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【書評】14人の<若手>研究者が結集した『信長研究の最前線 ここまでわかった「革新者」の実像』(洋泉社)

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歴史ものの文庫や新書などでは「○○研究会」的な名称の著者の本が多々ある。実際のところのほとんどはフリーのライターや編集プロダクションであり、歴史研究者ではない。
『信長研究の最前線 ここまでわかった「革新者」の実像』(洋泉社・歴史新書Y)は「日本史史料研究会」編となっているが、この研究会はホンモノの研究者の集まりだ。

イメージかわるか歴史研究からみた信長像

同会は歴史史料を調査・研究し、その成果を公開する目的で2007年に設立した。(HP
執筆者紹介によると、筆者は1960、70年代生まれで日本史研究では「若手」に入る総勢14人。代表者の生駒哲郎氏は1967年生まれで、立正大学博士後期課程を満期退学とあるが、同会代表以外の肩書はない。メンバーは肩書的には「大学教授」や「准教授」はおらず、いわゆるポスドクの研究者(非常勤講師や行政機関の職員など)が、おそらく手弁当で、研究を続けているのだろう。
こうした経緯からもぜひ応援したい一冊だ、さっそく中身を紹介しよう。
織田信長は、世間的には「革命児」の一言でイメージされることが多い。だが、歴史研究では、こうした魅力的な信長像が必ずしも実態にあっているかどうかは疑問視されている。
14人の研究者が信長の常識を良質な史料をベースに洗い出した14の論考となる。
14の目次を順不同で並べてみると、この本の持つ魔力と魅力がわかるだろう。

  1. 桶狭間と長篠の戦いの勝因は(長屋隆幸)
  2. 織田・徳川同盟は強固だったのか(平野明夫)
  3. 信長を見限った者たちは、なにを考えていたのか(天野忠幸)
  4. 明智光秀は、なぜ本能寺の変を起こしたのか(柴裕之)
  5. 信長は、なぜ四国政策を変更したのか(中脇聖)
  6. 信長は、秀吉をどのように重用したのか(小川雄)
  7. 信長は、宗教をどうとらえていたのか(生駒哲郎)
  8. 信長は、文化的貢献をしたのか(大嶌聖子)
  9. 信長は、天皇や朝廷をないがしろにしていたのか(神田裕理)
  10. 信長は、将軍足利義昭を操っていたのか(木下昌規)
  11. 信長家臣団における「勝ち組」「負け組」とは(片山正彦)
  12. 信長は、官位を必要としたのか(木下聡)
  13. 信長は、なぜ武田氏と戦ったのか(鈴木将典)
  14. 信長の流通・都市政策は独自のものか(長澤伸樹)
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松永弾正は謀反クセなし!

例えば、「本能寺の変」の理由では、今年(2014年6月)に発見された四国出兵に関する林原美術館の古文書や細川藤孝宛ての覚書を引用しつつ、「自身および一族に連なる配下の後裔たちのためとは、家の政治生命およびそれに伴う格の護持であり、本能寺の変はそのために起きたのであったことが、この光秀の証言(注*覚書のこと)よりわかる」、「四国外交をめぐる政争に敗れた明智家の政治的失墜に対し政治生命・格の護持のため、現状の織田権力の中枢政務運営を打破して、四国出兵の実施を阻止することが、何よりもの動機としてあったことが確認できよう」としている。つまり、この本では黒幕説には否定的ということだ。

また、今年話題の長篠合戦についても、きれいにまとめられている<桶狭間と長篠の戦いの勝因は(長屋隆幸)>。最近は「三段撃ちはなかった」と主張するのが戦国史をかじった人間のドヤ顔の定番だったが、2014年に相次ぎ刊行された平山優氏の「長篠合戦と武田勝頼」「検証長篠合戦」(いずれも吉川弘文館)によって否定された。簡単にいうと、三段を「3列」と読むのは最近の言い回しで、戦国・江戸時代の「3段」は「3グループ」という意味だったというお話だ。この議論はこれから5年は、戦国ファンが集まれば話題になると思うので、概略はおさえておきたい。

面白いのは、謀反ばかりしていることで有名な松永弾正久秀について「すなわち、久秀には謀反癖などまったくなかったのである」と断じており、この論<信長を見限った者たちは、なにを考えていたのか(天野忠幸)>もなかなか面白い。

代表の生駒氏の「信長は、宗教をどうとらえていたのか」では、なぜ信長が本能寺にいたのかについて論述する。いい視点だ。本能寺は法華宗で、京都においては、町人つまり経済人の信仰を集めていたのが特徴。さらに、信長の敵の延暦寺(天台宗)や一向宗とも武装闘争を続けており、近年の発掘で見つかった本能寺の城のような堀は、信長のためではなく、もともとこうした他宗教との戦いに備えたものだとする。なるほど。
14のテーマはそれぞれ簡潔で、読みやすい。歴史ファンならばぜひとも購入してほしい。

川和二十六・記

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