戦国大名と国衆 (角川選書)

歴史書籍 真田家

殺伐とした戦乱にゾックゾクする!書評『戦国大名と国衆』著:平山優

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書評『戦国大名と国衆』
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今、時代が求める武士の像とは?

歴史好きの友人と語ると、世間がプッシュしたい歴史像と、本当に知りたい像が違うことが話題にのぼります。

「日本人は昔から礼儀正しくて優しかったとか、いいって。そういうの、もういいから」

そんなニーズに応えてくれる本を探しあい、報告することがありまして。

呉座勇一氏の『応仁の乱』とか。

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亀田俊和氏の『観応の擾乱 - 室町幕府を二つに裂いた足利尊氏・直義兄弟の戦い』とか。

高野秀行氏と清水克行氏の『世界の辺境とハードボイルド室町時代』とか。

忘れてはならない、桃崎有一郎『武士の起源を解きあかす――混血する古代、創発される中世』とか。

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こういうときの合言葉が、これです。

「『マッドマックス』感ある歴史の本で、なんかいいのない?」

「この間読んだアレ、火炎放射器を持ったモヒカン男が出てきそうな日本史本で熱かったで!」

 

なんで『マッドマックス』か?

というと、もう美しき武士道、整然とした歴史には飽き飽きなんですよね。

だからこそヒャッハー感に溢れたものを欲してしまう……禁断症状かもしれないんですな。

『真田丸』に熱狂的な目線を向けたファンの中にも、こういう考えの人は結構いると思いますね。

真田昌幸が裏切りを行うたびに、ガッツポーズをしてしまうタイプです。

 

リアル戦国は複雑な世界だった

そんな『真田丸』の世界を、歴史の裏付けをもって楽しめるようになるのが、本書です。

『武士の起源を解きあかす』を読んでいる時も痛感しましたが、こんな時代に生まれたくない……それに、戦国大名って大変なものだなと。

本書についてちょっと触れておきますと、全国の国衆を網羅するものではありません。これは『全国国衆ガイド』にゆずりましょう。

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あくまで本書は、平山氏の専門である武田氏を中心とした範囲です。

本書を読んでいくと、武田信玄や武田氏へのイメージが変貌してゆきます。

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『信長の野望』ですと、武田氏の支配地域は、一色で塗りつぶされています。

ステータス画面でズラリと並んだ家臣たちは、命令をすれば素直に言うことを聞いてくれるはず。謀叛を起こすような家臣は、それこそ特別な松永久秀みたいな奴だけでしょ、という意識があるはずですが。

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実際はそんなに、甘くない。

ゲームと比較すればそりゃそうだ、と言える話なのですけれども、ともかく複雑。

むしろパズルやモザイクのように、国衆がいる上に大名が存在する――そんな構図が見えて来ます。

そしてややこしいことに、「国衆とは、こういうものばかりなのです」とは言い切れない!色々なパターンがあるのです。

武田なんて認めないと抵抗しつつも、従うもの。

武田とがっちりと手を組み、むしろ後ろ盾にしつつ、勢力拡大を狙ったもの。

戦って抵抗しようとしたものの、うやむやになりつつ、結局従ったもの。

こうしたモザイクのような国衆の分析を見てゆくと、武田氏滅亡への過程も違ったものに見えて来るのです。

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そんな単純な話ではない。

戦国時代は複雑で、混沌としているのだ、と。

それがわかり、納得できる。

そんな歴史観の転換を噛みしめられるだけでも、本書は絶対に読むべきものだ、歴史書とはこうあるものだと勧めたくなるのです。

読み終えた後は、混沌たるモザイクが『真田丸』の世界観を構成していたのだとスッキリ!

視聴者から信頼できない『チャーミングだけどなんなんだコイツは?』と散々突っ込まれていた真田昌幸。

彼は別に異常性のある性格でも何でもなく、国衆としてはごく当たり前であったということが理解できるようになります。

むしろ、ああでなければ生き残れなかったのだと。

本書を読んで納得できたことは、東北戦国史後半部分でした。

本書は東北地方の戦国史には、まったく触れておりません。

それなのに、どうしてそこまで話が飛躍したかと言いますと、豊臣政権の台頭に対して東北大名が取った行動パターンが、武田氏に対する国衆のものと似通っている部分があると感じたからです。

東北最大野戦国大名である伊達政宗の行動こそが、あるべきものだと考えられがち。

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しかし、むしろ政宗は特異であり、秀吉の権力をうまく味方につけてこそ大きなチャンスだと思う大名もおりました。

松前藩祖・蠣崎慶広がその一例です。

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【国衆と大名】の関係性が、そのまま【大名と関白秀吉】になったかのようです。

どれが正解かなんて、見本も答えもない。

それを後世の人間が「プライドがない」だのなんだのと、批判することそのものが筋違いなんですね。

彼らは生き延びるため、自分の考えた最善の道を探っていたのだ――そう納得できます。

私は専門家でありません。

その理解が正しいかどうかは、そこはわかりません。あくまで私の感じたことに過ぎません。

それでもそう感じられたのは、本書を通じて戦国を生きた人々の思考ルーチンが理解できたからではないかと思います。

戦国時代を深く知りたい。

『真田丸』をもう一度、より深く丸かじりして味わいたい!

そんな人が本書を手に取らないことはありえないのではないか、そう薦めたい一冊です。

文:小檜山青

【参考】
『戦国大名と国衆 (角川選書)』(→amazon

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