『西郷どん完全版第壱集Blu-ray』/wikipediaより引用

西郷どん感想あらすじ

『西郷どん』感想あらすじ視聴率 第21回「別れの唄」

サブタイだけでわかる親切設計

ここで西郷どん、大久保の言葉を思い出します。
いくら【わっぜソウルフルなBGM】をかけられてもですね、もう、なんとも言えませんよ。

愛加那が子守唄を歌っています。

現在8時20分。
あと20分ウダウダして、8時40分に涙の別れをするんでしょう?

サブタイトルだけで、クライマックスの展開がわかる【親切設計】です。

愛加那は、大久保から預かったものを出してきます。

怖いから出せなかったと。
いや、子供みたいなこと言っていないでそこは素直に渡して欲しかった。

さて、その中身は斉彬の刀でした。

もうね、言葉も出ません。
肌身離さず持ち歩いていないと、ジェダイコスプレした斉彬ゴーストを召喚できない……とか、そういう話じゃなくて、あんなに大切にしていたものを家に置いてくるって。

月照と入水する直前に放棄したまま――という設定?

世の中には、やっていいことと、やってはならないことがあるはずで、斉彬の遺品となる刀をほっぽり出してよいもんでしょうか。
『おんな城主 直虎』で喩えるならば、井伊直虎が小野政次の碁石をなくしていたレベルのズッコケっぷりでは?

西郷どんの人生を貫く斉彬への忠誠心。
それは刀に集約されていたハズです。

楽しいビーチリゾートの前にすっかり忘れてしまった風に見えてしまいました。

 

嫌われたくないからって非情な決断をくだせないようでは……

愛加那は、頭を下げていた大久保のことを思い出します。

うーん、この退屈な展開がずーっと続くのかあ。なんだかな。

奄美大島の景色は綺麗ですけどね。
こんなことより【西郷どんのドコが薩摩の宝なのか?】を描いて欲しいです。

鳴り物入りっていう感じで出てきた小松帯刀への言及もほとんどないので、またモブが追加されたね、っていう感慨があります。

本作の人物って、初期コーエーシミュレーションゲームの、顔グラを使い回されている武将ばっかりの家みたいに思えます。
個性も何もかもがない。
あるのは8時40分までの時間稼ぎだけです。

西郷どんは藩に対して「流人のままでいたい」と手紙を書こうとします。
ここまで史実と真逆だと笑いがこみ上げてきます。そんな笑いは欲しくないんですけどね。

そして、本当に卑劣だなあと思うのが、西郷どんに「薩摩へ帰って欲しい」と愛加那に言わせるところ。
島妻にして欲しいというときもそうですし、今回もそう。

要するに、西郷どんを悪者にしたくないんですよ。

島妻を求めるのも、相手が言ってきたから。
島から戻るのも、相手が許すから。

マイナスの決断から西郷どんを守ることで、好感度を落とさないようにしている。

でも、それって逆効果でありません?
優柔不断にしか見えませんし、責任逃れにも見えてしまいます。

 

苦渋の選択は視聴者の共感を呼ぶはず

目の前で謀殺を見せつけられても、父についていくと決断した真田信繁。
家族との平穏な暮らしを捨ててでも、真田幸村としての道を選んだ男。
「地獄へは俺がゆく」と血のついた刃をぎらつかせながら、幼い子供の首を切った小野政次。
井伊家のために龍雲丸との別れを選んだ井伊直虎。

彼らは苦しみながらも、マイナスの選択をした。

それでも視聴者は彼らを嫌いになりませんでした。
ともに苦しみ、共感を寄せたのです。

西郷どんはそういう感情を揺さぶる苦渋の決断から逃げています。
常に受け身です。

肝心の恋愛にしたって、岩山糸も篤姫も愛加那も、いきなり惚れてきて、きれいに身を引きます。
人間的な魅力に惚れるというよりも、猫がマタタビの前でぐだーっとなるような、そういう反応をしているようにしか見えません。

岩合光昭さんと猫のほうが、よほどモテを描けていると思います。
火野正平さんと『日本縦断こころ旅』に出てくる皆さんでもよいですけど。

 

奄美大島で、西郷のどこがどう成長した?

こういうことばっかりしていて、雄大な自然の前で絵になるハグシーンを撮られても、時計の数字しか目に入りません。

そして時間は8時35分。
愛加那が時間稼ぎのために歌い出しました。がんばれ、あと5分だぞ!

この歌う場面が感動的でした、と明日のネットニュースには書かれるのでしょう。私はもっぱらタイムキーパーです。

奄美大島の風習や歌を出せば感動的になると、そう判断しているのですかね。
残念ながら、この作品はドラマです。観光用のビデオではありません。

そして旅立ちの日がやってきました。

これはものすごく大事なことの気がするのですが、奄美大島で西郷どんは人間的に成長しましたっけ?
確か、この島での生活が、西郷の人生のターニングポイントになるはずです。

やっぱり、来週以降、あまり期待しないで見守るしかなさそうですね。

そして8時40分、ほぼ時間きっかりに西郷どん、島を出立。
この調子で西南戦争までやるのか、それとも無理なのか。

期待はやっぱりできません。

 

MVP:西郷菊次郎

赤ちゃんは可愛らしいですね。

ちなみに原作では、西郷菊次郎が狂言回しの役回りです。
彼やその母である愛加那についても、ドラマより難しい立場がきちんと描かれております。

原作を素直に映像化しておけば、こんなことには……。

 

総評

さんざん本文で突っ込みましたが、本作は恋愛ドラマとしてもまったく駄目だなと思います。

本作を見ていて思い出した言葉。
それは「ラッキースケベ」。

優柔不断な主人公の前で、女の子のスカートがバッとめくれたり、落とし物を拾ったときに胸元がチラっと見えたりするアレです。

ああいう漫画では、物理法則をまげてでも、パンツや胸元がやたらと見えるように出来ています。

主人公が生きているだけで、女の子は顔を真っ赤に染めて、
「もう、西郷どんのエッチ!」
とか言い出す。そういう世界観ですな。

そんないちごパンツチラ見せ漫画と、本作のどこが似ているかといいますと……。

「主人公が自分から動かないのに、女の子は勝手に惚れて、勝手に身を引く」
という、ご都合主義そのものです。

主人公がスカートをめくったら、マイナスの行動だからよくないと思われてしまう。
でもパンツは見せたい。
だったら不思議な物理法則でパンツが見られるラッキーな状況を見せよう。というわけ。

岩山糸も篤姫も、そして愛加那も。
この手のかわいいけど、状況がよくわからないまま、さして魅力もない主人公にベタ惚れする。
そういうヒロインに思えます。

恋愛ドラマとしても、『花燃ゆ』以下の気がしてきました。

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著:武者震之助
絵:小久ヒロ

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【参考】
西郷どん感想あらすじ
NHK西郷どん公式サイト(→link)等

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