麒麟がくる感想あらすじ

麒麟がくる第30回 感想あらすじ視聴率「朝倉義景を討て」

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麒麟がくる第30回感想あらすじ
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合戦に消極的な義昭

京の二条城では、義昭、三淵藤英、摂津晴門、そして光秀がいます。光秀は幕府と、妙覚寺にいる信長の間を取り持っています。

三淵藤英
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議題は若狭出陣のこと。義昭が聞いていると促します。

なんでも信長は体調不良で伺えないのだとか。

それは本当かもしれないけれど、話し合いは光秀の方が得意そうでもある。

晴門が嫌味たらしい中、義昭は代理の屋根まで直し、自ら点検した信長に理解を示します。その甲斐あって、若狭の武藤某なる非道の者の成敗勅命を受けたそうです。

帝の勅命は天からのご命令であり、幕府も若狭の武藤を討つべきだと光秀は進言。

義景本人ではなく、その家臣討伐を名目とするわけです。

将を射んとする者はまず馬を射よ――というような話ですね。

けれども、ここで義昭の仁愛ある性格が悪い方面に出る。

義昭は消極的なのです。

恩義ある他ならぬ信長のことなのに、戦があれば和議をすることが将軍の役割、都に留まり吉報を待つと、現実逃避のようなことを言い出しました。そして「後は任せる」と言い放ち、光秀は呆然とします。

晴門も、若狭・武藤某討伐のからくりくらい知っている。白々しい口実だと言い、はっきりと申せばよいと煽ります。

越前の朝倉を討つつもりだと。

そして藤英は、以前も申した通り公方様は朝倉と戦うつもりはないと言い切ります。多くの大名に支えられることが望みであり、朝倉も存続させたいのです。

光秀は動揺しつつ、朝倉様には京畿内を抑える気がないと返します。義昭が信長を頼りに脱出しようとしたとき、国境を封鎖したような器の小ささを言い募るのです。

 

阿君丸毒殺に手を染めていたのは

ここで晴門が、三淵の英断がなければ義昭が信長のもとまで辿り着けなかったと毒をたっぷりふくませて言います。

英断とは――義景の嫡男・阿君丸毒殺のこと。

晴門は、自分の家臣が京から毒を運んだと言います。

汚い……。古き友と言い、期待していると頼りにしつつ、義景があんなに愛していた嫡子毒殺をしているとは……。

愕然とする光秀。表情が冷え切っている藤英。

晴門はぬけぬけと言います。

「明智様もよくよくお考えいただきたい。大事は皆の力で為すのじゃ」

一人の力で天下を成すと思うのは、思いあがりというもの。幕府は都を守らねばならない。

信長が戦をしようと、我らは京の外へ一歩たりとも出るつもりはないと。

「そのように織田様にお伝えくださりませ」

そうぬけぬけと言う。

藤英は、あの折越前を出たことは正しかったと今でも思っている、悔いはないと言います。

それでも今回の戦は気が進まない。己の弱さゆえかもしれないと言います。そして京に残り、御武運を祈るしかないのだと。

「許されよ」

そう語る藤英の声音はあくまで穏やかで、透き通っていて、悪事からほど遠く……感動のあまり掠れる信長とは正反対でもある。

こんなにも醜いこと、悔いはないという嘘かもしれないことを言いつつ、どこまでも澄んだ声です。

どちらが厄介なのだろう?

澄んだ声で嘘を言う人と、感動のあまり声を掠れさせ素直に気持ちを出す人では。

かくして、妙覚寺では信長が家臣にこう告げます。

「出陣じゃ!」

「おー!」

永禄13年(1570年)、4月――。

諸国の兵を従え、織田信長とその将兵は、朝倉義景を目指す越前へ出陣するのでした。

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MVP:【帝】

なんとも奥深いことをしてきました。

正親町天皇と具体名を書かない意義もあるのです。

尊く、美しく、はっきりとご尊顔すら拝せないのに、圧倒的な存在感がある。そりゃ信長も興奮しますよね!

でも……その帝の言葉で何か好転しましたっけ?

別にしていない。信長は朝倉義景と単独で戦う羽目になっている。

信長も、光秀も、視聴者も、大きな疑問符がふっと心に浮かんだのではないかと思います。

帝は尊いという。ずっと日本の歴史で大事にされてきたという。

でも、その影響力って限定的だし、皆そこまで尊んでいるわけでもないし、いったいどういう存在だっけ?

そういう日本史に残る巨大な疑問符として本作は表現していると思いました。

維新側幕末もの大河ドラマではそのあたり、ポリティカル・コレクトネスってやつか、御所を燃やそうが適当に綺麗な話に丸められますが。

幕末・孝明天皇の場合はもっとえげつないものがあります。

維新を起こした側は、相手を朝敵と貶めつつ、天皇を”玉“と呼んでいたわけです。

令和の女子高生による「めっちゃ天皇!」という言葉が話題をさらいましたが、昭和史ですと”天ちゃん“……なんて言葉もありますし。

でも、そんなことをETVあたりで問いかけられるかというと、このご時世厳しいとは思うわけですし。

このドラマは、一体何と戦っているのか……。

 

総評

おそろしいことになってきました。

光秀も信長も、どんどん哀しくなってくる。

あれほど幕府再興を願っていた光秀が、そのどす黒い内情を知ってしまい、嫌悪感が募るようになってゆく。

先週、摂津晴門から持ちかけられた土地をめぐった汚職から、キッパリと手を引いた光秀。

三淵藤英による義景嫡男毒殺がなければ、そもそも信長との上洛も叶わなかった。

気がつかぬうちに共犯関係になっていたと知らされ、唖然とするしかない。くやしいけれども、摂津晴門の言葉には真理があります。

義昭は、駒とのやりとりで微笑ましいほど無邪気な姿を見せる。けれども、その理想主義は信長相手には全く意味がない。優柔不断すぎて厄介である。

帝だって、結局、勅命の効果はどこまであるのか……。

光秀はどうか知りませんが。私の脳内には、かつて光秀の主君であった斎藤道三の言葉が蘇ります。

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お守り札に頼らず生きてゆけと。

血筋とか、地位じゃない。自分自身の力を信じて生きるよう、彼は促していたものです。

信長は狙ってか、そうでないのか、皮肉にもありとあらゆるお守り札を捨てるように決戦へ向かわなければならない。

確かにこれは哀しい。

本作の新解釈信長は、かっこよさも、天才性も、よくわからない。それよりも、不器用さと哀しさが先立ってしまう。

誰にも理解されない哀しさを持つ信長を、理想を実現できない哀しさを持つ光秀が討つ。

おそろしいことをやるものだと、毎週うなりながら見るしかありません。

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文:武者震之助
絵:小久ヒロ

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