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チンギス・ハンやエリザベスは何を食べた?実践『英雄たちの食卓』

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食卓の「格差」

巻末のスペシャルコラムもみどころです。

ジャンヌ・ダルクが初めて口にしたであろう、貴族の肉料理について読んでいると唸らされました。

歴史的なエンタメ等で出てくる料理は、たいていがその国の上位数パーセントだけが味わえる特別なものであったはず――それを久々に思い出させてくれるのです。

この感覚は、『ベルサイユのばら』でオスカルがロザリーの出したスープにショックを受けて以来です。

珍しいハーブで香り付けた羊肉を味わい、ジャンヌは何を考えたのだろう……と、こんなふうに想像できるのは、本書ならではの強みですね。

味覚という観点から歴史や英雄を考えられる。我々凡人にも辿れる軌跡であります。

 


スパイスとハーブの可能性

本書は割と再現しやすいレシピを掲載しているものの、難易度には差があります。

食材の入手難易度も様々で、スーパーで買えるもので間に合うものもあれば、チョウザメの肉というなかなか難しいものまで。時代のある一点から、スパイスとハーブが頻出することにも気づきました。

そう言えば世界史の授業で【スパイスの値段は同じ重さの黄金に等しい】ということを習いましたよね。

今では当たり前になってしまったスパイスも、かつてはステータスシンボルであったことが実感できます。

これみよがしに何種類もスパイスを使う料理は、当時の感覚でいえば金粉を振りかけているようなものだったのでしょう。

食の価値の転換点を、自宅の台所で実感できる。

そういう、すごい一冊だと思います。

恥ずかしながら実際に作ってみた料理もあります。同時にご報告させていただきましょう。

 


カトリーヌ・ド・メディシスの婚礼フィレンツェパスタ

あの大金持ちで、フランス料理に変革をもたらしたカトリーヌのパスタです。

どれほど特殊なのか?

と思っていたら、現代人からするとそうでもないんですよね。

本書でも原材料費はおそらく最低ラインではと思うほど、あっさり揃います。スーパーで材料がコンプリートできる枠なのです。うーん、意外。

このパスタの特徴は、スパイスと砂糖をふんだんに使うこと。現代人からすれば何でもありませんが、当時は貴重な食材です。

メインディッシュでもないパスタに、ここまで貴重なスパイスをバサバサかけることに、当時の人は度肝を抜かれたのではないでしょうか。

ここでハタと気づくわけですね、当時のスパイス入手難易度に。

ああ、現代人ならば簡単だけど、昔なら私にこんなことは許されなかったんだなぁ、と。

カトリーヌ・ド・メディシスの婚礼フィレンツェパスタ

実食してみますと、ありそうでありえない不思議な味でした。

ペンネにからまるスパイスが、複雑な味わいを為しています。

シナモンと砂糖を使っているため、京都銘菓「八つ橋」を思い出してしまうかも。

現代人の食べ慣れた味とは違うものの、これもありだなと思える逸品です。

なかなか、シンプルなようで奥深いんですわ。

お次はエリザベス1世!

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