MAGI感想

MAGI(マギ)感想あらすじエピソード5歓声と憎しみの矢【マドリッド篇】

マドリッドへ向かう

一行の馬車はマドリッドへ。
マンショは、フェリペ2世の言葉を他の少年に伝えます。

「歓声を浴びれば浴びるほど、敵意を持つ者も増える」

この話の構成に隙間がないことっ!
当てはまる人間がフェリペ2世だけではないんですね。

信長も。秀吉も。
権力に近づく者は皆そうです。フェリペ2世の語る王の苦しみとは、そのことではないでしょうか。
あ、ヴァリニャーノの言葉もそうかもしれない!

ヴァリニャーノの、高い所に登ると危険だという言葉。
マンショは子供扱いかよとあきれておりましたが、実はそういうことかもしれません。
実は、本人も無意識のうちに言ってしまったのかもしれませんが。

スゴイな、この作品は。
セリフひとつひとつを分析して、飽きることがありません。

ネット配信の強みがここにあります。
一時停止も巻き戻しも、テレビよりもはるかに楽なのです。

ここで、マンショとフェリペ2世の回想シーンが入りました。

刀を受け止められる理由を聞くフェリペ2世からは、秀吉の態度と似たようなものを感じます。
思い通りにならないものの存在が、ともかく許せない。
暴力で叩き潰しても当然だという、王ゆえの傲慢と暴虐を感じるのです。

 

割れた茶碗は継ぐことが出来るが……

場面は、再び茶室へ。
しかし今度は、利休の手に金の茶碗があります。

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その脳裏に浮かぶのは、金の茶室にいる秀吉です。

ここで黄金の茶室を出すのも、実に深い意味を想像してしまう。

視聴者は、豪華絢爛なキリスト教の教会や聖堂を目にして来ております。
黄金の茶室と、大聖堂。
こうした建物を、ただの茶の湯や神の栄光を讃えるためのものだと思えますか?

そこには権力者の欲望があるのではないか。
こんなものを作ることのできる私は偉大だと示したい、王の思惑があるのでは?と、想像してしまいます。

利休はキリシタンについて語るべきではなかった、と後悔しているのです。

キリシタンとの友好関係はやがて終わる。
そしてそのときは、自分にも刃が向いてくるだろう――そう悟ってしまったのですね。

利休が、金継ぎの茶碗を持っているのも深い。
秀吉はこれが利休の心だと言いながら割りました。

キリシタンが迫害されたなら、利休も危うい理由とは?

【精神性】を持つ者が己の権力に属していない者だとみなし、攻撃するからだと感じたからでしょう。
茶碗は割れても戻せるもの。しかし、心は……。
不屈の精神性や心に苛立ちを感じ、破壊欲をぶつける。

利休が悟ったのは、そんな秀吉の暗黒面。
茶人も、キリシタンも。その意味では同じなのです。

 

十字架を身につけた刺客

少年たちは、歓声と憎しみの矢が待ち受ける旅路を続けるほかありません。

馬車の通る道も、船が進む海も美しい。
しかし、人の心はちがう。

日本を出立して既に三年が経過しておりました。

船倉でマルティノは、フィレンツェやローマへの好奇心を語っています。
ジュリアンはホームシック気味。ミゲルは剣術を教えてやろうかとジュリアンに言います。

こういう会話にも、個性が出ていますね。

そこへドラーゴがやって来て、船倉から出ることを禁じます。鎖で防げというのです。
続く砲声! 何事だ?
と思ったら、海賊の襲来のようです。

当時、海賊は大暴れしていて、スペインも酷い目にあいます。

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ミゲルは戦おうとしますが、仲間たちが必死で止めようとするのです。

船倉でおとなしくしているほかない、少年たち。
やっと「海賊は立ち去った」と、声が掛けられます。

終わったのかと安心し、施錠を外す――と、突然彼等は短剣を抜いて、襲いかかってくるのでした。油断させて殺そうと企んだのですね。

激しい戦闘のあと、やっとの思いで撃退する少年たち。
倒れた刺客たちの胸には、十字架が光っています。

ドラードによると、バチカン行きを拒む者の刺客だそうで。
マンショは、目線をじっと十字架に注ぎます。

イエスを信じるとは、一体何なのか。そう問いかけます。

 

MVP:豊臣秀吉

信長の時も思いました。
こんな秀吉が描けるこのドラマが憎い! もおぉぉぉ、ジタバタですよ!

来年の大河『麒麟がくる』では、三英傑(織田信長豊臣秀吉徳川家康)のキャスティングはまだ告知はありません。

それも気になるところですが、もっと引っかかるのは本作『MAGI』における徳川家康です。
信長と秀吉でこんな大河ファンが悶絶する隠し球を投げて来たんです。
家康だって、おそろしいことになるに決まっているでしょう。

今後、海外配信ドラマが続くとすれば、渡辺謙さんが扮する伊達政宗が、ソテロを派遣するドラマができてしまうのではないでしょうか。

さらに妄想を続けてゆくと、日中韓スターそろい踏みの「文禄・慶長の役」ドラマの可能性なんか湧いて来たりして、もう辛くなって来ます。

海外にスケールを広げるって、そういうことか! そういうことだな!
秀吉の朝鮮出兵も問題なくやってのけちゃうんだよな!

秀吉に話を戻しましょう。

信長、フェリペ2世と来て、秀吉。
本作は、王たる者の存在感をきっちりと見せるからすごい。

若い少年たちにも、溢れんばかりの魅力はあります。
しかし、そんな少年では太刀打ちできない凄味が王にはあるのだ、これぞ王なのだと思わせます。

秀吉とフェリペ2世の描き方。これには唸らされました。

意図して、対照的に描いています。
フェリペ2世が信長の死を聞く場面と、光秀の生首を前にした秀吉。二人とも、不気味な笑みを浮かべています。

壮麗な建物を背景にした二人。
談笑から一転して破壊的な衝動を見せ付ける、その気性の激しさ。
信念を持つマンショと利休への激昂。
西の王も、東の王も、実は似たもの同士なのかもしれない。そう見せ付ける力量に驚かされました。

歴史的に見ても、言われてみればこの二人には共通点があるようにも思えるのです。

フェリペ2世にとって唯一の王子であったドン・カルロは、豊臣秀次を彷彿とさせる人物です。

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光り輝く絶頂から、彼の子孫が転落する点も似ています。

そんなフェリペ2世の影響に翳りをもたらす宿敵は、幼少期に苦労した経験を持ち、慎重な性格をした策士でした。
その君主は、統治する国の基礎を築いた名君として現在に至るまで慕われています。

エリザベス1世――。
母は処刑され、王女として認められることすら拒まれ、投獄の憂き目にもあった苦労人です。

このエリザベス1世は、幼少期に辛酸をなめた徳川家康と共通する点もあるわけですね。

この女王と将軍を、結ぶ人物はカトリックに敵対するプロテスタントなのです。

 

総評

深い。深すぎる……。
本作の三英傑には、人物を繋ぐ糸が見えて来ます。

ヴァリニャーノと信長。
愛とは何か。真っ直ぐに生きることを求める二人です。

信長は、ヴァリニャーノが反論しても咎めませんでした。秀吉ならば、そうはならなかったと今回わかったと思います。

フェリペ2世と秀吉。
権力とは、屈服させることだと信じている黄金の王。彼らにとって、屈服しない精神を持つ相手は反逆者なのです。

そして、これは私の予想ではあるのですが。

エリザベス1世と家康。
愛も精神性もどうでもいい。けれども、力づくで屈服させるわけではない。
理詰めで軟着陸したいところだけれども、力を振るうときは振るわねばならない。

エリザベス1世と家康には、妙な共通点があります。
籠の中の鳥のように捕らえていた宿敵を、そのまま握りつぶすわけでもなく、しばらく手の内においていたのです。

無理矢理潰すと、リスクがあったから。
エリザベス1世にとってその相手はメアリー・ステュアートです。

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家康にとっては、豊臣秀頼ですね。

どちらも己の器量としては及ばない、隙の多い相手ではあるけれど、二人は処断に慎重でした。
そしてこの二人は、カトリックと敵対する勢力にもなる。

うわ〜、なんだかすごいことになってきちゃったな!
家康のことは妄想なんですけれどもね。
本作の魅力は尽きない! 深い!
その魅力は、世界規模にあるのです。

東と西に存在していた権力、王、精神性を求める者。
栄光のもたらす苦い側面。

そういうのに、文化の違いなんて、実はないのかもしれない。
歴史とは、似た部分があるのかもしれない。

人とは?
精神とは?
権力とは?

そういう問いかけを、ぐるぐると周りながら突きつけて来る!

天正遣欧使節という出来事を描いているようで、さらなる高いところに視聴者を連れてゆき、落とす。
そんなものすごい何かを作っている気がしてなりません。

こんなに難解で、歴史知識をモリモリフル回転させろ、できないならもういいと突き放すドラマを、よくぞ作れたものです。
一気に見て夢中になり、何度も止めて、巻き戻す。
そんなネット配信ならではの強みを使いこなしておりますね。

もう、この世界にはまったら抜け出せない。
なんだかドラマを見ているどころか、恐ろしい何かを体験しているような、そんな領域に足を踏み入れてしまいました。

ちょっと怖くなってきたな。
ヴァリニャーノが言ったように、高い塔や階段に登ると、落ちた時に思わぬダメージを受けますから。

おそろしい作品だ……!

【MAGI~アマゾンプライムビデオで放映中

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】
アマゾンプライムビデオ『MAGI』
公式サイト

 



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