麒麟がくる感想あらすじ

麒麟がくる第8回 感想あらすじ視聴率「同盟のゆくえ」

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麒麟がくる第8回
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このあと、駒は月を見ています。月は【隠】の象徴ですね。牧からもらったという、桔梗紋入りの扇を見せています。

光秀は、父上の形見のひとつだと気づくのでした。母上の感謝の気持ちだろうと。

「駒の一生の宝といたします!」

ここで、伝吾が子どもたちが今一度お手玉が見たいと申しておりますので、とお願いに来るのでした。

翌日、光秀と駒が道を歩いています。

「十兵衛様、もう見送っていただくのはここまでで十分です。あとは一人で行けます」

「構わぬ。向こうの峠道まで行こう」

「あまり長く送っていただくと、胸が痛みます。お別れするのがつらくなります」

「峠道までじゃ」

「もう峠道です。帰蝶様が……稲葉山城へ行かれた時は、十兵衛様は、お見送りなさりませんでした。知らぬ顔で、書物の片付けをなさっていました。でも本当はは、私よりも、帰蝶様をこうやってお送りしたかったのではありませんか? 本当は十兵衛様は手放したくはなかった。嫁がせたくなかった。大好きだったから。だから……お見送りしなかった」

光秀、なんだか呆然としております。

「ここは十兵衛様と私だけです。誰も聞いてはおりませぬ。お気持ちをおっしゃってください。十兵衛様は、まことはそうでございましょう? 帰蝶様を行かせたくなかった。だから……」

「そうやもしれぬ」

光秀はうなずく。が、本当なのか? あやしいなぁ。

そう、光秀のあの書物整理、あれはなんなんですかね。一瞬入りましたけど、あれを入れる意味ってあったんですかね?

あったとは思う。ただし、ものすごくわかりにくい理由ですね。

斎藤利政は槍を振り回し、数珠の珊瑚を数え、足の爪を切る。

明智光秀は、書物整理をする。

織田信長は、魚を切る。

真田丸』の真田昌幸は、胡桃をカチカチする。

『おんな城主 直虎』の小野政次は、そっと持った碁石がお友達。

手を動かして、なんか整理したり、どうでもよいことをして、心を落ち着ける。なまじ嫌な現実、タスクまみれだと、しょうもないことを片付けてほっとする心理はあるものでして。

現代社会でも、それをやると「仕事しないでなんか遊んでいるうつけ者!」まっしぐらなのがつらいところですね。

駒は、光秀の態度に納得しています。

「よかった。そのことをお聞きしたかったのです。やっぱりそうですものね。ここでお別れいたします。ありがとうございました」

見送る光秀。でも顔が、なんだか困っていて、自分でもよくわかっていないのではないでしょうか。

この先、来週にでも光秀は何も悩まず結婚するかもしれません。

帰蝶や駒はどうした?
という突っ込みは相応しくないと考えています。

光秀は、この二人に恋愛感情はないと思います。ただ、好意はある。ゆえに「それもそうかな?」程度の認め方をしている。

光秀は、人類愛の男と言いますか。
この世の中のすべてに愛着を持つような博愛の人なので、一人だけに愛を注げないタイプかもしれません。

そこをどこまで長谷川博己さんが把握しているのかわかりませんし、この見解はあくまでひとつの見方。ただ、主役でありながら光秀の台本は「……………………」が多いそうです。

博愛の人だけに周囲、老若男女から愛を寄せられて、反応していると疲れ切ってしまうのかもしれない。

そういう人物像を、長谷川博己さんはうまくつかんでいると思います。週ごとに、その思いは増すばかりです。

 

東海最強の戦国大名・今川義元

天文18年(1549年)2月――。

上から見下ろす斬新なカメラワーク。

帰蝶は、織田信長に嫁いでいきました。

両家の和睦が話し合われて、二ヶ月足らず。慌ただしい嫁入りであった。そう語られます。

ここで、駿河の今川義元へ。彼の前には、三河の松平広忠がおります。義元は迫る。

「既に雪斎から聞いておろうが、尾張の織田信秀が、美濃の斎藤利政と手を結んだ……」

これは三河にとっても由々しき事態。紳士的なようで、お前も備えろ、わかっているだろうなと迫るのです。

尾張も攻め時。それはいつか? 雪斎と、今だと言い合う義元。広忠に対して、三河は織田信秀切り崩しにあい、田畑は荒れ、いくつかの城を奪われたと焚きつけます。しかも、嫡男・竹千代まで人質にされたと。

「口惜しきことこの上あるまい……わしが手を貸す。松平家の汚辱を晴らすのは今ぞ! 織田と戦じゃ!」

画面越しでも怖い。圧倒される。そんな義元です。白塗りの不気味さではなく、あえて生き生きとした像がそこにはある。

そしてこれまた本作の特徴ですが、声が明らかに美しい。張りがあって、滑舌が綺麗で、ともかく怒鳴り散らすわけでもなく、腹の底からしっかりと出しています。見ているだけで謝りたくなるほど、迫力がある……。

演じているというよりも、もはや片岡愛之助さんが義元を生きている。義元の霊が、彼を呼び寄せて己を演じるように訴えたかのようだ。おそろしいとしか言いようがない。

 

祝言なのに若様がおらぬ!

さて、そのころ。那古屋城では。祝言のはずが、おかしい。

「信長様ーどこじゃー!」

「若様ぁ!」

「お探ししておりますが、どこにも……」

「市の方にもいない!」

おい、婿がいないって、おい!

ものすごいくだらない理由でいないんだろうな、うん。ついに平手政秀が、帰蝶の元にやって来ます。

「御免! 若殿をお守りいたすべき平手政秀、一生の不覚にございます! 若殿のゆくえを八方探しておりますけれども、いまだにおらぬとあっては申し開きもできませぬ!」

「信長様は、今日という日を御失念遊ばれたか」

帰蝶はちょっとおもしろそうにそう言う。

「左様なはずがございませぬ! いま少し、お待ちくださりませ!」

平手政秀が気の毒すぎます……。

信長うつけチェック!その3

「予定を守れ!」

もう何も言えない。自分の祝言をすっぽかす? うつけがぁ!

→信長くんは、自分の行動が周囲にどんな影響をあたえるのか、時々全く考えずに行動しちゃうんですね。自分の計画や予定は大事なのに、人のものは割とぶちこわしますね。捕まえておけばよかったかな?

 

MVP:今川義元

信長もよいけれど、今回はこちらで。

ビーチエンジョイ信長くんが「なにこいつ……」となる一方で、今川義元で。

カメラがアップで彼の表情を追いかけているのですが、ずーっと気合が入りっぱなしですごいことになっております。どこから見ても、惚れ惚れするほどの英雄らしさに満ち満ちております。

あまり役者と役柄を重ねるのはどうかと思いますけれども、もう片岡愛之助さんはこの役を演じることが運命だと思えて来ます。

彼は一般家庭出身で、女形でしたね。愛くるしい外見もあり、まさにラブリンではありました。けれども彼は力強さがあり、そこではとどまれないといいますか。立役になりました。

彼はものすごく力が満ち溢れていて、器をぶっ壊すようなところもあるのかもしれない。

今川義元は、還俗してこれほどまでに強くなった。そして長らく、白塗りで軟弱なイメージがあった。

そういう器を破壊するためには、彼が必要だったのかもしれない。そう思えるほど、いつも力が満ち満ちていて、見ていて目が離せない。

『真田丸』の大谷吉継も素晴らしかったのですが、あの役はどちらかというと柔らかさがありました。

今回は硬い。硬くて強い。ともかくずっと見ていたくなるのですが、結果的には信長に負けてしまうわけです。

信長と義元が同じ回に出てきたことで、その理由もわかるのかも。

この金剛石のような義元が砕けるような【桶狭間の戦い】は、本作屈指の名場面となるでしょう。

そのときが楽しみなような、怖いような。ともかくすごいものを見せられている……。

 

総評

信長特報動画を、今日まで何度見直したのかわからない。

先週の時点で、染谷将太さんの役の理解度はただものではないと思いましたが、特報の発声が盤石ですごいと思えました。

信長は、そういうことをすると周囲がどう思うのか、割と考えられないタイプとみた。ゆえに、不機嫌さが顔や声にも出る。これが難しいと思うんですよね。

棒読みか、裏返ってわけわからん状態になっているか。最悪の場合「こいつは演技が下手だな」と誤解を受けかねない。

こういうことを思ったのが、BBCの『SHERLOCK』の字幕版と吹き替え版でして。

※ガーッと喋ります

英語だと、棒読みで相手がどう思うのか無視してまでわーっと喋るのですけれども。吹き替えだと「賢いことを言っている」という抑揚がついている。つけない方がリアルだとは思うのですが、棒読みと思われたくないから、そこは悩みどころですよね。

でも染谷さんはそこをふっきって、役の特性を読み込んできっちりこなしていると思えたんですよ。

子どものような無邪気さも、力強さも出ている。場面によってはザラザラとした声にもなる。何度聞いても飽きない!

彼をイケメンだの、初登場が凛々しいという意見も見ました。

これは彼に失礼かもしれないと前置きしますけれども、それって先入観ではありませんか?

あの漁船の上にいる信長は、むしろリラックス状態に思えました。

キャストビジュアルでも、三白眼が怖い。

人物紹介ではむしろ愛くるしくて、ピーターラビットのような愛くるしさすらある。

イケメンの基準値からどのみち大幅に外れているとは思う。あ、元の造形の話ではない。演技した結果です。でも、だからこそ、魅力的です。

ここで思い出したのが「玲瓏れいろう」という言葉です。

複数意味がありますが、「美しい玉がぶつかりあい綺麗な音を奏でること」をここでは採用します。

美しい球がぶつかりあうというのは、ネックレスなり、佩玉はいぎょくなりの貴石がカチカチと鳴る状態だと想像してください。

その音がそこまで綺麗かどうか?
実際はさておきまして、玉同士が鳴るというその状態そのものが、圧倒的な美しさを想像させてきたのだとは思います。

演じるって、そういうことではありませんか?

脚本が届いて読み込んで、自分の中にある何かと、役柄がふれあって、玲瓏たる音を響かせ始める。そういう何かが、この作品にはあると確信できた!

このドラマの世界は、ほんとうに不思議だ。即座に魅力があると気づくけれども、その理由を全て解明することは極めて難しい。おそろしい世界です。

インタビューやコメントを読むだけでも、彼らが役柄を理解しているとわかる。演じるを超えて、生きていると思える。

そういうシンプルで基本的、小細工なしのものを感じるのです。

 

「大智は愚の如し」

絶対に染谷さんは叩かれます。彼は常に敵と戦わねばならないのでしょう。

その敵とは【先入観】です。

ものすごく意地悪なことを言うと前置きしまして……「こんなの織田信長じゃない!」という意見に突っ込みます。

信長の実物を見たことあります?
あるわけないですよね。当たり前のことです。それでも、信長像は頭の中にあると。

誰も知らない織田信長――。

そう公式が散々言い切っているのに、織田信長の先入観を持ち出すのはどうしてなのでしょうか?

この理由が実は大事かもしれない。

・先入観と知識に勝たれば「賢い、大河通、日本史通」だと周囲にアピールできるんですよね。あ、わかってます、嫌な言い方してますね

・自分の先入観を納得させられないのであれば、駄目だと言い切れるのであれば楽なんですよ!

・若い男優を貶したいとはいえ、ストレートにはできないし……

・信長像を貶すことで、周囲と盛り上がれるかも

先入観と、感情の共有により、人は満足感が得られます。

若い男優を貶す。

「若い女に媚びているから駄目」といえば、ご意見番になれる。

こんなものはジジババ好みだといえば、自分のトレンディさもアピールできる。

そういう気持ちはどうしたって出てくるものです。

でも、そんなことをしたって本質には近づけない。先入観は捨てたい。

三英傑の老齢化は、大河の課題ではありました。

「大河通」。司馬遼太郎や山岡荘八は全部読んだ。朝礼で、歴史の逸話を語って部下にアピールする。

そういう視聴者ニーズを考えた結果……

・没年齢よりも年上のベテランばかりを起用する

・三英傑の年齢差が歪む

・新鮮味がなくなってしまう、リアリティも

こういう問題はありました。

その打破を目指すのであれば、先入観を倒すしかありません。

人間は、未知の改革よりも既知の保守が好ましいものです。そこを崩すにしても、演じる側はつらいと思いますよ。

先週も書いたのですが、今週も書く。

酷いことするもんだ。染谷さんがどれほど大変なことか。

でも、見れば見るほど確信する。彼は役を理解している。ものすごい読み込みで挑んでいると。

この信長は、やる気があるときはものすごくやる気を出せるんだ。でもやらないときは、やらない。

不器用で誤解されやすいけど、いつでも一生懸命だとわかる。

そこが、一番大事だと思います。

この信長は「大智は愚の如し」だと思う。賢いけれど、うつけに見える。そういう役を、彼はよく掴み取り、全力で演じていると思えるのです。

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文:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】
麒麟がくる/公式サイト

 



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