葛飾北斎の描いた第六天魔王/wikipediaより引用

織田家

なぜ信長は「第六天魔王」と呼ばれたのか? 売り言葉に買い言葉が現代へ

「我は第六天魔王・信長なり!」

どこかのゲームや漫画に出てきそうな織田信長のセリフ。

実は、売り言葉に買い言葉の末に思わず出た一言だった――という事をご存じでしょうか?

信長の残虐性を一語で表すこの「第六天魔王発言」。

現代のサブカルチャーにおいて、もはや人間をやめちゃったかのような印象すらありますが、実際の彼がそんな人物でないことは、足跡からしてわかることかと思います(以下に参考記事)。

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本稿では、この発言をめぐる経緯について振り返って参りましょう。

 

第六天魔王=他化自在天

まず、第六天魔王とはどこのどなたなのか?

「六」があるなら「一から五」もあるのか、だったら「六番目」ってあんまり偉くないんでは……などといらぬ心配をしてしまうこの御方、別名を「他化自在天」とおっしゃいます。

我々人間の住む俗世に一番近い天界、欲天の最上階である第六天にお住まいの神様(天)で、欲天では一番偉い方です。

ちなみに第一~五の下の階層には、閻魔大王や弥勒菩薩、帝釈天など、有名どころの神様がたくさん住んでいらっしゃいます。そのさらに下が私達の住む俗世ですね。

でも彼は「天」ではなく「天魔」です。なぜ?

それは第六天魔王の別名である「他化自在天」が表す彼の一風変わった性質によるものです。

他化自在天は「人間の望みを叶えたり快楽を与えて、それを自在に自分の快楽とする事ができる」神様で、趣味=仕事という全くうらやましい……、人間的にもありがたいことこの上ない神様です。

宝くじが当たったり、美人と付き合えたり、どう考えても遅刻しそうだったのに今日に限って信号が全部青で滑り込みに成功したり。

金運、恋愛運、学業運や仕事運(?)など、人間のありとあらゆる願いのほぼ全てに御利益のある方で、東日本、特に関東には「第六天神社」などの名前で神社もたくさん分布しています。

 

欲を否定する仏教の教えがいつしか……

夢を叶えてくれる素敵な第六天魔王様。

どうも、人間をどこまでも増長させる甘やかし体質がいけなかったようで、基本、人間の欲望を否定する仏教にあっては、彼の仕事の全てがもうダメとなります。

「この仏敵が!」と人間の僧侶達から罵られ、「人間の望みを叶えてあげるよ!だって人の喜びが俺の喜びだから!」のはずだった彼のキャッチフレーズは「人間を唆して世の中を混乱させてやるぜ!」に変わってしまいました。

彼は当時の武士の教養の一つであった「太平記」などにも登場しており、後鳥羽上皇を唆して【承久の乱】を起こさせるという、嫌な役回りを与えられています。

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でも、一応人間よりは悟りに近いからこそ天にお住まいの彼を、より下の階層に住んでいる我々が「仏敵」と罵るとはこれいかに……。

 

 信長が自ら名乗ったことなど一度もない

本題へと参りましょう。

なぜ「第六天魔王」が信長公のニックネームとなるに至ったのか。

実は信長の第六天魔王発言、日本に残る当時の書状や日記、歴史書などには記載がありません。敵には「天魔!天魔!」と言われていたようですが、自分から名乗ったという記録はどこにもないのです。

ではどこにこんな事が記されていたのかというと、当時日本にキリスト教を広めるために来日していたイエスズ会宣教師ルイス・フロイスが、日本布教長であったフランシス・ガブリエルに宛てた日本の情勢などを記した書簡の中にこのことが書かれてありました。

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その内容を抜粋しますと……。

武田信玄が遠江と三河に来襲する前に面白いことがありました。

信玄が信長に書状をしたためた際に、調子に乗って自分の名をテンダイノザス・シャモン・シンゲン(天台座主沙門信玄)と署名したのです。

これに対して信長は、ダイロクテンノ・マオウ・ノブナガ(第六天魔王信長)、つまり仏教に反対する悪魔の王と署名して返しました」

※ルイス・フロイス書簡を意訳

さすがイエスズ会宣教師。

日本史上に燦然と輝く戦国武将、武田信玄と織田信長のやり取りを「面白いことがありました」ですって。書き方が他人事すぎて逆に面白いです。

所々端折ったり意訳したりしましたが、ルイス・フロイスによる信長の第六天魔王発言に関する書簡の意味は大体こんな感じです。
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