母里太兵衛とは? 黒田官兵衛の家臣でNo.1の暴れん坊! お酒を呑んで名槍ゲットン!

 

人付き合いって難しいですよね。
いくら気を使っても相手に通じなかったり、ちょっとした失言を鬼の首でも取ったかのようにいつまでも咎められたり、あるいは自分はどうしても好きになれない人に限って人気者だったり……。
実に世の中は不条理なものです。案外、気を使いすぎているからうまくいかないのかもしれませんけどね。

本日はそういった人の良いお手本……になるかもしれない、とある武士のお話です。
慶長二十年(1615年)6月6日、母里太兵衛という黒田家の武士が亡くなりました。

読み仮名は「もり」か「ぼり」かで意見が分かれるようですが、皆様脳内でお好きなほうをご採用ください。こういうとき文章って便利ですね。

大河ドラマ「軍師官兵衛」では、速水もこみちさんが演じた母里太兵衛/Wikipediaより引用

 

強すぎて不安になった官兵衛が栗山利安に引き合わせる

太兵衛は、官兵衛がまだ秀吉というより信長の家臣だった時代に黒田家に入りました。
しかしその年に母の一族である母里家が戦で全滅してしまったため、家名が絶えるのを惜しんだ官兵衛によって母里姓を名乗ることになります。

筋骨たくましく暴れん坊だった太兵衛に対し、官兵衛は一抹の不安がありました。
そこで黒田家中の中から栗山利安という人物を引き合わせ、「今日からこいつを兄貴と思って指示をもらうように」と言いつけます。この作戦は大成功で、後々、太兵衛は亡くなる直前に「栗山殿のおかげで今日までやってくることができた」と感謝するほどでした。
なんで官兵衛って人を見る目はあるのに余計なこと言って疑われるんでしょうね。頭が良すぎてコワいからですかね(´・ω・`)

まあそれはさておき、ここから彼は数々の伝説を打ち立てていきます。

「生涯で76もの首を挙げた」とか、黒田家の名将を並び賞した「黒田二十四騎」と「黒田八虎」に両方選ばれたとか、勇猛な武将であったということを強調するエピソードには事欠きません。

その中でも一番有名なのは、「黒田節」という民謡にもなっているお酒に関する逸話でしょう。

 

「飲み干せたら福島殿の家宝である”日本号”をくだされ!」

ときは秀吉の晩年。文禄の役と慶長の役の間あたりの出来事です。

伏見にいた福島正則の下に、黒田家の使者として太兵衛が行くことになりました。が、正則も太兵衛も酒好きなことを知っていた主・長政は「正則は昼間から飲んでるかもしれないけど、お前は飲むなよ! 絶対だぞ!」(超訳)と言いつけます。
案の定、太兵衛は正則から酒を勧められましたが、「仕事中ですし、主に止められておりますので」と辞退しました。

既に酔ってテンアゲ状態の正則、お約束通り太兵衛にタチの悪い絡み方をします。
「酔って不始末をするのが怖いのか! 黒田家のヤツは臆病者ぞろいだなwww」(超訳)と、当時の常識で言えば名誉毀損同然の暴言を吐きました。
ここまで言われては太兵衛も黙ってはいられません。が、彼はこのついでに大博打をしかけます。

「ではいただきましょう。その代わり、この大きな杯を飲み干せたら、福島殿の家宝である”日本号”をくだされ」

日本号(にほんごう、もしくはひのもとごう)とは、その美しさと大きさで天下三名槍のひとつに数えられた槍のこと。元は御物(皇室の持ち物)でしたが、正親町天皇が室町幕府最後の将軍・足利義昭に賜り、その後、信長がぶんど……譲り受け、いつのまにか秀吉に渡り、このときは正則が持っていたのでした。

正則は「(どうせそんなに飲めないだろw)おうわかったわかった、持っていけ! 飲めたらな!」とこの挑戦を受けてしまいます。立ったー! フラグが立ったー!
そして太兵衛は見事酒を飲み干すどころか、同じ杯で三杯も飲み、正々堂々と日本号をもらって黒田家へ帰っていったのでした。
長政も他の家臣たちもビックリしたでしょうね。いろんな意味で。

ちなみに翌日、酔いが覚めた正則は事の重大さに気付き、太兵衛に「日本号返してくれよ」と頼んだらしいのですが、当然突っぱねられました。あーあ。

調子こいてやっちまった福島正則さん/Wikipediaより引用

 

酒は飲め飲め 飲むならば 日の本一の この槍を

この話は小気味良い武勇伝として語り継がれ、いつしか民謡になりました。ついでに歌詞を全部載せておきましょう。

【黒田節】
酒は飲め飲め 飲むならば
日の本一の この槍を
飲みとるほどに 飲むならば
これぞ真の 黒田武士

峰の嵐か 松風か
訪ぬる人の 琴の音か
駒をひきとめ 立ち寄れば
爪音高き 想夫恋

花よりあかるく み吉野の
春の暁 見渡せば
もろこし人も 高麗人も
大和心となりぬべし

冒頭の勇ましさから一転、想夫恋という女性が男性を想う歌が出てきて、最後は「外国人とも一緒に桜を見て仲良くやろうぜ!」(超訳)と結ぶいい歌ですね。
日本舞踊の振りがついた動画も多々ありますので、歌詞と一緒に見るとより面白いかもしれません。
槍を持ったり、前後に違う歌詞がつくバージョンもあってなかなか興味深いですよ。

 

ゆるキャラも登場! その名は「もりりぃ」

それにしても「酒を飲めないと武士じゃない」という概念は、下戸の人にとってはかなりキツイですよね。当時のお酒は今より純度が低かったですし、薄めて飲むことも多かったようなので、現代人より飲める人の割合が多かったかもしれませんが。

ついでに言えば、400年経っても酒の失敗を語り継がれる正則カワイソス(´・ω・`) まあ薙刀持った奥さんに追いかけられたことがあるくらいですから、それに比べればマシ……ですかね?

ちなみに黒田家の豪傑といえば後藤又兵衛もいます。彼が長政と仲違いして出て行ったのに対し、太兵衛は一生黒田家に仕えました。
太兵衛も一度言ったことは曲げないという頑固なところはありましたが、イヤミなところはなかったのでこういう違いが出たようです。
人間素直が一番ということでしょうかね。

ちなみに兵庫県では、彼にちなんだゆるキャラ「もりりぃ」が生み出されました。テーマは「おじかわいい」だそうです。
日本号の逸話を知っていると、「コイツと飲み比べして負けたらなんか取られそう」って気になりますねw 兵庫県の方すいません。
そのうち日本酒のイベントか何かでもりりぃと飲み比べる機会もある……かも?

ゆるキャラ「もりりぃ」さん/はりま酒文化ツーリズム公式HPより引用

長月 七紀・記

参考:母里友信/Wikipedia はりま酒文化ツーリズム 民謡えほん

 

 


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