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時代を動かすのは天才だけじゃないからこそ学んでおきたい 『リーダーの本義』(著:門田隆将)

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松下幸之助、スティーブジョブズ、孫正義など、優れたリーダーシップを持つ人たちについての本はたくさんある。
が、こうしたトップのやり方は一般のビジネスパーソンには役立たないことが多い。天才と呼んでよいほどの際だった資質を初めてから持っている人たちだからだ。

しかし、生粋のトップではなくとも、時代を大きく動かしたリーダーたちは確かにいる。

組織のNo1とは言えない――されど現場で優れた功績を残した人物たち。そんな「リーダーシップ」の秘密を史実として紹介するのが、当代きってのノンフィクションライター門田隆将の『リーダーの本義』(日経BP・2の016年6月刊)である。

門田氏は、朝日新聞が誤報を認めた東電福島第一原発所長の吉田昌郎氏(故人)をめぐる「吉田調書」について、いち早く疑義を訴えていたことで知られる。当時、大手マスコミがどこも成功していなかった吉田所長との生前インタビューに成功したジャーナリストだからである。吉田氏本人から聞いたからこそ、朝日新聞が報じた「吉田調書」の正反対の解釈に異議を唱えることができたのだ。

 

本店の指示を無視しなければ被害はチェルノブイリの10倍だった

本書の第1章では、その吉田氏をとりあげる。
門田氏に対して、吉田氏は「俺はなんにも隠すことはないんだ。後世に真実を残して欲しい。なんでも話すから、なんでも聞いてくれ」(16頁)と言った。
そこで明かされたのは、あの事故をあそこで止められなかった場合の被害が、
「ああ、門田さん、チェルノブイリの十倍ですよ」(17頁)
という日本の三分の一に人が住めなくなるという大惨事の直前だったというのだ。

それをギリギリで止めたのが、吉田氏とそのチームである。

一方で、組織のトップである東電東京本社は、「官邸からの指示」と称して誤った指示を出し続けたことが各種の報道でもすでに明らかにされている。中でも、危機だったのは、炉心を冷やすための最後の切り札だった海水注入をストップするように命じたことであった。

「本店から海水注入の中止命令がテレビ会議を通じて来るかもしれない。そのときは、本店に聞こえるように海水注入の中止命令を俺がおまえに出す。しかし、これは、あくまでテレビ会議の上だけのことだ。それを聞く必要はないからな。おまえたちは、そのまま海水注入をつづけるんだ。いいな」(33頁)

東電という組織の中では、吉田氏は命令違反をし、さらにウソをついた。
だが、その決断によって、日本は救われたのだ。

読者が自らを振り返って、あのときを思い起こせば、誰もがパニックに陥っていただろう。官邸も東電本社も例外ではなかった。

一種のパニック状態に陥っていたのでしょう。官邸もパニックなら、官邸に振りまわされる東電本店もパニックになっていたのです。
パニックになるとは、すなわち、『本義を見失う』ということです。官邸のパニックに共振して、プロフェッショナルとして対処の方法を見失った東電本店も、本当に情けないというほかありません。
しかし、現場のトップである吉田さんと部下たちが、本義に向かってましっぐらに突き進んでくれたことは、どれだけ日本にとって大きかったか知れません。
多くの原子力専門家がいる東電の中で、吉田さんだけは、原子力に携わる技術者としての本来の『使命』を見失わなかったことになるのではないでしょうか。(39頁)

日本の強みは、こうした現場のリーダーの強さが支えていると言える。 もちろん、現場のすべてのリーダーが本義を第一にしているわけではない。

 

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内モンゴルにいた民間日本人4万人を脱出させるために

第3章でとりあげる旧日本軍の根本博中将は、台湾を救った男として、門田氏の著作『この命、義に捧ぐ』(角川文庫・山本七平賞を受賞)にも主役で登場する人物である。

本書では、台湾を守った金門島の戦いの前、太平洋戦争の終戦直後に内モンゴル(中国北部)の駐屯部隊の将軍だった根本中将が、武装解除の命令を無視して、攻めよせるソ連軍と戦い続け、内モンゴルにいた4万人の民間日本人が脱出する時間を稼いだことを紹介する。
満州(中国北東部)の日本軍最強といわれた関東軍が、日本国民を守るという本義よりも命令に従うことを選んだために、ソ連軍により多くの婦女子ら日本人が悲惨な目にあったことは知られているとおりだ。

自分がその地位にいる「意味」がわかっていない人は、意外に多いものです。いや、ほとんどの人がそうかもしれません。
しかし、リーダーには、その地位にいる「使命」と「責任」があります。それを考えたことがない人は、その地位にいる意味はありません。失格です。
地位に恋々として、何かが起こったとき責任をとろうとしないリーダーがよく現れるのは、そのせいです。
言いかえれば、自分の「本義」を考えたこともない人には、「いざ」というときに人々を納得させる決断などできないということなのです。(81頁)

耳の痛い人も多いことだろう。

だが、本義を考えながら仕事をすることは誰でもできる。天才でなくても、非凡であっても、常に自分の心を磨くことはできると本書は教えてくれる。

 

 

日本人のテヘラン脱出! トルコ航空の背景に一人の商社マン

第5章では、1985年のイラン・イラク戦争のときにイランの首都テヘランに取り残された日本人の脱出を、日本航空が「拒否」したところ、なぜか関係のないトルコ航空が1機多く飛行機を飛ばしてくれたことが紹介されている。

トルコが動いたのは、1890年に和歌山沖で沈没したトルコ軍船「エルトゥールル号」を和歌山の漁民たちが必死になって救った100年前の恩を返すためだった。
映画にもなったので、その経緯をご存知の方は多いだろうか。ただ、そこにいたるまでに、トルコの首相に直接、救援を呼びかけた商社マンがいたこをはあまり知られていないだろう。

それが伊藤忠のイスタンブール事務所長だった森永堯氏(故人)である。

本書では2014年に亡くなった森永氏が残した資料が紹介されている。伊藤忠の社長ならば、1冊の本になることもあったかもしれない。しかし、同社の幹部とはいえ、一介の商社マンだった氏のメモが残されたのは稀有な例であろうか。

題して<在所に人を成す為に>。

普通の仕事人にとって知己に富んでおり、その一つが<中近東駐在員心得>だ。

1 病気厳禁、怪我厳禁
2 明るいオフィス
3 中近東駐在が天職
4 先ず感謝
5 後任に資産を
6 来客を中近東ファンに
7 自宅接待は心を込めて
8 人脈作りは相手の好みに合わせ
9 No.1商社をめざせ
10 仕事 着手前に絵を

(132頁)

である。




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今ついている仕事に悩んだら。部下を叱っても響かないときに疲れたら。
あなたの「本義」を知るために、偉人ではない過去の日本人から学んでみるのも悪くないのではなかろうか。

 



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