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妻を後部座席に乗せてソ連へ特攻した飛行隊が存在した【書評】

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8月15日は終戦記念日。終戦の4日後、戦闘機でソ連軍に特攻した夫婦がいました。
驚きの新事実です。

戦闘機に、ワンピースの黒髪の女性が乗っているという「絵」はジブリ映画にありそうですが、これが本当に起きた史実だったのです。ノンフィクション作家の豊田正義氏が今年刊行した『妻と飛んだ特攻兵』で初めて明らかにしました。
※追記 その後、2015年8月16日にドラマ放送されました。タイトルは同じく『妻と飛んだ特攻兵』で、主演は成宮寛貴さんと堀北真希さん。テレビ朝日で16日21時からの放送でした。

 

艶やかな光を湛えて風になびく黒髪が

昭和20年8月19日、満州の飛行場を11機の日本の九七式戦闘機(を改造した訓練機)が飛ぼうとしていました。日本はすでに降伏。ソ連に対して飛行機を受け渡すために飛び立つフライトです。

11人の操縦士を見守る多くの日本人。
操縦士の近くには、その家族でしょうか、白いワンピースに日傘を差した2人の女性がいました。
誰もが見送りと思ったその女性たちは、自分の夫の飛行機の後部座席に乗り込むのです。(一人は愛人)

11人は命令に反して、満州で日本人の虐殺を続けるソ連軍に一矢報いるために特攻を密かに計画していたのです。
夫の覚悟についていこうと決めた2人の若い女性たち。
女性を乗せた2機が滑走路を走り出したとき、群衆たちはようやく異変に気付きました。

「艶やかな光を湛えて風になびく黒髪が目撃されたのだ」(306頁)

九十七式戦闘機

九十七式戦闘機/写真 warbirdphotosより

「神州不滅特攻隊」を名乗った11人(+2人)は、「戦い得ずして戦わざる空の勇士十一名 生きて捕虜の汚辱を受けるを忍び難し」との遺書を残していました。

10機(1機は離陸直後にエンジン不調で墜落)の行方は分からず、特攻が成功したのか、否かは歴史の闇に消えました。
戦後、関係者の間で、「女性を特攻機に乗せた」ことが軍規違反とされ、彼らが「英霊」から外されたり、その後、仲間たちが名誉回復をしたりと、元軍関係者のなかで密かに知られていましたが、世間に出されるのは本書が初めてとのことです。

ひと組は夫婦で、青森出身の谷藤徹夫・朝子夫妻。
谷藤家は、元会津藩士の子孫(戊辰戦争後に下北半島に移住した末裔)だそうです。
もうひと組は、北海道出身の少尉と現地で恋愛関係にあった宿の女中さんでした。
惜しいのは、取材に応じたのが11人のうち「谷藤家」関係者だけだったことです。

それにしても、ほかの航空隊は降伏したのに、なぜ彼らだけが命を賭して最後の抵抗の意志を示したのでしょうか。
敗戦は決まっているので、勝利のためではなく、ただ「意志」を示すためだけだったといえます。

それは…

3日前の8月14日に、大虎山飛行場(注・彼らが所属する)から飛び立った偵察機のパイロットが、ソ連戦車隊による凄まじい蛮行を目撃していたからである。

「葛根廟事件」と言われているこの虐殺事件は、大虎山から500キロほど北上した地点にある大草原の葛根廟で起こった。

14両の戦車と20台のトラックが丘の上に現れた瞬間、浅野参事官は即座に白旗を揚げて無抵抗を示したが、ソ連軍は機関銃で浅野を射殺し、丘の上から猛スピードで突進してきた。約2千数百名が悲鳴を上げて一斉に走り出すと、ソ連軍は草原を逃げ回る避難民の群れを追い回した。

約2時間におよぶ襲撃を終えてソ連軍が去っていくと、周辺で虐殺現場を見ていた中国人たちが暴徒化して生存者を襲い、下着に至るまで身ぐるみ全てを奪っていった。(295頁、もっとショッキングな表現が本には書かれていますが省きます)

というものでした。
そして、これを知った11人は復讐を誓い、整備士に爆撃装備を依頼しましたが、すでに飛行場には爆弾そのものが残っていませんでした。

驚きと悲しみ、そして愛。
この戦争を兵士として体験した人がのきなみ90歳以上をこえる中、もう新しい逸話は出てこないのかと思われていただけに、衝撃の物語でした。

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なお、ドラマの詳細はコチラのHPへ
2015年3月に文庫化されました。キンドル版もあります。

 





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