国境を巡るアメリカvsメキシコの因縁は170年前の米墨戦争から? 緊張を増す両国の歴史

 

個人間の関係でも、年月の長さは大きなポイントになりますよね。その集合体である国同士なら、なおさらです。
しかしそれは、良いことでも悪いことでも同じです。一度悪化したら数十年単位での時間がなければ改善しませんし、その逆もまた然り。
本日は現在進行系でそんな雰囲気がうかがえる、海の向こうの二つの国をみてみましょう。

1848年(日本では幕末・嘉永元年)2月2日は、米墨戦争が終結した日でした。漢字だとどこの国だかわかりにくいですが、アメリカvsメキシコの戦争です。

現在(2017年2月)でもなんだかきな臭い雰囲気になっている国同士ですが、クリミア半島問題がクリミア戦争の頃からの問題であるのと同様に、昨日今日起きた問題でもありません。
そんな感じで、米墨戦争がどんなものだったのか見ていきましょう。

 

テキサスが共和国宣言をして、やがてアメリカ領土へ

16世紀以降、世界中へ進出していたスペインは、現在のメキシコならびに米テキサス州あたりも植民地にしておりました。
メキシコは1821年にスペインから独立を勝ち取りましたが、革命が長引いたせいで国力が弱まっており、地方で反乱を起こされることになります。テキサスもそういった地方のひとつでした。

テキサスがまだメキシコだった頃のアメリカ領土(グレーの部分がメキシコ・ちなみにアラスカはロシア領土)/wikipediaより引用

同じ頃、アメリカは領土の購入などによって、西へ版図を広げていきます。
そして1836年、テキサスはアメリカからの移民に占領され「テキサス共和国」として独立を宣言。この共和国はヨーロッパ諸国からの承認を受けた後、1845年にアメリカに併合されています。
最初からその予定だったかどうかは……神のみぞ知るというところでしょうか。

メキシコはもちろん、テキサス共和国の独立も併合も認めておらず、これが火種となりました。当時のメキシコは内政でさえままならない状況だったので、国際的な交渉をしている余裕がなかった、というのもありますけれども。

さらに、両国の国境を巡って意見が相違します。
アメリカはリオグランデ川を、メキシコはその北側にあるヌエセス川を国境にしよう、と言い合いました。
この交渉がまとまらない中、ときのアメリカ大統領ジェームズ・ポークが、勝手にヌエセス川の南にブラウン砦を築かせてしまいます。この時点で完全にケンカ売ってますね。
なのに、メキシコがアメリカの兵を捕らえたことから「ケンカを売られた」とみなし、戦闘を始めてしまいました。宣戦布告はその後しています。犯行声明の間違いじゃね?(´・ω・`)

1845年、戦争前のアメリカ領土(テキサスは共和国時代)/wikipediaより引用

そしてテキサスはアメリカ領土へ(1945年12月時の領土)/wikipediaより引用

 

米墨戦争、開戦 メキシコへ移るアメリカ兵もいたが……

これを受けて10日後にメキシコも宣戦布告し、米墨戦争が名実ともに始まりました。
ちなみにメキシコ(スペイン語)では米墨戦争を「アメリカの武力干渉」というそうで。まんまですね。

アメリカ軍はメキシコの風土や伝染病に苦しめられましたが、兵数と銃火器などの装備で勝り、優位に立つことができました。今も同じことやって……ゲフンゲフン。

しかし、「アメリカのやり方はおかしい」として、アメリカ軍を辞めてメキシコに行った「聖パトリック大隊」という兵たちもいました。だいたい500人くらいだったそうで、大勢には影響を与えませんでしたが……。
隊の名前は、構成員の多くがアイルランド系移民だったため、アイルランドにキリスト教を広めた聖人・パトリック(アイルランドでは「ポーリキ」)の名を冠したものと思われます。

彼らがいつ頃移民としてアメリカに来たのかはわかりませんが、もしかすると同時期に起きていた、アイルランドのジャガイモ飢饉が理由だったかもしれませんね。
その場合、「新天地を求めて海を渡ったら、隣国にケンカを売って被害者ヅラする悪党の国だった。こんなところにいられるか!」と考えたくなるのも当然の話です。
こういうことをしているから、真珠湾攻撃陰謀説なんてのも根強く囁かれるのかもしれませんね。

 

西海岸まで占領し、ついには首都メキシコシティも陥落

聖パトリック大隊の他にも、米墨戦争におけるアメリカ軍のうち、9200名が脱走または亡命したといわれています。総兵力が78700名なので、全軍の1/8が失われたことになります。
ただ単に、死にたくないから逃げ出した人が多いのでしょうけれども、ここまでの人数になると国のやり方が気に食わなくて逃げた人もいたのでは……と勘ぐりたくもなります。

アメリカはまず、カリフォルニアをはじめとした西海岸各地の占領に動き、ついにメキシコの首都・メキシコシティまで落としました。
聖パトリック大隊は降伏を選んだものの、アメリカ軍は彼らを「脱走兵」として処刑しています。脱走兵なら裁かれるのも仕方のないことですが、捕虜の虐殺だったとしたら戦争犯罪です。
これは現在でも意見の分かれるところで、メキシコにおいては聖パトリック大隊を英雄とみなしている地域もあるとか。

こうして、米墨戦争はアメリカの勝利で終わりました。
賠償としてメキシコからアメリカに割譲された土地は、当時の国土の1/3にものぼります……といっても感覚的にピンときませんが、日本でいえば、東北地方まるごと+αを持っていかれた感じです。こりゃ、激おこ必至となるわけで。
しかも、当時そのあたりは不毛の地とみなされていたものの、その後カリフォルニアではゴールドラッシュ、テキサスでは油田発見、と大きな富となるものが見つかりました。
メキシコからすれば踏んだり蹴ったりどころじゃありません。

米墨戦争終了後、かくしてメキシコの領土は大幅に失われた/wikipediaより引用

 

良い感状を持てないのは自然なことかもしれず

現在も両国の間はちょっとしたきっかけで険悪になりますが、米墨戦争がその背景にあることは間違いないでしょう。

日本でいえば戊辰戦争の20年前ですから、歴史的感覚ではまだまだ最近の出来事。地域・家によってはおじいさんおばあさんやその前の世代から語り継がれてきたでしょうし、そりゃ簡単に良い感情が持てないのも自然なことです。

とはいえ、不法移民が問題になっているということは、アメリカに経済的メリットを感じているメキシコ人も多いということですが。

はてさて、今後両国の関係はどうなっていくのでしょう。
どちらとも付き合いの長い日本としては、できるだけ人命が失われないよう願うばかりです。

長月 七紀・記

参考:米墨戦争/wikipedia

 


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