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ギョギョッ! お魚好きは日本人だけじゃない? 書評『魚で始まる世界史 ニシンとタラとヨーロッパ』

更新日:

 

皆さん、もし無人島で独りで暮らすことになったら、何を食べて暮らします?

野草や果物を採集したり、獣を狩ったり、作物を育てて収穫したり……色んな方法が考えられます。

しかし、野草や果物はいつも採れるわけじゃありません。獣は反撃されて殺される危険があるし、そもそもお腹がすいていれば捕まえるのは難しそう。作物を育てるのには収穫までに時間がかかり過ぎて死んじゃいます(実際、アメリカへ最初(?)に渡ったピルグリムファーザーズたちは死にかけました)。

でも、魚なら大丈夫!

釣るのはちょっと難しいけれど、季節を問わずそれなりに数がいて、野獣のように反撃される恐れが少なく、農業のように時間と忍耐を必要としません。

きっと古代の人たちは、僕たちが想像する以上にお魚に依存してきたのではないでしょうか。であれば、魚が世界史の重要なキーになっていてもおかしくはない!?

今回紹介する『魚で始まる世界史』は、そういった視点で世界史を見てみるちょっと変わった本です。

Amazon.co.jp: 魚で始まる世界史: ニシンとタラとヨーロッパ (平凡社新書): 越智 敏之: 本

 

目次

  • 第1章 魚と信仰
    • 大きな魚と小さな魚
    • 魚の女神
    • 聖餐式の魚
    • ユダヤの魚
  • 第2章 フィッシュ・デイの政治経済学
    • 汝、食べることなかれ
    • 熱い肉<ホット>と冷たい魚<コールド>
    • 断食日の魚
    • 充満する粘液
    • ポリティカル・フィッシュ・デイ
  • 第3章 ニシントハンザ、オランダ
    • ニシン以上に殺す
    • ニシンとヴァイキング
    • ハンザ
    • ウィレム・ブーケルス
    • ニシンの戦い
    • ニシンの骨の上に建つ街
  • 第4章 海は空気のように自由なのか?
    • レッド・ヘリング
    • 海は誰のものか
    • 『自由海論』
    • アサイズ・ヘリングとランド・ケニング
    • 海洋主権
    • オランダの衰退
  • 第5章 タラから始まる世界史
    • 『テンペスト』
    • 魚にされたキャリバン
    • ストックフィッシュとバイキング
    • 塩ダラと大航海時代
    • アイスランディック・フェア
    • ジョン・カボット
    • ニューファンドランドで覇を唱えろ
    • ジョン・スミスとニューイングランド
    • 一六〇〇年目の軌跡
    • 汚れた魚
  • 第6章 タラの漁師は自由にする
    • 聖なるタラ<セイクリッド・コッド>
    • 自由の海
    • ニューイングランド躍進
    • 独立戦争前夜
    • 新たな聖性
  • 第7章 魚はどんなふうに料理されたのか?
    • マグロ
    • ウナギ
    • ニシン
    • タラ
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キリスト教徒はお魚? 西欧文化に根付いた魚食

筆者は歴史学者ではなく、文学者だそうです。そのせいか、シェイクスピアをはじめとする文学作品が多く引かれています(残念ながら私は『ヴェニスの商人』ぐらいしかちゃんと読んだことがないのですが!)。

「このタラ野郎め!」

「干し魚で叩いて殺すぞ!」

そんな言葉から浮かび上がる、当時のヒトの魚に対するイメージ。これがなかなか面白いです。

たとえば、古代メソポタミア・シュメール人の主神・イナンナ(アッカドのイシュタル)の姿はこんなふうに描写されていました。

魚の外套を羽織り、足には魚をサンダルとして履き、手には魚の笏を持ち、魚の王座につき……

どんだけ魚好きやねん( ‘д‘⊂彡☆))Д´) パーン

でも、どれだけ当時のヒトが魚に頼り、また魚を大事にしてきたのかがヒシヒシと感じられますよね。魚はたくさんの卵を産むので、豊穣の象徴でもありました。崇拝の対象になるのもむべなるかな、です。

そしてこの伝統は、ユダヤ教を経て、キリスト教にも伝えられました。

たとえば、「最後の晩餐」といえばパンとワイン(そしてお肉?)のイメージですが、本当は魚も重要な地位を占めていました。イエスが食べ物を無限増殖して信者に分け与えるという裏ワザ奇跡を使ったとき(きっと↑↑↓↓←→←→BAみたいなコマンドを入力したんでしょうね!)も、元手になったのは「五つのパンと二尾の魚」でした。

魚で始まる世界史2

そして時代が下ると、魚はキリスト教の信者そのものを象徴する言葉になっていきます(イエスがペテロに「これからは魚でなく人間を取る漁師になるのだ」といったフレーズなどが代表)。

ローマ時代には、キリスト教の迫害から逃れるための符牒としてリシャ語の“魚(ΙΧΘΥΣ:イクトゥス)”が用いられました。これは“ΙΗΣΟΥΣ ΧΡΙΣΤΟΣ ΘΕΟΥ ΥΙΟΣ ΣΩΤΗΡ (イエス、キリスト、神の、子、救世主)”の頭文字を並べたものです。

 

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世界の三分の一が半年間お魚ばかり食べる

ちょっとお話は変わりますが、東洋の陰陽五行説に基づく漢方医学のようなものが、かつて西洋にもありました。

それによると、万物は四元素、つまり空気・火・水・土から成っており、それぞれ温湿・温乾・冷湿・冷乾という特質をもっています。これは人間に充満している4つの体液、つまり血液、胆汁、黒胆汁、粘液に対応していると考えられていて、人間の性格はこの体液の割合で決まっており、バランスを崩すと病気になるのだそうです。

キリスト教は、スケベ心に厳しい宗教です。性欲とはつまり、精液があり余っている状態です。当時、精液は血液から作られると信じられていました。血液は火、つまり温乾の性質を持っていますので、それを抑えるには水、つまり冷湿を持ち食材を食べるのがよいでしょう。

その食材が、魚でした。

なので、キリスト教の断食(金曜日)では魚食が許されていました。これがお魚を食べる日(フィッシュデイ)につながっていきます。

そもそも保存手段のない時代、お肉を食べられるのは限られた季節、限られた人たちだけでした。そこでお肉需要を抑えたり、漁業振興のため、“政治経済学的に”フィッシュ・デイが利用されることも多く、多い時には1年の半分にも及ぶこともあったといいます。

つまり、ざっと世界の三分の一ぐらいの人たちが、半年間、ずっと魚を食っているわけです。

その需要を満たすための流通網が整えられていき、やがてそれが北海のニシン漁を取り仕切る商業都市同盟「ハンザ同盟」の興隆へと繋がっていきました。

 

魚が世界を広げた!

もうひとつ面白かったのは、魚が貴重な船乗りたちの食料だったという点です。

魚で始まる世界史3

日持ちのする塩漬けニシンやストックフィッシュ(タラをカチンコチンに干したもの。写真参照)は、バイキングたちがヨーロッパやアメリカへ繰り出すために必要不可欠なものでした。また、赤道直下でも腐らないイングランドの塩タラは、大航海時代には不可欠の食べ物でした。

オランダ人もスペイン人もポルトガル人も、ニューファンドランドの魚がなければ西インド諸島に一隻も船を送ることができないだろう。そこで塩漬けされ、日干しされた魚以外に、傷まず腐りもせずに赤道を越えうる魚は存在しないからだ。

タラをめぐる争いは、戦争だけでなく、航海法など自由の基盤となる法整備のキッカケにもなりました。そしてこの争いで勝利をおさめたイングランドの覇権も永遠ではなく、タラ漁の成功をキッカケに植民と独立を果たしたアメリカに取って代わられるのです。

最後はめちゃくちゃザックリとした説明にしちゃいましたが、これ以上はネタバレが過ぎるので。ぜひ手に取って読んでみてください。

 

文・ やなぎ ひでとし(33歳、独身♂)

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1980年、大阪府大阪市で爆誕。中学・高校時代は伊賀、大学時代は京都で過ごしたため、あちこちの言葉が混じった怪しい関西弁を操る。
現在は東京・千葉を経て、愛媛・松山に在住。普段はWindowsソフトウェアを専門とするフリーライターと、舞鶴鎮守府サーバーの提督(大将)の二足わらじ。
中国史(とくに春秋戦国時代など)が割りと好物で、好きな人物は漢の光武帝、尊敬するのは管仲・晏嬰。コーエイの『三国志』シリーズではもっぱら馬騰で遊んでいる。日本の武将では武田信玄が好き。

 

 





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