悲鳴嶼行冥(鬼滅の刃・岩柱)

『鬼滅の刃』15巻/amazonより引用

この歴史漫画が熱い!

鬼滅の刃 悲鳴嶼行冥の葛藤 古典的ヒーロー像を踏襲したキャラだった

興行収入もコラボ製品も、とにかく絶好調の『鬼滅の刃』。

しかし、そんな中でもグッズは売れ残り、人気投票でも順位が低迷してしまう気の毒な人物がいます。

◆絶好調の鬼滅映画、なぜか大量のグッズ在庫が発生 その背景があまりに切なすぎる(→link

◆『鬼滅の刃』一番不人気な“柱”といえば? コラボ商品が売れ残る某キャラ…(→link

物語上では8月23日に誕生日を迎える、岩柱・悲鳴嶼行冥(ひめじまぎょうめい)です。

彼はなぜかくも不人気なのか。

その理由を考えると、個人的にはひどく単純な結論に落ち着いてしまいます。

見た目があまりに怖い!

大柄で、白目で、涙を流していて、なんだか恐ろしいぞ……。

と、読者の年齢が低ければ低いほどそうなるのではないでしょうか。

それでも彼は最強であり、魅力的で、伝統的でありながら斬新な一面を持っています!

今回はそんな彼のことを歴史的に考察してみました。

『鬼滅の刃』15巻(→amazon

 


マッチョは噛ませ犬? どうしてそうなった?

悲鳴嶼行冥は、逆に意外性があるという意見もあります。

「パワー系でモーニングスター使い、しかも最強なんて、噛ませ犬かと思っていた」

「最強なのにいきなりやられて、そこから盛り上げるのかと思っていた」

「マッチョだし、最年長だし、イケメンでもないし。これでもかというぐらい、すぐやられそうだったのに」

いやいやどうして。冷静に見れば、彼には当初から強い要素が揃っていました。

◆体格

身長と体重があればあるほど強い。最強順位は、身長体重と比例します。ゆえに小柄なしのぶは工夫しております。

◆鈍器使い

「日輪刀」なのに鈍器って……。しかも手斧と棘鉄球とか……一体どういうこと?

そう突っ込みたくなるかもしれませんが、合理的なのです。

鋭く研いだ刀は、わりと簡単に折れます。本作でも破損させている隊士が多いものでした。

日本刀が実戦で用いられたのは、実はそこまで期間が長いわけでもありません。

日常的に暴力と隣り合わせの戦国時代は、むしろ鈍器や長柄武器を使う武士が多かった。

鈍器は、破損もしないし、リーチも長い!

堂々たる最強の武器なのです。

ただね……そこはフィクションだからさ。そんな当たり前じゃつまらないし、「刀」というお約束ってものがあるじゃない。

と、そう思われますか?

しかし、大正時代を生きている炭治郎であればどうなのか。

彼の返答を想像してみますと……。

「(当時、庶民が楽しんだ)講談では、大柄な僧形が強いのは、むしろ当然のことではありませんか?」

困惑しつつ、そんな風に語りそうな気がします。

私たち現代の漫画読者が大型プレイヤーに魅力を感じないのは、かつてのお約束が変化していて、それに慣れ切ったからのこと。

大正時代の視点からすれば、行冥にはモチーフとなったキャラクターがいて、かつ問題なく【最強枠】であると推察できるのです。

 


僧形の怪力 それは最強の証!

行冥は、初期段階では【剃髪している構想】だったと思われます。

大柄な僧形の柱――そこから途中で髪の毛が加えられたものと推察できます。

それでも厳つい外見ではありますが、日本も含めた東洋の伝統では、典型的な人気キャラの一つでした。

ここまで申し上げれば、その代表例も自ずと頭に浮かんでくるかもしれません。

そう、弁慶です。

源義経を守った武蔵坊弁慶は、例えば『勧進帳』など歌舞伎でも大人気の演目ですし、2022年大河ドラマ『鎌倉殿の13人』でもいい味を出していました。

※以下は弁慶まとめ記事となります

弁慶
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一致度が高いといえば『水滸伝』の魯智深あたりでしょうか。

“花和尚”という二つ名を持ちます。

この手のパワフルキャラの特徴は以下のようなところです。

・武器が鈍器(弁慶の場合は長刀)

・困っている人を助けて殺人犯とみなされてしまう!

・そのあと非合法組織に入ることに……

・人助けを好む慈悲深い性格

・怪力でともかく強い! マッチョ!

『水滸伝』は中国の古典的作品ですが、日本でも大人気でした。

かつては『三国志演義』と並ぶ双璧の人気を誇り、絵画、そして刺青の題材としても大人気でした。

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よろしければ

【花和尚 魯智深 鬼退治】

というキーワードで検索してみてください。

どれほど日本でも愛され、かつ鬼退治のシンボルであったか、理解いただけるかと思います(ただし、裸体画像が表示されますので各自ご注意を)。

横山光輝の漫画化も、実は『三国志』よりも先です。

1973年から1974年にかけては実写版ドラマにもなり、長門勇さんが魯智深を演じています。

つまり大正時代を生きている炭治郎たちからすれば、行冥は「まるで本物の魯智深だ! 絶対に強いはずだ!」となってもおかしくはないのです。

彼らからすれば「行冥が噛ませ犬」と現代人に誤解されていると知れば、唖然とすることでしょう。

破戒僧は日本のフィクションでもおなじみであり、本来最強枠で何の不思議もないのです。

『るろうに剣心』の悠久山安慈も有名ですね。

ワニ先生は、そんな日本人とフィクションの関係を見直す作品を描いているともいえます。

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