お好み焼きのルーツ

歴史書籍

お好み焼きのルーツは大阪でも広島でもない? 書評『お好み焼きの物語』

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東西における食文化の違い、他にも以下のようなものがございます。

・納豆への嫌悪感が強い(※山形名物「納豆汁」を説明した時の、あの顔は忘れられません!)

・ネギがほぼ青いところしかない

・ところてんの味付けが黒蜜主流(※東日本では辛子酢醤油が主流、四国はだし汁はもあり)

・圧倒的に牛肉の存在感が強い。牛すじが簡単に買える(※東日本で牛肉優勢なのは、芋煮会で牛肉を大量消費する山形県のみ)

・蕎麦よりうどんの存在感が強い

・つけ汁の色が全体的に関東よりも薄い

そして最も重要な点がこれ。

「食の本場は、関西やで!」という自信です。

彼らの端々に現れる、それが当然やんか、という自負。そんな大阪人が関東を罵倒しがちなのが「うどんや蕎麦の汁」ですね。

「東京の真っ黒けのうどんなんか食えるかいな!」

「あんなん醤油地獄や!」

「ありえへん!」

何も、そこまで言わんでも……と思うのは私だけではないでしょう。

薄口か、濃口か。そういう醤油由来の違いです。

しかし、プライドってすごいなあ、と素直に感動もしました。地元の食を愛する。それは決して悪いことだとは思わないからです。

ただ、そのプライドの源泉は何なのか?

という疑問があって、これが明治維新にまで遡ることができると本書で確認できました。

ざざっとまとめると、こうなります。

関西:日本古来の和食文化が残った

関東:幕末の戦乱で荒れる。江戸っ子だった旗本の多くが徳川慶喜と共に静岡へ。代わりに薩長土肥が東京に移住。洋食、中国料理も入り込む。和食が崩壊と衰退し、混沌に陥った

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これは歴史を辿れば、納得できるところです。

当の江戸っ子も、将軍様のお膝元が無茶苦茶だと不満を抱いていたものでした。

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娯楽で言えば、落語なんかもそうですね。

明治以降、関東の流儀は薩長出身者好みの演目に変わっていったとされています。

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しかも、ここで新たなツッコミどころも生じます。

西洋料理です。

イギリス人が自嘲的に嘆いた「それをイギリスから学ぶってどういうことなの?」という点。

言われてみれば、カレーにせよ、肉じゃがにせよ、ウスターソースにせよ、イギリス由来です。

しかし英国は、お隣のグルメ大国フランス人からバカにされまくるほど、食においては後進国とされております。

そんなフランスに憧れを抱いていたのが、江戸時代後期から幕末にかけての日本。ナポレオンがブームになるほどでした。

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もしそのままナポレオンフィーバーが続いていれば、フランスから洋食が取り入れられのではないでしょうか。

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しかし、普仏戦争で大敗したナポレオン3世は退位。

フランスは明治政府のお手本とすべき国家から転落してしまいました。

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かくして、

・海軍と産業はイギリス

・陸軍と政治制度はプロイセン

あたりがお手本となったわけです。

 

模倣から始まる文化もある

ウイスキーが注目を浴びるきっかけも、背景にこうした国際情勢がありました。

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しかし、しばらくの間、国産ウイスキーはイミテーションであり、ただのアルコールに着色した低級の海賊品。

ウスターソースもそうだったとは、驚かされます。

本書で解明されるウスターソース初期の歴史は、このイミテーションウイスキーと似ている、ナンチャッテ品そのものなのです。

そしてこれは……お好み焼きも実はそう!

結論から書くと「なんじゃそりゃ???」となりますが、

【お好み焼きも、そもそもはなんちゃって洋食。だからなんちゃってウスターソースをかけて食べる】ということになるのです。

それが東京ルーツの証拠にほかなりません。

作り途中のもんじゃ焼き(このあと野菜と汁をグシャグシャに混ぜて、しばし焼いてから食す)

 

「お好み焼き」から見えてくる、近代日本のルーツ

本当に驚きました。

お好み焼きの歴史だけではなく、日本の食文化、近代史まで見えてきます。

それとともに、冷静になって考えたいことがあるのです。

今、テレビでは「なんちゃって和食を成敗する!」というような番組が流たりします。

カリフォルニアロールのような、海外でアレンジされた和食は邪道だ、まずい、卑劣だと半ば小馬鹿にするかのような、叩きと申しましょうか。

こんな番組は、もう放映されるべきではないとしみじみ思いました。

明太子パスタ、冷やし中華。このあたりは、それぞれイタリア人や中国人からすれば、かなりとんでもないものになるそうです。

中国にはそもそも、冷食は体に悪いから極力すべきではないという伝統的な考え方がある。

「なんでわざわざ麺を冷やすの?」と、なってしまうそうでして。

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そしてこの中には、お好み焼きだって含まれてしまうのです。

だって、洋食イミテーション庶民版から始まったんですから。

江戸時代以前の和食にせよ、羊羹や饅頭にせよ、ルーツは中国大陸。そもそも稲作だって中国大陸由来です。

本書から学べることは、実に多い。食文化の歴史は本当に難しい。

以下の条件が揃ったら、真のルーツを探るのは最難関となりえます。

・明治以降のもの

・外国ルーツのもの(明治以降はほぼこればかりですが)

・企業間競争が存在し得るもの

こうした条件をクリアして扱うとなれば、以下の条件は回避すべきです。

・真贋論争を入れ込み、ここだけがルーツと断言する

・日本人だけが関わったとする

最低でもこの2点をクリアできなければ難しい。

明治以降の食文化を扱うとなれば、それはもう細心の注意を払い、この筆者以上の資料を集め、デジタル化するくらいの気合がないとできないと痛感しました。

その理由は?
筆者が嘘を暴いてしまうからです。

この慧眼を前にして、嘘をつけるものなどいないでしょう。

それだけではない。食文化とは、私たちの血肉に刻まれているものだと痛感したのです。

大阪で出会った人々の、あの揺るぎない自信は何だったのでしょうか?

お好み焼きの知識には過ちがあったわけですし、そこまで調べていたものであったとも、考えにくい。

大阪で生まれ、育ち、食べて来た。大阪の食文化が血肉になった。そういう過程で、伝わってくるものがあるのかもしれない!

食べるということは、生存に関して最も原始的で、本能に基づくものです。その歴史となれば、血肉に染み込むものではないでしょうか。

それを偽れば、ともすれば痛い目にあいかねない。そう痛感できた、斬新な読書体験でした。

読書体験でありながら、極めて美味!

素晴らしい一冊。

ごちそうさまでした。

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文:小檜山青

【参考】
『お好み焼きの物語』近代食文化研究会(→amazon

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