エベレスト

アジア・中東

8,848m世界最高峰エベレストは、なぜエベレストと呼ばれるのか?

人は総じて「丸っこいもの」を可愛がるという心理が働くようにできているそうです。

その一方で「極端に突出した存在」に対する畏怖や畏敬の念を抱くのも人類共通の感覚ではないでしょうか。
今回はその代表例である、世界で最も尖ったなもののお話。

1790年(日本では江戸時代・寛政二年)7月4日、世界最高峰・エベレストの語源となったジョージ・エベレストが誕生しました。

ご存知ヒマラヤにある世界一高い山ですが、命名の由来って意外と知られておりませんよね。
さっそく見て参りましょう。

 


アジアで測量調査に勤しんでいたイギリス人

ジョージ・エベレストは元々、インドやインドネシアの測量調査員をやっていた人でした。

合理主義で生まれつき頭が良かった、しかし、ケチで短気。
凄まじくとっつきにくい――そんな評価で、よくぞ測量というチームワーク重視な仕事を選んだものですが、たぶん当人には自覚がなかったんでしょうね。

ただし、ズバ抜けた能力を認められており、ナイトの称号も得て「サー」と呼ばれるようになりました。

面白いのは、エベレストが見つかった1852年当時、ジョージは既に引退していたということです。

てっきり
『初登頂に成功した人から名前を貰ったのかな?』
とか
『最初にルートを発見したから?』
なんて想像していたのですが……。

ジョージ・エベレスト/wikipediaより引用

では、なぜ彼の名前になったのか?

当時、ネパールと中国は外国人の立ち入りを認めていなかったため、代わりにインド測量局の前長官だったエベレストの名をつけたのでした。

ジョージ本人は地元名を尊重する方針だったので、嫌がったようです。
ところが、後任の人物が「サー・ジョージの功績を称えたいのです!!」(※イメージです)と押し切ってしまったのだとか。

とっつきにくい人物だと評されていたのに、能力が高いだけでなく、実は魅力的な方だったのでしょうね。たぶん。

K2(世界で二番目に高い山)みたいに、現地語の名称がわかるまで記号にしとけばよかったのにという気がしないでもないですが、台無しになりそうなので喉元で止めておきましょう。

 


1907年に構想してから初登頂まで約50年も

現地ではチベット語でチョモランマ(大地の母神)。
サンスクリット語でデヴギリ(神聖な山)またはデヴァドゥルガと呼ばれております。

国立公園の名前にもなっている「サガルマータ」は、1955年~1972年に王様だったマヘンドラ王の時代に、ネパールの学者さんがつけたもの。
「世界の頭」という意味です。

どれも地形にふさわしく、また現地の人々が厳しい自然に対して神の存在を感じてきたことがよくわかりますね。

今でこそエベレストの中腹までは観光客が入れるくらいに整備されましたが、周辺のK2やアンナプルナなど、登山家でも死亡率数十パーセントの山は珍しくありません。

ついでに、エベレストの登山史も軽く見てみましょう。

世界で初めて同山へ登頂したのは、登山家のエドモンド・ヒラリーと、シェルパのテンジン・ノルゲイを含むイギリスの登山隊でした。
1953年のことです。

では、イギリスで最初にエベレスト踏破を目指す計画が立てられたのはいつか?
と申しますと1907年ですから、構想から実に50年もの月日を要しているワケです。

途中、二度の世界大戦があるとはいえ、山の恐ろしさがわかるでしょう。

 


もちろんその半世紀の間、イギリスのチームだけでも複数回の登頂が試みられています。

特筆すべきは、ただ単に失敗したとか途中で亡くなったというのではなく、適宜撤退したり、その場の判断で酸素ボンベの使用・不使用などを判断したり、少しずつ後進のための足がかりをつけていることでしょう。

この辺は用意周到というか理性的というか。
こうした計画性の十全さこそ「大英帝国」になった要因の一つなんだろうなぁと感じます。

むろん、完璧ではありません。
途中で立ち入り禁止のエリアに入ったり、チベット人の風習が間違って記録されていたり、やらかしていないわけじゃない。
先代のダライ・ラマ(13世)が激おこになり、9年もの間、エベレスト付近への立ち入りが禁止されたこともありました。

江戸時代に富士山へ拳銃ぶち込んだオールコックとどっこいどっこいですね。

オールコック富士登山記念碑
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今ではエベレストビューのホテルもある

現在、エベレスト周辺の一部分は準備さえすれば小学生でも入れるくらいに整備され、エベレストを正面に見られるようなホテルもいくつかあります。

ホテル・エベレスト・ビュー---ヒマラヤ観光開発株式会社

世界で最もエベレストに近いホテル……だそうです/マウンテントラベル公式HPより引用

日本の会社が運営しているところもあり、スタッフの接客には定評があるとか。
ただし、場所が場所ですので、都市圏のホテルほどの設備はないようですね。

日本からのツアーだと、登山をしなくてもヨーロッパに行くのと同じくらいの金額になってしまうようですが、間違いなくそれだけの価値がある眺めでしょう。
いつか行ってみたいような、写真だけでいいような……。

ちなみに、5300m以上の高さを目指すなら、さらに数百万かかるそうです。ヒエー!

長月 七紀・記

【参考】
ジョージ・エベレスト/Wikipedia
マウンテントラベル


 



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