「お前らオレたちの食事なwww」と脅された黒人たちが反乱 スペイン奴隷船・アミスタッド号の反乱

 

何の考えもナシに無鉄砲でやったことがたまたま運に味方され、そのままうまくいくケースって世の中にはままありますよね。
歴史においても偶然の積み重ねで事態が動いたという件は珍しくありません。
本日は海のド真ん中で起きた、そんな感じのお話です。

1839年(日本では江戸時代・天保十年)7月2日は、スペインの奴隷船・アミスタッド号で反乱が起きた日です。

奴隷船で反乱ということは、当然のことながら起こした側は黒人。読者の皆さまは、もしかしたら『奴隷船って鎖で繋がれてて動けなかったんじゃないの?』と疑問に思うかもしれません。

この件については、いくつかの偶然が重なり、黒人たちが最終的な勝利を収めることとなりました。

【TOP画像】アミスタッド号事件/Wikipediaより引用

 

「お前らは到着したら俺達の食事になるんだからなwww」

アミスタッド号はこの年の6月28日、キューバのハバナから国内のプエルト・プリンチペという町へ向けて出発したといわれています。
しかし、この船のコックが「お前らは到着したら俺達の食事になるんだからなwww」(※マイルドな表現に変更しています)と黒人たちを脅し続けたため、相当な反感を買っていました。なんでそんなことしたんでしょうね。

そして7月2日、ついに黒人たちの一人が自分の鎖を何とか壊し、他の皆も開放して、船長・船員に対して反乱を起こしたのです。

現在でも劣悪な労働環境を強いた社長や、ご近所に迷惑をかけ続けた人が被害者から暴行を受けたり、それ以上の目に遭わされたりという事件がありますけれども、いつの時代も似たような問題はあるものですね。
恐怖に打ちのめされる人もいれば、逆に「やらなければやられる」と覚悟を決める人もいるのは、古今東西変わらないようです。

「船が着く前に何とかしないと食われる!」

そんな危機感を抱いた黒人たちは、犠牲を出しながらも船長を殺害することに成功し、船を乗っ取ります。そして書類上の彼らの所有者であるホセ・ルイスとペドロ・モンテスの二人に舵を取らせ、母国に帰すよう脅しました。

ロングアイランドの半マイル沖に投錨していたアミスタッド号/Wikipediaより引用

 

ニューヨーク州では1827年に奴隷が廃止されていた

しかし、ホセとペドロはアフリカのある東ではなく船の進路を北へ。アメリカ領海に入った頃、米海軍によって発見・連行されました。
この頃のアメリカはまだ南北戦争前で、奴隷が合法という地域もあったので、米海軍のお偉いさんは黒人たちをそこに連れて行って売ろうと考えていたようです。
ついでに船と積み荷も自分のものにしようとしていました。がめつい。

同時に船内での殺人について裁判所に訴えたそうですが、そもそもスペインの領海内・スペイン籍の船内で起きた事件だったので、アメリカの裁判所はその点については取り合いませんでした。

一方で、スペイン政府からは当然のように船と黒人たちの返還要求が来ましたが、当時アメリカでは奴隷廃止の動きが強まっていたため、ニューヨークの運動家たちがアミスタッド号の黒人たちを開放しようと動き出します。

ニューヨーク州では1827年に奴隷が廃止されていたのです。実際に開放されたのは1841年でしたが、まあそれは仕方ない。
そんなわけで、この黒人たちについても「そもそも奴隷制度そのものがおかしいんだから、彼らは無罪だ」という声が高まったのです。

 

運良くアフリカ出身の水夫が見つかり通訳を依頼

とはいえ、実際の手続きは困難を極めました。
黒人たちは英語もスペイン語も話せなかったので、まず意思の疎通を図るのが一苦労です。
とある言語学者が黒人たちの母語を調べて10までの数字を覚え、さらにニューヨーク港でそれを叫びながら歩き、通訳ができる人物を探したとか。

学者先生の努力により、運良くイギリス籍の水夫に同じ母語を持つ人物が一人見つかり、やっと黒人と後援者たちの意思疎通が進みます。
彼はジェームズ・コヴェイという名で、彼もまたアフリカ出身の元奴隷だったとか。

ジェームズのおかげで黒人たちの主張を聞き出すことができ、ホセとルイスは逮捕されました。しかし、スペインからの抗議によってキューバに送り返されています。黒人たちは悔しかったでしょうね……。

さらに当時の大統領マーティン・ヴァン・ビューレンは奴隷問題に関心がなかったため、スペインとの国交を優先したり、一時「アミスタッド号の奴隷は合法だから、船長の相続人のものでおk」という判決が出たため、司法上の戦いは二年に及びました。

 

キレたスペイン その後も20年ほど米国へ賠償請求を続ける

最終的には、アメリカ最高裁判所により正式に「彼らは奴隷ではない」という判決が出て、黒人たちは名実ともに自由の身となります。
多くの人から帰国費用を寄付してもらい、黒人たちは故郷に帰ることができました。
その後の記録が一切見つからなかったので、無事大西洋を渡れたのか、アフリカ大陸まで着けたとしても、母国まで帰り着くことができたのかは気にかかるところですが……うまくいったと信じることにしましょう。

もちろんスペイン側はこれを不服とし、20年ほどの間、アメリカに賠償を請求し続けています。そうこうしているうちに南北戦争が始まったこともあってか、アメリカ政府は真剣に取り合わなかったようですが。
スペインもスペインで、この時期政治というか君主がgdgdな感じの人でしたしね。

しかし、この件では黒人のために多くのアメリカ人が動いたのに、なぜ黒人の人権を認めるのがあんなにも遅れたのか理解に苦しみますね。
事実は小説より奇なり……で片付けるのも釈然としませんし。

長月 七紀・記

参考:アミスタッド号事件/Wikipedia

 


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