歴史ドラマ映画レビュー

戦国時代の殺伐さが生々しい 映画『戦国自衛隊』で学ぶ乱世のリアル

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川中島に戦車&ヘリコプターをぶち込むセンス!!

本作最大の見せ場は、武田vs上杉でお馴染み「川中島の戦い」に自衛隊を加えた合戦です。

ワーワー!という声に重なる機関銃の乱射音と、法螺貝の音を聞くだけでも、テンションがあがってしまいます。

人馬の入り乱れる合戦シーンは、最近の映像作品ではあまり見られないド迫力!

このテーマなら、見たいのはやっぱりこれですよね。

爆発に次ぐ爆発がある川中島は本作だけ!

ここで素晴らしいのが、現代兵器を相手にしても、怯むことなく冷静に対応策を立てていた武田側です。

風圧で飛ばされそうになりながらもヘリコプターに乗り込み、操縦士を討ち取る根性。

遮蔽物を利用した鉄砲隊の一斉射撃。

馬と忍者が一体となった奇襲攻撃。

中でも戦功一番は、ヘリコプターにしがみついて潜入し、乗務員を殺害して墜落させた武田勝頼(真田広之)でしょう。

映像化作品の中で、個人的戦闘力ナンバーワンの勝頼ではないでしょうか。

というか、彼が勝頼だったってことを知らずに見ていた方もおられるかもしれません。さほどに身体能力が高いのです。

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しかし、戦国時代に適応した伊庭(千葉真一)もまた、凄まじきの一言でして。

彼は最終的に、銃を捨てて騎射で敵を倒し、武田信玄(田中浩)の本陣に乗り込むという荒技を見せ付けます。

「お前はその技をどこで身につけたんだ!」と突っ込みたくはありますが、千葉真一さんなのでなんとなく納得させられます。

戦国時代でも生き抜ける現代人はせいぜい千葉さんくらいだと、私たちは思い知るべきです。あっ、本郷猛さんもかな。

かくして起きた、信玄と謙信の一騎打ちならぬ、信玄と自衛官の一騎打ち。

伊庭はなんだかんだで最後はピストルで信玄を射殺してしまいます。

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その次の瞬間、身体能力が異常に高い武田勝頼が再登場!

馬上から槍を投げ、そのまま馬からジャンプしながら斬りつけるという、スーパーアクションを見せ付けます。

この勝頼も討ち取った伊庭は、信玄の生首を抱えて勝ちどきを。

何がすごいって、最後は伊庭の現代人離れしたスーパーアクションと精神が勝敗を決したところですね。

戦を制したのは現代兵器じゃないのです。

映画のラストに近づくにつれ、ヘリも戦車もない伊庭は価値がないと断じられてしまいますが、ここまで強かったら十分に猛将として通じるでしょう。

そしてこの川中島は、転換点なのです。

ここから「戦国自衛隊」ではなく、むしろ「伊庭の野望」にすりかわってしまう、と。

「主人公たちは現代に戻る方法を模索し続けるんじゃないの?」と思っていた視聴者は、おいてけぼりにされます。

なんと伊庭は戦国に適応しすぎて、ここで頑張るつもりマンマンになってしまうのです。

しかし肝心の戦国時代側は、伊庭を必要としないわけで……、この先、悲劇が待ち受けています。

 

現代と戦国の違い それは兵器ではなく精神では?

最初に同作品を見たとき、ともかく派手なアクションや戦闘シーンに興奮したものです。

しかし、改めて振り返ってみると本作は「現代と戦国の精神性の違い」の描き方が秀逸だと思いました。

生き残るために戦国時代に適応していった自衛官は、現代人としての精神性を失っていきます。

そこにいるのはもはや現代人ではない。かといって戦国時代の人間でもない。

異物と化してしまうのです。

「昭和に戻ったら人を殺せない。戦争なんてできない!」

だからここに残る!とまで言うようになってしまうのですね。

そんな彼らが戻ってしまったら、それこそ悲劇が待ち受けていることでしょう。

これは今考えてみると、かなり重大深刻なテーマかもしれません。

タイムスリップはできないけれど、価値観や倫理観が戦国時代のような場所は現代の地球上にも存在します。

ごく普通の若者がテロ組織に勧誘され、紛争地域へ向かっていく。

そこで斬首動画を撮影し、捕虜を奴隷にしてしまう……本作を見返して、そんなニュースを思い出しました。

豪快なアクションを笑い飛ばしていたはずが、人間の精神暗黒化を見てしまうという、なかなか奥が深く、人の業を描いた昭和の作品。

CGなんぞなくても心臓が締め付けられるようにドキドキして、その世界の中に引き込まれてしまうんですね。

序盤はトンデモぶりに笑い転げ、中盤から真顔になり、最後は戦慄――。

『戦国自衛隊』はトンデモ歴史映画の魅力と奥深さがギュウギュウに詰まった傑作ではないでしょうか。

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著:武者震之助

【参考】
千葉真一/夏八木勲/斎藤光正 (監督)『戦国自衛隊』(→amazon

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