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黒人侍のロマン詰まった一冊!『信長と弥助 本能寺を生き延びた黒人侍』(著:ロックリー・トーマス)

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織田信長の傍らに控える、黒い肌をした逞しい大男・弥助――。
日本人以外で初めて侍となった彼の存在は歴史ファンの間ではよく知られています。戦国時代を扱ったフィクションでもよく見かけます。

しかし、その存在はあくまで信長の先進性を引き立てるための脇役という扱いです。
弥助はどこから来たのか。
なぜ日本にたどり着いたのか。
本能寺の変の後、彼はどんな人生を歩んだか。
そんな弥助自身の生涯にスポットを当てた書籍が『信長と弥助』。著者のロックリー・トーマス氏は、日本大学法学部専任講師です。

比較的平易で読みやすく、また当時の大航海時代を背景とした宣教師の活動や奴隷貿易についても記載。戦国ファンだけではなく、広い層におすすめできる一冊です。
弥助の生涯は史料が乏しいせいか、小説形式で推論が書かれている箇所も多いため、ちょっと違和感があるかもしれません。
それを差し引いても、興奮とロマンを味わえる一冊です。

 

弥助はどこから来て、どこへ消えたのか?

本作は一部小説のような形式で、弥助の生涯をたどっています。ただし、決定的な新説や史料ベースということではなく、筆者の調査と蓋然性の高い説によってたどるため、ハッキリとわかるわけではありません。

例えば弥助の出生地はモザンビーク説だけではなく、エチオピアおよびその周辺国説も取り上げられています。

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弥助が日本に来るまでの経歴については、日本史というよりも世界史で取り上げるようなテーマとなっております。弥助の人生をたどると、日本の世界の中の一部であり、むしろ日本史と世界史で分けることはあまり意味がないのだと思えてきます。
さらに本書では、信長との数々のエピソードだけではなく、本能寺の変を生き延び、織田信忠に付き従い戦った弥助が、どこへ姿を消したかも推察しています。

教会に保護されたのち、弥助が出生地に戻ることはなかった、というのが筆者の推察です。

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弥助は奴隷出身であり、彼らの旅は故郷から連れ去られ売り払われる、基本的に一方通行のものなのです。

テレビ番組でも発表された故郷モザンビークに戻り日本の着物を「キマウ」として伝えたという説があるそうですが、筆者はモザンビーク大使館に確認を取ったうえで、この説は信憑性に問題がある、と結論づけています。

屈強な奴隷出身の戦士を必要とする勢力は当時多数ありました。
そこに身を投じ、異国で生き抜いたのではないか、というのが筆者の推測です。

戦国時代末期、弥助のみが黒人侍だったわけではありません。
九州地方の大名を中心として、来日した黒人奴隷が大名家に雇用された記録が残っています。大柄で戦闘スキルに秀でているだけではなく、ヨーロッパ産の火器の扱いにも長けた彼らは優秀な侍としての適性があったのです。

 

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弥助は外国人の歴史ファンの間でも人気がある

こうした弥助だけではない黒人侍の待遇についても本書では取り上げております。
しかし、決して悪くはないのに、どうにも隔靴掻痒というか、すっきりしない……。なぜなんだろうと考えると、それあ筆者の推論ベースで筆が進められていて、決定的な証拠があまり出てこない点にあるかもしれません。

これは筆者の責任でもありませんし、致命的な欠点でもありません。
弥助という人物を扱う以上、仕方のないことです。
「わかりません」で済ませず、可能性を探る筆者は誠実です。

弥助の生涯そのもの以外にも、本作には興味深い記述があります。

たとえば、海外の人々が弥助に注ぐ熱いまなざしです。
筆者は日本で暮らす外国人だからこそ、弥助に強く惹かれたと述べています。
弥助というのは、日本人のみではなく、むしろ日本人以上に他の国々の人から熱いまなざしを注がれる存在であることを、私は本書を読んで知りました。

筆者は海外の歴史ファンとインターネット上でのフォーラムで語り合った経験や、漫画やゲームといったフィクションで弥助がどう取り上げられるかまで記しています。歴史系の本でこうしたことはあまりありませんが、そのおかげで弥助が日本国内外でどうとらえられているかがわかるのです。

外国人初の侍が、黒人であること。
彼の活躍がはっきりと残され、信長らが弥助を重用したこと。
このことは海外の人にとっては衝撃的であり、感動すらおぼえるのです。

それは「彼が黒人であるから」という点が大きいでしょう。

 

黒人の活躍が記録に残されていること自体が珍しい!?

欧米の歴史において、その場に黒人がいて、活躍したとしても、記録や絵画作品から消されてしまうことがありました。
活躍した黒人が白人に書き換えられる、抹消されるといったことはしばしばなされていたのです。

しかし弥助の活躍は生き生きと日本の文献に登場します。
彼と同じように来日した黒人たちの姿は、美術作品の中に描かれています。
こうしたことをふまえると、海外の歴史ファンが弥助に注目するだけではなく、その活躍に感銘を受ける理由がわかります。

弥助の存在は驚異的であり、その生涯はロマンに満ちあふれており、他国の歴史と日本の歴史を結ぶ糸でもあるのです。
そのことは、本書のような日本国内外両方の視点を取り入れた著作であればこそ、わかるものです。

2017年現在、弥助は海外で映画化計画も進行中しています。

3月、カナダの映画会社ライオンズゲートは、弥助を題材にした映画製作を発表しました。現時点でのタイトルは” Yasuke the Black Samurai”とのこと。映画の設定では弥助の出身地は、本書でも取り上げられていたエチオピア説が採られるようです。

『沈黙-サイレンス-』に続いて、日本を舞台とした洋画の名作誕生となるのでしょうか。

この映画を見られるのはまだまだ先になるでしょうが、今から楽しみです。




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