二条城は超画期的だった!? 六角親子を倒し、浅井長政に裏切られるまで

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南近江のバランスが崩れ、さぁ、パワーゲームの開始です! 

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信長は京への道を確保しました/©2015Google,ZENRIN

信長の強い押しによって偏った近江のパワーバランス。これを一体誰が押し戻そうとするのか。

と、その答えの前に、南近江攻略により地域で起こった三つの大きな変化をマトメておきましょう。

一つ目は、尾張から南近江までを支配する織田家の広大な国ができたこと。

二つ目は、いつでも上洛可能な国を織田家が手に入れたこと。

三つ目は、幕府末期の足利将軍家を支えてきた佐々木源氏の末裔・六角家が滅亡したこと。

この3つの変化に不都合を感じる、もしくは実際に不都合を受ける者たちをリストアップすれば、それが「パワーバランスを押し戻す者たち」になります。

一つずつ見て参りましょう。

 

まず一つ目で不都合を感じる勢力は、織田家の領土と国境を接する国々の領主たちです。同盟関係にある徳川と浅井を除けば東は武田家、北は朝倉家、南は伊勢の北畠家や伊賀国の国人衆、そして京の都のある山城国と大和国より西の三好家です。

大国と隣接している事態ほど緊張関係を生む要素はありません。しかも美濃、南近江と積極的に侵攻し、領土を拡大してきた織田家と隣り合っている状況です。何の備えもしないのはまさに「平和ボケ」でしょう。

徳川家のように背中合わせの相互不可侵同盟を信長と結んでいればいいのですが、そうでない国は背後を突かれる可能性が高くなります。

三好家や北畠家のように、織田家を正面に迎え撃つだけならまだ戦略が立てやすいです。が、織田家の領土を背にして、全く違う方向で戦っている国にとって信長の領土拡張は特に脅威です。

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©2015Google,ZENRIN

この時点で信長に対して背中を向けて戦っているのは甲斐・信濃の武田家、大和の松永久秀、そして越前の朝倉家です。

武田家は早々に婚姻政策と東美濃を緩衝地帯化しているので、信長にとって喫緊の脅威ではありません。松永久秀は三好三人衆相手に大和で孤立していますが、信長がまだ尾張統一する前から懇意にしており、織田家の進出はむしろ大歓迎です。

ということで越前の朝倉家だけが何かとマズい状況にありました。

彼らは信長と何の連携も同盟もなく、背後を無防備にして、北陸の一向一揆勢や、若狭、敦賀の武田家と戦っているのです。若狭、敦賀方面では浅井家が緩衝地帯として一枚噛んでいますが、越前の東部は美濃の北部と国境が接しており、万が一、浅井家が完全に信長派となってしまえば、東西から越前を挟まれるカタチになります。

 


さすがにこれはマズい! 凡将・義景でも対策します

これには当主の朝倉義景がいくら凡庸とはいえ、容易ならざる事態だと分かります。南近江攻め直前に足利義昭と信長が発した招集命令に応じなかったのも当然。

また義景は信長の美濃攻略にあわせるように、これまでユルい従属関係にあった若狭の武田家を完全に属国化するため、当主の武田元明を越前に拉致して、軟禁状態に置いてしまいます。浅井家のことをまだ信じているとはいえ、越前を両翼から挟まれるリスクの回避に、若狭を完全掌握する動きを早めたのです。

そんな朝倉家の強烈なメッセージも浅井家、特に浅井長政には伝わりません。近江でパワーバランスを取る役割の浅井家が、外から織田家を招き入れて一方(六角家)を滅ぼしてしまったのですから。

朝倉家の若狭侵攻が気が気でない国人衆が反信長派になびいて、ICHIメーターも「4」に上がりました。

二つ目に不都合を受けるのは、現時点で京の洛中を押さえている勢力、すなわち畿内の三好三人衆(三好長逸、三好政康、岩成友通)でしょう。

どうしても戦国大名=京を目指すというイメージが先行してしまい、他の戦国大名が一斉に信長の上洛に反発するんじゃないかと考えてしまいがちですが、決してそのようなことはありません。

戦国大名でも、浅井家のように自国の安寧が第一な大名が大多数なのです。一地方の小領主出身で、上洛して将軍の政に口を出そうと考えたのは、信長の前には三好長慶とその後継者一族の三好三人衆くらいでした。

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なお、三好家の畿内支配は三好長慶によって果たされました。

彼の死後、後継ぎの三好義継を追放した三好三人衆と松永久秀によって畿内支配は何とか保たれましたが、将軍足利義輝を殺害したり、義昭には近江に逃げられたり、過激な三好三人衆の支配に不穏な空気が流れていました。


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