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伊賀と甲賀、徳川の継承争いに翻弄された哀しき忍者たちの戦い 山田風太郎「甲賀忍法帖」

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こんにちは。前回、「ハットリ君はいませんが外国人が選んだ伝説の忍者10人のリスト」をご紹介し、海外の方のマニアックさに驚いたオギヤスエです。せっかくですので、今回も忍者つながりで日本の名作をご紹介したいと思います。

奇想天外で斬新なアイディアが度肝を抜く 山田風太郎「甲賀忍法帖」に真実を探せ

山田風太郎さんと言えば、伝奇小説や時代小説の分野で日本を代表する作家の一人です。特に「忍法帖」シリーズは忍者モノや忍術モノが好きな方にとっては、お馴染みの作品ではないでしょうか。

甲賀忍法帖 山田風太郎ベストコレクション (角川文庫)

「甲賀忍法帖」はその「忍法帖」シリーズの第1作です。角川書店のサイトで冒頭部分が立ち読みとして読めるので、少し引用してみましょう。

“ 舞扇をかさねたような七層の天守閣を背景に、二人の男は、じっと相対していた。

(中略)

それでも、だれひとり、目がはなせなかった。五メートルばかりはなれてむかいあった二人の男のあいだに交流するすさまじい殺気の波が、すべての人々の視覚中枢に灼きつけられていたからだ。”

どうですか?忍者が登場する江戸時代を舞台とした小説なのに、いきなり“五メートル”ですよ。個人的な話になりますが、筆者が最初に読んだ山田風太郎さんの作品はこの「甲賀忍法帖」で、初めて読んだ時は「…五メートルて!」と、思わず脳内でツッコミを入れてしまいました。

連載が開始されたのが1958年ですから、50年以上も昔に書かれた作品なのですが、とてもそんな頃に書かれたものとは思えません。自由で斬新な文章表現にまず心を掴まれ、物語を読み進めるほどにどんどん魅了されていきました。今読んでも本当に時代を感じさせず、普通に面白いです。ちなみに服部半蔵も登場します。

内容の方は、もはやファンタジーなレベルの超人忍者たちが、己の力と誇りをかけて戦うもので、週刊少年○ャンプに登場しそうな能力バトル作品の原点ともいえるものです。ただ、背景には徳川家の跡目争いがあり、政治的なゴタゴタに翻弄されながら命を懸けて戦う伊賀と甲賀の忍者たちが本当に切なく哀しい物語でもあるのです。

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メディアミックスで新たな魅力 コミカライズとアニメ化「バジリスク~甲賀忍法帖~」

さて、この山田風太郎さんの名作「甲賀忍法帖」は、「バジリスク~甲賀忍法帖~」(画:せがわまさき)として、2003年から2004年にかけて「ヤングマガジンアッパーズ」(講談社)でコミック連載されました。

バジリスク~甲賀忍法帖~(1) (アッパーズKC (197))

迫力のある画と魅力的な人物描写で人気となり、第28回講談社漫画賞の一般部門を受賞。そして、このコミック版をもとに、翌2005年にはテレビアニメ化もされました。

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時代考証をパワーアップして史実性を高める?

原作が発表されて数十年が経ってからのメディアミックスということもあって、服部半蔵の養子という架空の人物を登場させることで、原作にあった時代考証のミスやエピソードを補完するなど、原作ファンにも受け入れられやすい良改変が加えられています。

特に、戦いに至るまでの伊賀と甲賀それぞれの日常を描いたオリジナル回があり、命がけの戦いを繰り返す超人忍者たちそれぞれの性格や人間性が浮き彫りとなって、忍者たちそれぞれの思いや葛藤など人間ドラマの部分により感情移入してしまいます。

また、小説ではかなり直接的で衝撃的な残酷シーンやくノ一の色仕掛け忍術などの部分は、それなりにまろやかになっていますので、バイオレンスやセクシー系が苦手という人でも楽しめると思います。ただし、ストーリーは決して明るく楽しいものではありませんが。

山田風太郎さんの作風に関しては、ある程度史実にも忠実で純粋な時代小説を求める方には合わないところがあるかもしれません。ですが、エンターテインメント作品として、その後の多くの作品に多大な影響を与えたことは間違いありません。これまで原作小説だけは読んだ、アニメだけは観たという方はまた別のかたちで、そして、「甲賀忍法帖」に触れてこなかった方という方は、ぜひ1度、この作品を楽しんでみてください。

オギ ヤスエ・記

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