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元凶の殿様がキラキラしている
本作の問題点を挙げるとすれば、元凶である伊達重村が大変キラキラしていて、そこにいるだけで涼風が吹いてきそうなプリンスぶりを発揮しているという点でしょうか。
伊達重村を演じるのは、仙台出身のフィギュアスケーター・羽生結弦選手です。
本職の役者ではないから演技がイマイチ、ということはありません。
むしろ反対。演じる競技の選手だけあって、呼吸の仕方までしっくりと来ています。
それが他の役者とは異なる雰囲気を出していて、殿様らしくてよい効果を出していました。
しかし、本作の前半で描かれているのですが、仙台藩の領民が重税に苦しんでいるのは、重村の責任も大きいのです。
本人の自己満足にしかつながらない官位を、薩摩藩主に対抗するためだけに欲しがり、そのために金が必要となったのです。
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憎むに憎めない殿様の気品
殿様がそんなことをしなければ、ここまで生活は苦しくないはず。
ところがいざ現れてみたら、その元凶がキラキラしたプリンスぶりではありませんか。
憎むに憎めない――しかも彼は反省の言葉も口にするんですよねえ。
殿様の気品というのはそういうもので、そこがリアルかもしれませんが、殿様に感じていた怒りをどこにもぶつけられないなあとちょっと困惑していまいました。
これは決して羽生選手のせいではない。
むしろ、彼の演技は素晴らしいのです。
★
本作は人々の忍耐や工夫、無私の献身に感動するだけではなく、江戸期のシステム限界点を考えるうえでも勉強になる一本だと思います。
チャンバラや合戦がなくとも、有名な人物が出てこなくとも、面白い時代劇は作れます。
平凡な人々が成し遂げる偉業を静かに描いた、しみじみと感動させられる名作です。
原作の併読もおすすめします。
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著:武者震之助
【参考】
原作『無私の日本人 (文春文庫)』(→amazon)
映画『殿、利息でござる』(→amazon)