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中央に五戦五敗の歴史なれど魂は屈せず!? 書評『東北 不屈の歴史をひもとく』

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六千年間という長い歴史の中、幾度も津波の被害を受けながら、その地に住み続けた人々――。
この本の序章は、記者として東日本大震災の被災地・宮戸島を訪れた筆者の経験談から始まります。

宮戸島に限らず東北の人々は、度重なる天災・人災にもめげず北の大地で自分たちの生を繋いできました。
著者の言葉をお借りしますと、東北と中央の間には「五戦五敗」の歴史が刻まれているのです。

果たして五戦五敗の歴史とは? 端的に申しますと、以下の五つとなります。

①蝦夷戦争(三十八年戦争)
②前九年後三年の役
③平泉藤原氏の滅亡
伊達政宗豊臣秀吉への臣従
戊辰戦争

決して規模は小さくない戦いでありながら、ドラマやフィクションで取り上げられる機会は少ない――そんな戦いの実像に迫ります。

 

「五戦五敗」の歴史と不屈のひとびと

東北の戦いは、中央から遠く離れた土地で行われたものであり、日本の歴史に大きく影響を与えてはいない、とされてきました。

あるいはフィクション作品で描かれる場合は、敗北する人々の姿がドラマチックに、同情を誘うように描かれたりします。それでいて歴史的意義が語られることは少ない。まるで中央の政権には「取るに足らない」印象すら与えます。

しかし、本当にそうなのでしょうか。

本書は東北との戦争が日本全体の歴史に与えた影響を検証します。
また、人災だけではなく天災が与えた影響もたどります。

たとえば坂上田村麻呂とアテルイが戦った「蝦夷戦争」。
蝦夷と呼ばれた東北の人々を屈服させるため、桓武天皇を中心とした朝廷は人的にも経済的にも大きな損害を出します。

そのため、天皇に集中的な権力を持たせない摂関制に移行する等、結果的に「中央にも影響を与えた」と本書はその影響を読み解いています。

他にも伊達政宗毒殺未遂事件、白虎隊の切腹等、伝説化や美化の過程で失われた真実も本書では探ります。

坂上田村麻呂/Wikipediaより引用

 

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十和田大噴火は日本のポンペイとも呼ばれ

東北は、戦災だけではなく、津波や地震にも見舞われてきました。

庄内地方にも大津波のあとがあり、十和田大噴火は「日本のポンペイ」と呼べるほどの大災害をもたらしました。
江戸期には飢饉にも襲われます。
そこから人々が何を教訓にし、復興しようとしたのか。本書はその点にも踏み込みます。

歴史書としては、少し風変わりな一冊かもしれません。
「五戦五敗」といっても、時代的にはバラつきもあり、天災もあれば、人災もあります。
地域的にも「東北」と区切ってはいますが、東北地方そのものがかなり広くい、点在しているような印象も受けます。

しかし、時代も地域もばらついている「点」を線で結ぶことによって、見えてくる何かが確かにあるのです。

それはタイトルにもあるような「不屈」の精神のように思えます。
過度に美化されず、悲劇性もまとわせないことで、かえって見えて来た柔軟性や艱難辛苦に磨かれる精神性がうかびあがってくるのです。

 

「お構いねぐ」を乗り越えて

本書の長所は、筆者自身の目線にもあります。

進軍記者として東北地方の各地に住み、その魅力を実感してきたからこそ迫ることのできた魅力。

ただ歴史的な事例を並べるだけではなく、実際に自分で歩き、人々と交流したからこその洞察が随所にあらわれています。

「また咲こう、東北」
「東北は、咲きつづける。」
2013年大河ドラマ『八重の桜』のポスターには、そんなキャッチコピーが添えられていました。
2011年に東北を襲った大震災からの復興大河として位置づけられた作品でした。『八重の桜』放映前年に刊行された本書には、まさにこの「咲き続ける東北」の姿があります。

2013年のNHKドラマといえば、朝の連続テレビ小説『あまちゃん』が話題になりました。『八重の桜』と同じく、東北の復興を願い製作された作品です。

『あまちゃん』では、
「じぇじぇじぇ!」
という驚きをあらわす言葉が話題となりましたが、私が印象に残ったのはこの言葉です。

「お構いねぐ」

 

岩手の海女である夏ばっぱが発するこの言葉は「気にしないで」という意味です。
東日本大震災で被災した夏ばっぱを気遣う孫のアキに対し、彼女はこうメールで返信したのです。

東北の人々の気質として、気になっても自分たちの場所には踏み込まないでいて欲しい、というわけです。
中途半端に踏み込むくらいなら、構わないでくれという心理状態ですね。

しかしアキはここを乗り越えて被災地へ。自分ができる手段で復興に挑みます。アキのように誠心誠意をもって手をさしのべる人は拒絶されないのです。

筆者も『あまちゃん』におけるアキのような誠心誠意をもって取材に挑んでいます。

本書の序章では、取材を拒否している被災地で「何度も来ているからいいよ」と受け入れられた筆者の経験が書かれています。

この「お構いねぐ」を越えられる作者の誠意が、本書の芯として貫かれています。
根底に誠意があるからこそ迫ることのできた、東北の歴史と人々の姿が本書からは感じられます。

文:小檜山青




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【参考】

 



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