宇土古城址(中世宇土古城)千畳敷への虎口/photo by Simasakon wikipediaより引用

敗者たちの城?だがそれがいい『戦国廃城紀行』で麒麟がくるを二度堪能!

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城は変化する、そして人の意識も

本書は初版から十年を経て、文庫化されました。

その間の変化が、追記されています。

自治体による調査が始まったこと。

訪問者が増えて、案内板が増えたこと。

市民講座があること。

城主がゆるキャラになったこと。

例えば小西行長をモデルとした
うとん行長しゃん
なんかもその一人。

戦国ファンからしてみれば「どうせひこにゃんあたりの二番煎じだろ……」と受け流しそうになる場面です。

ところが本書を読んだあとですと、これがだいぶ変わってくる。印象が違ってきます。

西行長がキリシタンであることから、どれだけ悲運の目にあったか。

銅像すら破壊されそうになったかを考えると、感慨深いものがあるのです。

同時に、小西行長の宇土城の章からは【人の意識はそうそう変わるものではない】ということを痛感させられました。

宇土古城址(中世宇土古城)千畳敷への虎口/photo by Simasakon wikipediaより引用

キリスト教の禁止から時代がくだっても、銅像建立の際には脅迫事件があったほど。ぞっとするような思いすらあります。

敗者というだけではなく、宗教ゆえに憎まれてきた小西行長。

その憎悪のなまなましさには、本当に驚かされます。

幻のようであったそんな行長が、ゆるキャラになって愛嬌を振りまくーーこれはなかなかすごいことではないかと感じてしまうのです。

 

戦国大河のお供にも

本書は『麒麟がくる』の予習にもぴったり、かつ『真田丸』の復習にも最適。

石田三成や大谷吉継、豊臣秀次といった人物も扱われています。

『真田丸』は最新の学説を積極的に取り入れており、中でも秀次の死は印象深い描写でした。

あの描写をふまえてから本書を読むと、秀次像がより身近に迫ってきます。ドラマでは、人は良いのだけれども武将としての器量はそこまででもない、そんな好青年像が窺えたものです。

彼の残した城からも、その像と近い青年が浮かび上がってくることが、本書からはわかるのです。

最新の学説や研究成果、発掘からわかってきた史実をふまえつつ、フィクションにも寄り添うような本書は、まさしく戦国大河のお供に最適な一冊。

たしかに文庫だけあって、写真は全て白黒、かつ小さいし、実用的なお城ガイドならば、他にオススメできるものはあります。

キンドル版なら大きくして読めます、しかもスマホですぐに!

しかし本書は、上記のようなカラー図版入りかつ実践的なものとはまた違った魅力があるのです。

敗者の城をたどることで、見えてくる歴史の陰影。

そんな陰影を引き立てる、味わいのある名文と筆者の観察眼。

城に到達するまでの、一筋縄ではいかない道のり。

変わりゆく人々の歴史意識や、城をめぐる状況。

『麒麟がくる』の放送に合わせて、一冊、ゆるりと味わってみてはいかがでしょうか。

戦国廃城紀行: 敗者の城を探る (河出文庫)
→Amazon Kindle版
→Amazon 文庫版

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文:小檜山青

著者の澤宮優氏(@twitter)からのツイートもいただきました^^

【参考】
戦国廃城紀行: 敗者の城を探る (河出文庫)
→Amazon Kindle版
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