麒麟がくる感想あらすじ

麒麟がくる第36回 感想あらすじ視聴率「訣別(けつべつ)」

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信長から義昭への『十七箇条意見書』

光秀が坂本にいると便利だ。信長はそう上機嫌です。

呼べば翌日には来れる。光秀も申し上げたき儀があったので好都合だと返します。

まずは信長の話から。

三日前、夢を見た。

甲斐の大入道が上洛し、わしを捕らえて公方様の前に突き出す。

公方様はこともなげに、耳と鼻をそぎ落とし、五条の橋に身を晒せと仰せになる。そこで目が覚めた。恐ろしい夢じゃ。

一体何を言い出すのか。

しかし、この後の方が怖いといえばそう。なんでもその夢で「公方様に冷たく当たったかもしれぬ」と気づいたそうです。

光秀が困惑しています。

公方様に宛てた手紙【十七箇条意見書】のことですね。

よく働いた家臣に褒美をやらず、己がかわいいと思う近習のみに金品を贈るとか。許可なく御内書を送るとか、寺社の領地を没収するとか。

そういうことをどうかと思うと書いた手紙です。

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信長が義昭を叱る! 殿中御掟や十七箇条意見書には何が書かれてる?

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これを世間が見るとどうなるか?光秀が説明します。

「まことに手厳しい文でございました」

それなのに、信長は夢で耳と鼻を削がれて、やっと手厳しさを悟ったらしい。

澄み切った目でニッコリと、子どものように笑います。

「そこで思いついたのじゃ!」

なんでもこの鵠(くぐい、白鳥の古名)を差し上げ、手慰みにして、公方様に幾分機嫌をなおしてもらおうと言い出す。

まずい……徹底してズレている。『鬼滅の刃』で不死川実弥におはぎをあげると思っていた冨岡義勇と同じくらい、ズレている。

嗚呼、いるんだ、こういう人!

お高いスイーツを買っていけば相手に無茶振りしてもいいと思い込むタイプ……光秀も引いてる。

 

三方ヶ原で家康が大敗

信長は、自分なりにがんばっているとアピールする。松永久秀を討つことを命じられたから、嫌だったけどすかさず兵を出している。ワシなりに気を使うておる。そう思わぬか?

同意を求めらる光秀は戸惑いつつ、気遣いは他の大名にもするべきだと言います。

その大名とは徳川家康のことでした。

武田軍2万が徳川領に攻め込んだ。

徳川はせいぜい7千から8千。

織田家の援軍3千を加えてもハナから勝ち目がない。

信長は露骨に不機嫌そうになります。

仕方あるまい、こちらもぎりぎりでやっている。越前の朝倉、北近江にも1万5千。明日わしも出陣する。家康を助けてわしも負けたら元も子もあるまい。

そう投げやりに言います。

光秀も食い下がります。公方様が直接ついている信長と、そうでない家康は違う。家康を頼りにしてきたのだから、あと2千でも3千でも援軍を送るべきだと言います。

信長は面倒くさそうに、夢の話を思い出させる。公方様はあてにならない。

どころか、信玄も、朝倉も、浅井も、公方様が背後にいるとぶっきらぼうに言うのです。全てお見通しだと。

「そのような動きがあれば十兵衛が食い止めてご覧にいれまする」と言い切る光秀。

「ふむ。以前帰蝶が申しておった。十兵衛はどこまでも十兵衛じゃと」

そうにやりとして、あの鳥を公方様にお届けせよと告げるのです。

義昭が変わってしまった一方で、光秀は変わらないと示されています。

ここで若侍が、三方ヶ原で徳川家康が大敗したと告げて来ます。

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家康はなぜ信玄に戦いを挑んだ? 三方ヶ原の戦い 謎多き戦場を歩く

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加減を知らない信長

光秀は苦しそうに顔を歪めます。

やはり光秀は、家康をかなり買っているようではある。

この場面を見ていてしみじみと思ったのは、信玄のみならず、家康も相当強かったことでした。

圧倒的不利な状況で大敗はしたものの、自分自身は討ち取られることもなく、再起をはかる――負けたことを教訓にして、天下をとる。

時系列的に彼の功績は描かれない本作ですが、秀吉のその後のように、家康の持つ強さや可能性まで示します。

そしてこの場面は、どこかズレている信長がはっきりとわかりました。

信長は秀吉とちがい、目も声も常に透き通っているとは思う。義昭はすっかり濁って迷走しているけれども、信長はすっきりとしていてまっすぐなのです。

ただ……加減を知らない!

光秀からすれば「手厳しい」書状も、信長からすればそうじゃない。箇条書きで、ズバリと解決に役立つアドバイスをしてやったぞ! そんな風に思っている節さえ見えます。

いちいち独自のセンスで失礼な例えをするとか。変なあだ名をつけるとか。言い方がいちいちきつくてやりすぎだとか。そういうことをしてしまう。

徹底して不器用なのです。

十七箇条の意見などは、義昭のダメさ加減より、ストレートに殴りすぎる信長のセンスに問題があったのでしょう。

ただ、何が悲劇的って、本人には「やりすぎの自覚がない」ところです。

彼は猛獣みたいなもの。じゃれついたつもりが、相手にとっては致命傷になっている。気づけば何もかもが壊れている。

そういうペットの虎じみたものがあって、本人だって辛いのでしょう。

秀吉はひたすら恐ろしいけれど、この信長は気の毒ではあるのです。染谷将太さんは、そういう信長の解釈をぴったりと絶妙に演じている。最新研究を踏まえた人物像ですね。

目を見て声を聞け――という本作は、役者さんもみな目と声が素晴らしく役柄と一致しています。

信長はそれこそ人間を超越してネコ科の獣のようで、発声がゴロゴロする声だったり、唸り声のようで。感情がそのまま乗っかっていてすごい。

でも、人間社会では、そこまで感情をあらわにすることはよろしくないのでしょう。

信長が裏切られ続けた理由は『不器用すぎた天下人』を読めばスッキリします

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貧しい人を救うための金が鉄砲に

駒が芳仁丸製造を取り仕切っているところへ、東庵が何か持ってきます。

公方様に使えるお侍が見えて、これを駒に渡して欲しいと、ずいぶん急いでいたそうです。

受け取ったのは虫かごです。

そこには文がありました。

「公方様からの文だ。今まで渡した金、全部使って鉄砲を買うと。戦に勝ったら返すって……」

駒と心が通じ合っていた義昭は、もう消えました。

貧しい人を救うための金が、人を殺し、戰をする鉄砲に変わってしまう。残酷極まりない運命の転変が、そこにはあります。

光秀は鵠を持参し、そんな義昭に面会を果たしていました。

しかし義昭は、この鵠はもう受け取るわけにはいかぬと言う。光秀が理由を問うと、こう言い切ります。

信長との戦を覚悟したのだと。

光秀が「公方様!」と投げかけると、その理由を語ります。

十七箇条の意見書――罵詈雑言だ。

帝への配慮が足りぬ、将軍の立場を利用し、金銀を溜め込んで、まことに恥ずべきであると。

もはや我慢ならぬ!

そう吐き捨てます。

義昭の心を蝕み壊していったのは、摂津晴門かもしれない。けれども、ひび割れた心を完全に破壊し、叩き割ったのは、信長の鋭すぎる言葉でした。

そして義昭は、おそろしいことを告げる。

今、信玄が上洛の途上である。朝倉、浅井が信玄と信長を挟み撃ちにする。徳川を破り、松永が敵に回った。信長の命運は尽きた! そう宣言するのです。

光秀は苦しげに、松永を敵に回すようにはかられたのは公方様ではございませぬか、そう問いかけます。

「はかったとは何事!」

「申し訳ございませぬ」

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