妻と飛んだ特攻兵 8・19満州、最後の特攻 (角川文庫)

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妻を後部座席に乗せてソ連軍へ特攻!書評『妻と飛んだ特攻兵』に涙止まぬ

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8月15日は終戦記念日。
その終戦から4日後、戦闘機でソ連軍に特攻した夫婦がいました。

戦闘機に、ワンピースの黒髪の女性が乗っているという「絵」はジブリ映画にでもありそうですが、これが本当に起きた史実だったのです。

ノンフィクション作家の豊田正義氏が刊行した『妻と飛んだ特攻兵→amazon link)』で初めて明らかにされました。

後にドラマ放送もされ、成宮寛貴さんと堀北真希さんが演じられておりましたが、一体どんな史実だったのか。
書評を兼ねて確認してみたいと思います。

※ドラマはAmazonプライム・ビデオで視聴できます(レンタル324円

 

艶やかな光を湛えて風になびく黒髪が

ときは昭和20年8月19日ーー。
満州の飛行場を11機の九七式戦闘機(を改造した訓練機)が飛ぼうとしていました。

この時点日本はすでに降伏しています。
ソ連に対して飛行機を受け渡すためのフライトでした。

11人の操縦士を見守る多くの日本人。

操縦士の近くには、その家族でしょうか。
白いワンピースに日傘を差した2人の女性がいました。

誰もが見送りと思ったその女性たちは、自分の夫の飛行機の後部座席に乗り込むのです(一人は愛人でした)。

11人は、命令に反し、満州で日本人の虐殺を続けるソ連軍に一矢報いるため、特攻を密かに計画していたのです。

夫の覚悟についていこうと決めた2人の若い女性。
女性を乗せた2機が滑走路を走り出したとき、群衆たちはようやく異変に気付きました。

「艶やかな光を湛えて風になびく黒髪が目撃されたのだ」(306頁)

 

元会津藩士の子孫と北海道出身の少尉

「神州不滅特攻隊」を名乗った11人(+2人)は、
「戦い得ずして戦わざる空の勇士十一名 生きて捕虜の汚辱を受けるを忍び難し」
との遺書を残していました。

九七式戦闘機/wikipediaより引用

10機(1機は離陸直後にエンジン不調で墜落)の行方は分かりません。

特攻が成功したのか否か。
それは歴史の闇に消えました。

戦後、関係者の間で、「女性を特攻機に乗せた」ことが軍規違反とされ、彼らが「英霊」から外されたり、その後、仲間たちが名誉回復をしたりと、元軍関係者の間では密かに知られておりましたが、世間に出されるのは本書が初めてとのことです。

ひと組は夫婦で、青森出身の谷藤徹夫・朝子夫妻。
谷藤家は、元会津藩士の子孫(戊辰戦争後に下北半島に移住した末裔)だそうです。

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もうひと組は、北海道出身の少尉と現地で恋愛関係にあった宿の女中さんでした。
惜しいのは、取材に応じたのが11人のうち「谷藤家」関係者だけだったことです。

 

ソ連の虐殺に耐えかね特攻を決意する

それにしても、ほかの航空隊は降伏したのに、なぜ彼らだけが命を賭して最後の抵抗の意志を示したのでしょうか。

敗戦は決まっており勝利のためではない。
ただ「意志」を示すためだったといえます。

それは…

3日前の8月14日に、大虎山飛行場(注・彼らが所属する)から飛び立った偵察機のパイロットが、ソ連戦車隊による凄まじい蛮行を目撃していたからである。

「葛根廟事件」と言われているこの虐殺事件は、大虎山から500キロほど北上した地点にある大草原の葛根廟で起こった。

14両の戦車と20台のトラックが丘の上に現れた瞬間、浅野参事官は即座に白旗を揚げて無抵抗を示したが、ソ連軍は機関銃で浅野を射殺し、丘の上から猛スピードで突進してきた。約2千数百名が悲鳴を上げて一斉に走り出すと、ソ連軍は草原を逃げ回る避難民の群れを追い回した。

約2時間におよぶ襲撃を終えてソ連軍が去っていくと、周辺で虐殺現場を見ていた中国人たちが暴徒化して生存者を襲い、下着に至るまで身ぐるみ全てを奪っていった。(295頁・本書にはもっとショッキングな表現が書かれていますが省きます)

というものでした。

これを知った11人は復讐を誓い、整備士に爆撃装備を依頼したところ、すでに飛行場には爆弾そのものが残っていませんでした。
そこで特攻を決意したのです。

驚きと悲しみ、そして愛。
この戦争を兵士として体験した人が軒並み90歳以上をこえる中、もう新しい逸話は出てこないのかと思われていただけに、衝撃の物語でした。

現在、本書はKindle版文庫版がございます。
なお、ドラマはAmazonプライム・ビデオで視聴できます(レンタル324円

文:川和二十六

【参考】

『妻と飛んだ特攻兵 8・19満州、最後の特攻 (角川文庫)』(→amazon link

 



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