結局、誰が一番強いのか?
戦国ファンなら誰もが気になる、そんな無茶な要求に応えてくれる一冊が
『戦国武将ナンバーワン決定戦(宝島社)』(→amazon)
である。
歴史好きな34人が【統率力・情報力・軍事力・人格力・統治力】などについてそれぞれ得点をつけてランクをつけたというもの。
この手のランキングは常に行われているので、とくに目新しさはないが、監修者の本郷和人・東大史料編纂所教授が、非常におもしろいシュールな突っ込みやボケを展開されている。
例えば、統率力の1位は毛利元就。
これに対する本郷教授のコメントは「無能な武将を率いて大事をなすのも、また統率力だね」
毛利配下の武将たちとも苦笑していることだろう。
インタビューでも、本郷教授は戦国武将の名前が読めない歴史研究者もいると冒頭から切りかかる。
「俺は東大教授だから知識がすげえ」と自慢でもすると思ったらさにあらず、
「歴史知識を得るなら、実はウィキペディアで充分なんです。必要なのは合理的に考えること」
として、ウィキペディアだけをつかって里見家断絶の真相の謎解きをするなど、”本職”の歴史研究者がみたら悶絶しそうなことを展開する。
そして、「歴史を考えるのは漫才のボケとツッコミに似ているんです。何にも考えないで、すーっと歴史を眺めてしまうのは駄目なんです。皆が当たり前と思っているところに適切なツッコミを入れて、ボケ(問題点)を呼び出さないと。そこが大事なんですよ」
と〆る。
歴史研究者が堂々と「Wikipedia」で調べましたよと言える、このすごさ。
また、歴史はボケとツッコミの比喩は軽いようで実に含蓄に富んでいる。
千利休をさらにこえる茶の名人とされながら、招いた利休を落とし穴におとすなどの伝説をもつ「丿貫」(へちかん)のような本郷教授の冴えが楽しめる。
ちなみに、本郷教授が選んだベスト1の武将は「京極高次」だった。
嫁さんのおかげで出世でき、「ほたる大名」と揶揄された武将である。
その理由がさえている。
「あのヘタレっぷりがなんともね。(略)関ヶ原の戦いで、あともう一日頑張れなかった高次のトホホぶりがいいよね」だそうだ。
ちなみに2位は本多正信であった。
ところどころにちりばめられた本郷教授の研ぎ澄まされた自己ボケ&ツッコミを読むためだけでも買いの1冊である。
【参考】
『戦国武将ナンバーワン決定戦(宝島社)』(→amazon)