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日本人が知らない日台を故郷に持つある英雄の慟哭の言葉とは?門田隆将『汝、ふたつの故国に殉ず』書評

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門田隆将氏のノンフィクション『汝、ふたつの故国に殉ず―台湾で「英雄」となった日本人の物語』が2016年12月10日、KADOKAWAから刊行された。
これまでも台湾を巡っては『この命、義に捧ぐ』など数々の名ノンフィクションを書いてきた門田氏が今回選んだのは、台湾で「英雄」と呼ばれる、日本人と台湾人の今でいう「ハーフ」の男性だ。

もちろん、日本人ではほぼ無名。
その人の名は、「坂井徳章」、台湾名は「湯徳章」である。
坂井徳章でグーグル検索したところ(12月25日現在)で239件。
一方の湯徳章を台湾のグーグルで検索したところ実に7万1500件となる。圧倒的な知名度の差だ。

徳章は、日本人の父、台湾人の母を持ち、台湾で生まれた。
父を早くになくした徳章は父親の弟(叔父)と養子縁組し、30歳をすぎて東京にわたり、当時は私立の法学部ではNo1の中央大に聴講生として入り、現在の司法試験と国会上級試験のダブルで合格する努力家であった。

戦中に台湾に戻った徳章は、そこで大陸からきた「国民党」と遭遇する。日本からの独立によって台湾は自立するかに思えたときにやってきた新たな征服者はもっと悲惨な差別と現実を台湾人につきつけた。
台湾人の怒りは我慢の限界をこえ、そして1947年2月28日、二二八事件が起きる。

弁護士であり、台南市の治安の担当者で地方議員となっていた徳章は、国民党ではなく、台湾人による治安維持・回復をはかろうとする。国民党は台湾人を血の粛正をすることは目に見えていたからだ。

いつだって騒乱の先頭にたつのは若者たちだが、徳章はなんといきり立つ台南工学院(大学)の学生たちをおさめるだけでなく、騒乱をおさえる治安維持に動かしたのだ。

騒乱の側に学生を向かわせるのではなく、治安維持を任せるーー徳章たちの大胆な発想と戦略によって台南工学院の学生たちの命もまた「救われる」のだが、学生たちには、この時点ではそんなことは想像もつかなかった。(245ページ)

台南市(Wikipediaより)

ただ、国民党はこの騒ぎの原因を「共産主義者」と「留用日本人」(引き継ぎのために多くの技術者などの日本人が残っていた)のせいにする陰謀を巡らせていた。

牙をむいたのは3月6日、台湾第二の都市、高雄市で軍隊が無抵抗の市民を含めて射殺したのだ。
暴走する国民党軍は、台南にも来襲し、徳章は逮捕される。
父が日本人の徳章は命の覚悟をした。そして激しい拷問。

国民党の憲兵は、台南工学院の学生たちをターゲットにしたが、徳章は口を割らなかった。
重要な情報はとれなかったが、日本人あつかいの徳章の死刑は決定していた。もちろん徳章はそれをわかって過酷な拷問に耐えたのだろう。

公園での銃殺で、柔道三段の徳章は日本と台湾という国をこえた真のサムライとなる。
目の目隠しを拒否し、木に縛り付けようとした兵士を圧力で振り払い、
「私を縛り付ける必要はない!」「目隠しも必要ない」と台湾語で叫んだのだ。
さらには台湾語で

「私には大和魂の血が流れている!」
「もし、誰かに罪があるとしたら、それは私一人で充分だ」

そして、最期の言葉は日本語だった。
なんと言ったのか? 戦後2年しかたっていない時期に、日本語で言えば、台湾人には伝わる。

その言葉は?

なぜ台湾人は日本が好きなのか。
日本と台湾を結ぶ絆となった慟哭の言葉を本書を読んで、あなたも確かめてほしい。

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