米国のモンロー宣言 他国への積極干渉を否定するも、やがて棍棒外交→砲艦外交のジャイアン化

 

1対1でも難しいのに、家族、学校、会社、そして国へと単位が大きくなるにつれ、さらに難易度の上がっていくのが人間関係。こと、国家の命運がかかっているときの判断はなおさらです。
一歩間違えれば数万単位の人に影響を与えるばかりか、命を奪うことにもなるのですから。
今回は、長い目で見ると世界中の運命を変えた……ともいえそうな、とある政策のお話です。

1823年(文政六年)12月2日は、第5代アメリカ大統領ジェームズ・モンローがアメリカ議会でモンロー宣言の元になる演説をした日です。

世界史の教科書でも太字になっている用語ですので、何となく聞き覚えのある方も多いでしょう。だいたい「アメリカがヨーロッパとの相互不干渉を主張した」と説明されていますよね。
しかし、この宣言は当時のアメリカにとって、頭痛の種となるものを何とか解決しようとした、苦肉の策でもありました。
本日はもうちょっと詳しく、この宣言を行った背景をみていきましょう。

アメリカ2

 

「こっちは手を出さないから、アンタらもそのつもりで」

モンロー宣言の中身は、教科書に載っているよりももう少し長いものです。
1、ヨーロッパの戦争に介入しない
2、ヨーロッパ各国の植民地には干渉しない
3、でも、ヨーロッパの国がこれ以上南北アメリカ大陸で植民地増やすのは断固拒否!
4、最近、中南米のスペイン植民地でアッチコッチが独立しようとしているけど、スペインがそれをねじ伏せようとするなら相手になるよ^^

こんな感じです。
2と4が矛盾しているような気もしますが、「こっちは手を出さないから、アンタらもそのつもりで」ということですかね。

インディアンの人々からすれば「お前らが言うな」と言いたくなりそうな内容。しかもこの時点では中南米との関係もそこまでではないのに、既に自分のシマ扱いです。
これを当時メキシコやブラジルの人が知ったら、さぞ気分を害したことでしょう。

 

植民地を買い取って成立したアメリカだから

一応、アメリカにとってはまともな宣言のつもりでした。
以前も取り上げたことがあります(過去記事:アメリカから遠く離れたアラスカがなぜ米国領土なのか? →ロシアから買ったから!?)が、アメリカは最初の13植民地で独立した後、ヨーロッパの国が植民地にしていたところを買い取ったり、賠償でもらったりして広くなった……という経緯があります。

アメリカ領土の変遷/wikipediaより引用

アメリカ領土の変遷/wikipediaより引用

そして、モンロー宣言が出された当時、アメリカはまだ現在のような広さではありませんでした。西側の南半分(カリフォルニアとか)は、当時スペインから独立したばかりのメキシコのものだったのです。
ですので、もしスペインが他の植民地における独立運動を制圧すると、最悪の場合メキシコの独立がひっくり返される上、アメリカにも多大な影響が出るおそれがありました。
ついでに、この頃は北のほうにも脅威のかほりが漂っています。アメリカの北といえばカナダですが、その先のアラスカが問題でした。
当時、アラスカはまだロシア領。アラスカを足がかりに、ロシアが南下を試みる懸念があったのです。

実際には、ロシアの機関はほとんどヨーロッパ側にありますし、不凍港の確保もできていませんでしたから、これはアメリカの考え過ぎというほうが近かったのですけれども。
たとえロシアが中国(清)や朝鮮半島を超スピードで攻略したとしても、日本が邪魔ですし、太平洋を超えるのは難しいですしね。

そしてもう一つ、アメリカにとって別の問題もありました。
イギリスとの経済戦争です。

 

商売相手を奪われるワケにはいかない→だから、せーんげんっ!

イギリスは産業革命によって大量生産ができるようになったため、作ったモノの売り先を探していました。
そして、南北アメリカに工業製品を輸出して儲け、代わりに農産物や資源を輸入して恩を売り、さらに取引を拡大して儲ける……という構図を描いていたのです。

これも、アメリカにとっては面白くありません。
アメリカでも工業化は進んでいましたし、せっかく近場に商売ができそうな相手がいるのに、海の向こうの相手にかっさらわれることになりますからね。

今では考えにくいことですが、こんな感じで、この時期のアメリカはさまざまな懸念を抱いていました。独立してまだ半世紀くらいしか経っていない状態ですので、舵取りを間違えることは許されない状況です。
しかも、まだ国内が安定しているとはいえませんでした。なにせ南北戦争(1861~1865年)の前ですから、できる限り争いは避けたいわけです。
そこでまずは文書での威圧を、という事になったのでした。

イギリス

 

「砲艦外交」で世界の警察(?)になって拡大し続けるが……

こうして、アメリカはしばらく国内や近場での問題を片付ける方針で行くのですが、19世紀末期にはハワイを併合したり、フィリピンや中南米に対して「棍棒外交」を仕掛けていきます。
これは文字通り「自分のことを自分で始末できないんなら、ウチが口も手も出すけどいいよね?^^」というもの。これが後に軍艦の砲で脅迫する「砲艦外交」へと拡大(悪化)し、アメリカが世界のジャイアn……ゲフンゲフン、警察になっていくわけです。

それを20世紀を通してやってきて、うまく行かなくなってきたのが最近、という感じでしょうか。

その間に銃やら兵器やらで儲ける人も増えたので、そう簡単に方針を変えられなくなってしまっています。国民としても「強くて正しいアメリカこそわが祖国」というイメージが固定化されているため、そう簡単には変えられません。暗殺されている大統領もいますしね。
ハードランディングはもちろん、ソフトランディングもなかなか難しそうです。

いっそ、モンロー主義をずっと貫いていたほうが、アメリカにとってはよかったのかもしれませんね。その場合は、現在ほどの超大国にはならなかったでしょうけれども。

棍棒外交/wikipediaより引用

棍棒外交/wikipediaより引用

長月 七紀・記

参考:モンロー主義/wikipedia ジェームズ・モンロー/wikipedia ジョン・クィンシー・アダムズ/wikipedia

 


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