流れができていったのです。あーあ。

「正々堂々と戦え!」「おぅ!」「ぷぎゃぁあああ」

キッカケはこの連中・・・/Wikipediaより引用

 

なぜ江戸時代も鎌倉と同じ失敗を繰り返すのだ!? 

そんなわけでこの「借金をチャラにする」という方法は上策ではないということがはっきりしたのですが、江戸時代によく似た「棄捐(きえん)令」がたびたび出されています。

なぜ失敗した政策をわざわざ真似るのか、私にはサッパリわかりません。

が、江戸時代も鎌倉と同じく【御家人や旗本】といった下っ端の武士は生活が苦しかったので、何とかしてやろうということで実施されました。時代劇などでお侍さんが傘張りなどの内職をしているシーンがたまにありますが、あれはギャグでも何でもなく切実な収入源だったのは有名な話ですよね。

問題は・・・

なぜ彼らの生活は苦しかったのか?

江戸期最初の棄捐令は松平定信さんのとき/Wikipediaより引用

江戸期最初の棄捐令は松平定信さんのとき/Wikipediaより引用

 

江戸の物価が高くなったため、御家人たちが困窮

戦がない江戸時代で定期収入があれば、普通は平和な暮らしができそうなもんです。

しかし、それでも彼らが貧乏になってしまったのは、ほかならぬ江戸に定住しなければならなかったからです。江戸は人口の多さに釣られて物価も高くなり、御家人たちは収入に見合わない出費をしなくてはならず、結果スカンピンになってしまったのでした。

そもそも給料として得る米をお金に換金せねばならない時点で余計なコストが発生しているのであり、一方でお金を扱う両替商などが濡れ手に粟だったのは否定できないでしょう。この役どころをお武家さんで受け持つことはできなかったんですかね・・・。

ちなみに地方というか各藩の地元で働いている武士は、半士半農生活で何とかやっていけたようです。そっちのほうがいいと思っていた旗本・御家人もたくさんいたでしょう。

 

そして悲劇は再び・・・ねぇ、お金、貸してよ(;´Д`)

棄捐令は江戸時代に何回か出されています。

が、中身は徳政令と似たようなもので、「金融業者は借金をチャラにしろ」とか「利子をなくせ」とか「今までの利子の分で元金越えてんだからもういいだろ」といった内容でした。
となるとオチも似たようなもので、「返してもらえないのわかってるから貸しません」と言い出す金融業者が続出。やっぱり下っ端の生活はあまり楽にならなかったのです。

そもそも借金をしないで済むように給料を上げてやるとか、物価高騰を抑制するとか別の方法を試せばよかったと思うのですが、残念なことに最後まで良い方法は見つけられなかったようです。

私が一つ思うのは、食い詰めている旗本が大勢いる中、よくもまぁ大奥ばかりが贅沢をして、襲撃されなかったということです。一応、大奥にも倹約が言い渡されたり、御台所が着物を下げ渡したりなど、全く無関係ではなかったのですが。

現代では、さすがに徳政令をやろうなんてアホなことを言い出す政治家はいないようで何よりです。

あ、年金は徳政令の逆版ですかね? 一定以下の世代は損するのが見え見えですし。何とかして(´・ω・`)

 

長月 七紀・記

TOP画像:元寇『蒙古襲来絵詞』/Wikipedia

参考:今日は何の日?徒然日記 徳政令/Wikipedia

 

 


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