『るろうに剣心―明治剣客浪漫譚― カラー版3』/amazonより引用

この歴史漫画が熱い! 幕末・維新

『るろうに剣心』 神谷薫と神谷活心流を史実面から考察! ここがちょっと変?

1990年代に空前の大ヒット!

今なおアニメや実写映画版、ミュージカルまで、ファンを何度も魅了している『るろうに剣心』――。

今回はヒロイン・神谷薫とその弟子・明神弥彦、ならびに神谷活心流について、それぞれ史実面から考察してみました。

言うまでもなく本作はフィクションです。

本記事においては、あくまで「もしも史実から見たら?」ということで、辛辣な表現も混ざってしまうことをあらかじめご承知いただければ幸い。

緋村剣心やSNK問題については以下の記事に譲り、

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では、早速本題へ!

 

神谷薫の言葉遣いは?

神谷薫というキャラクターについて、まず確認したいこと。

それは彼女がリアルな明治初期の女性ではなく、連載当時(1990年代)のヒロイン像で描かれている点でしょう。

どういうことなのか、一つずつ見て参りますと……。

・明治時代の女性だから「女言葉」なのか?

薫について、オンライン辞書等の記事で「明治時代の女性らしく女言葉で話す」という記載を見かけました。

女言葉というのは難しいもので、実は人工的に作られたものが多い。

高貴な女性に仕える女官が使い始めた「女房言葉」(にょうぼうことば)。

遊郭の女性が話した「廓詞(くるわことば)」等が典型例です。

江戸時代を通して女性の話し方というのは、限られたの女性が話すものでした。

花魁たちが話す

「ありんす」

という言葉を、客が『女っぽいなぁ……そそるなぁ……いいなぁ……』と、うっとりするんですね。

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そうでない大半の人々は、女性であれば極度に過激な言葉を使わないとか漢語ではなく和語を使うとか、その程度の差だけで、男女差はほぼありませんでした。

江戸時代までは、地方によっても話し言葉がかなり違います。

幕末の京都では、全国各地の藩出身者が意思疎通できず筆談した――なんて逸話も残されているほど。

日本の言葉を統一し、かつ男女差もつけるべきである。明治以降にそう考えて生まれたのが「女言葉」で、女学生あたりがルーツとされています。

‪◆なぜ翻訳でステレオタイプな「女ことば」が多用される? 言語学者・中村桃子さんインタビュー(→link

神谷薫は明治維新より前、文久年間生まれと思われます。

そんな薫が、明治以降に生まれた女言葉を話していたとは考えられません。薫の娘や孫世代ならば、話していてもおかしくはないのですが。

では、史実に則した薫はどんな風に喋ったであろうか?

幕末生まれの江戸育ちの女性だと考慮すると、以下のような特徴が考えられます。

・主語は「おれ」でもおかしくはない

・幕末の著名人なら勝海舟の「べらんめえ口調」を思い浮かべるとよい

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・早口で聞き取りにくく「さしすせそ」がきちんと言えない

・短気で気が強い→江戸っ子は女性でもともかく短気だった

・ズケズケと反論し、叱ってくる→剣心はまだしも、弥彦相手にはゲンコツ飛ばしてもおかしくない

「あんたが三十路手前だって? そんなこたぁあるめえよ、おれをバカにするんじゃねえ」

「飯がまずいだって? 誰に向かって口聞いてやがる! 荷物まとめて出ていきゃがれ!」

剣心と出会い頭に、こういう喋り方をしていても不思議はないのです。

でも、こんな話し方をするヒロインに萌えられませんよね。

ですので神谷薫はリアルな明治初期の女性像ではなく、連載当時の世相に合わせたことがおわかりかと思います。

 

神谷薫のファッション

次に神谷薫の服飾を見てみましょう。

ポニーテールが女剣士らしい……というのはいかがなものか?

稽古の時はさておき、そうでなければ日本髪が妥当かとは思います。

これは他の女性キャラクターもそうなのですが、長髪はまとめるもの。つまりは、薫にせよ、高荷恵にせよ、あくまで平成においてかわいらしく見えるスタイルとなっています。

ポニーテールをまとめるリボンは、もっと後世、女学生が袴を履くようになってからのファッションです。

厳密な明治初期というよりも、連載当時の日本人がざっくりとイメージする【明治のお嬢様像】ですね。

さらに容赦ないツッコミをしますと……。

・着付けがきっちりしている(江戸時代までは緩かったものが、時代が降るにつれキツくなってゆく)

・ここまでしっかりした着付けは、むしろ昭和くらい(とはいえ映画やテレビも同程度なので仕方ないことでもある)

・生活が苦しい割には、いい着物を持っている(質入れせずに済んだ?)

・江戸っ子センスの割に、全体的に明るい(薫は未婚で若いとはいえ、当時の感覚としてはもっと年下の女児が着ているような色)

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剣心が真っ赤な着物の時点で、色合いについて突っ込んでも仕方ないんですけどね。

和月先生は努力家だと思います。

和柄をスクリーントーンなしで描くなんて、非常に大変なこと。連載当時はアナログですから、デジタルのようなブラシも使えなかったことでしょう。この時代ならではの、繊細さを感じる着物柄です。

なお、実写版はかなり落ち着いた色合いになっています。

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