『西郷どん完全版第壱集Blu-ray』/wikipediaより引用

西郷どん感想あらすじ

『西郷どん』感想あらすじ視聴率 第22回「偉大な兄 地ごろな弟」

こんばんは。武者震之助です。

今週は、特にサブタイトルがひどい!

島津斉彬西郷隆盛の「偉大さ」を彼等自身の行動でもって伝えさせることなく、様々な登場人物に「語らせる」という手法がさんざん採用されてきましたが、今回のタイトルもドストレートですよね。

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奄美大島に3年いたから大島三右衛門

大久保一蔵の「吉之助さぁが帰ってくるぞ!」で盛り上がる精忠組からスタート。
3年ぶりの薩摩帰還となりました。

安政の大獄から桜田門外の変井伊直弼が殺され、幕府の権威が失墜と説明されるのですが……。

「倒幕」
「倒幕」
という二文字が出てきてウンザリです。

史実を頑なに守れ――とは申しませんが、倒幕の機運なんて高まっていないのに、なんだかえらい盛り上がっているような説明です。

『真田丸』に喩えるなら、伊賀越えの時点で家康が天下を狙っていたと言い張るレベルの無茶苦茶ぶり。
にもかかわらず久光の出兵が全国倒幕派の注目を集めていたとも説明されました。

そこへ大島三右衛門と改名した西郷の登場です。

奄美大島に三年間いたから三右衛門。
思わずクスッという視聴者さんもいたかもしれません。

鈴木亮平さんの肉付きが少しよろしくなってますかね。

 

「腐った政を正し、世を変えるのじゃ」

大久保のとりなしで久光に会う西郷の表情は、若干、硬い印象です。
最初から、面会を喜んでないような感じと申しましょうか。

久光は、斉彬の遺志を引き継いで上洛の計画を明かします。
これが妙な声色。
ずいぶんと低いトーンで、国父となった久光が調子にノッてる様子を表しているんですかね。

「腐った政を正し、世を変えるのじゃ」
とまで言わせます。

なーんか、久光のセリフ、不自然じゃありません?

と、思ったら、
これを真っ向から否定する西郷。

斉彬の考え方は斉彬の人徳や実力があったからこそできることであり、久光には無理――というわけです。

うん。それは納得。
ただ、ドラマが、あまりにも久光を悪く描いてきたというのが影響しているようで、実際は、兄の斉彬も江戸在住のときは頼むぞと書状を送るほど信頼してました。バカじゃないというより、キレる頭脳の持ち主です。それなのに……。

世の中のことを何も知らない久光が気の毒でならない。
そんな表情の西郷が語ります。

 

そもそも西郷もさほどに人脈あったっけ?

「斉彬様には同志が大勢おりました」

そして、このあと例の「地ごろ(田舎者)」発言へとつながるわけですが……ここも無茶苦茶です。

自分は松平春嶽と顔見知りとか西郷どんが言うんですけど。
顔がチラッと出てきただけでは?

そもそも、とても偉い人設定になってる松平春嶽のことを視聴者の皆さんは覚えていますかね?

津田寛治さんが演じられていて、橋本左内の藩主役。

井伊直弼と江戸城で面会するにあたり、一日中、ゴハンもないまま待たされて、水戸藩の徳川斉昭と一緒にヘロヘロになっていた方ですね。

結局のところ「安政の大獄」での処分シーンが甘く、したがって西郷どんが真剣に心を痛める場面がごくわずかだったため、こちら側もいまいちよくわからないことになっちゃってます。
幕末の歴史を知らない方には、かなり難易度の高い大河ドラマになってますよ。

それにこの「地ごろ」というただの暴言を、偉い人にガツンといってやったった!みたいに描く神経が信じられないです。

だって、結果的には久光の上洛は大成功。
幕末のターニングポイントになっているのですから。

ハッキリいって、西郷隆盛のこの一連の行動は、美化も擁護もできない部分。
難しいところですが、本作は一本調子で美化することで押し切りました。

 

仏頂面だったのに、新七には突然スマイルの不思議

久光との面会で、顔に泥を塗られたカタチの大久保。
その晩、吉之助を囲んで祝の宴を開こうというのに、中心人物の二人がしかめっ面で酒は全く進みません。

と、そこへ有馬新七がやってきます。

急に笑顔になって有馬に酒を注ぐ吉之助。

つーか、なぜ、今までそうなってなかった?

揉め事は最初から、一蔵と吉之助の問題であり、新七が来てあれだけ喜ぶ西郷なら、村田新八大山格之助、有村俊斎(海江田信義)らとも楽しく飲んでりゃいいだけの話じゃないんすかね。

予告でみなさんご存知だと思いますので言いますと、有馬新七は次回放送の寺田屋事件(寺田屋騒動)で主役となる人物であり、いわば特別感を出しておく必要があったのかもしれません。

そうでないと【なぜ、新七にだけ吉之助のリアクションが急にデカイのか?】問題がクリアできないんですよねー。

ただ、ここでも久光ディスりの流れは続いてまして。
「精忠組」のメンバーも「ラッキョウ顔のブサメンww」と笑いものにしており、久光に代わってコイツら全員成敗してえなと真剣に思ってしまいました。

 

久光と同じこと言ってるじゃん

有馬新七は、大久保から
「他藩の者とも書を交わし、よからぬことを考えてる」
と釘を差されます。

しかし、一歩も引かず、それどころか語気を荒げます。

「政を朝廷の手に取り戻す! そのために幕府を倒す!」
さすがに突然すぎやしません?
そして、今回の放送で、何度似たようなことを言うんでしょうか。

というか、久光と同じことを言っているため、両者が後に揉める理由が薄れてしまいます。

そもそも史実の有馬は、薩摩でも知れた秀才。
実際、明晰な頭脳とともに尊王攘夷へと傾倒していました。

有馬新七
有馬新七「おいごと刺せ!」幕末薩摩でも屈指の激しさだった生涯38年

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それが本作では、その部分はすべて省かれ、突然、倒幕ありきゴリゴリの尊王攘夷派なのですから、みなさんも驚かれたはず。

次回放送の「寺田屋事件」へと続くカウントダウンが、ここから始まったように思われますが、思想背景や政治状況をテキトーに処理してきたツケが周り、ただのキレやすい若者が暴発しているようにしか見えません。

島で高熱発したり、妊婦を海中に入れて抱き合ったり。そういういったシーン、本当に必要だったでしょうか?
あるいは今後も必要でしょうか?

どんな話にしたって水戸黄門の印籠のように
「倒幕」
とだけ出して終わり。

これなら『花燃ゆ』のときの松下村塾生のほうがまだマシという恐ろしさです。

 

久光との約束破って下関から京都へ

島津久光は、予定どおり出兵することにします。

事前に、わざわざ西郷の名前を挙げて、
「次は島流しで済まんぞ」
と脅す久光。

西郷は、村田新八と共に下関へ行き、そこで久光らの到着を待つことになりました。

その晩、有馬新七らは脱藩。

造士館の若手らと出ていく決意を固めたところへ、大久保一蔵が久光の手紙を携えて現れました。

「脱藩などをすれば処罰!」

それを全く気にしない有馬を、大久保は土下座して止めようとします。

と、これが全く効果なし。
大久保も、いざというところで失敗ばかりですよね。

維新三傑、ボロボロですやん。

 

商人白石の金で京都へ?

西郷どんは下関・白石正一郎邸に到着。
久光到着準備をととのえます。

白石もそこそこビッグネームですが、最近の出演が『花燃ゆ』と今年というのは不運としか言いようがありません。

白石正一郎
西郷や高杉が頼りにした尊皇商人・白石正一郎は新政府に見捨てられ

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西郷どんは、弟の西郷信吾(西郷従道)が京都で動いていると知ります。
白石から30両も持っていったようです。

ここから先、信吾のターンなんですけど……。

妙なノリノリBGMは一体何なのでしょうか。

ワケわからん。
入っていけません。

ここで出てくるのが、吉村虎太郎と久坂玄瑞です。

久坂もなあ……不運だよなあ。
この人も結局一番カッコよかったのが『八重の桜』から更新されそうにないです。

ここでおゆうという美人芸妓がでてきて、信吾が見惚れます。

本当にこういう水商売女に骨抜きにされる薩摩隼人描写ばっかり!

ど、ど、どこに需要が……。
薩摩人を馬鹿にしてません?

 

なぜかここで平野が初登場

久光が出兵すると、呼応するように倒幕の志士たちが立ち上がったそうです。

白石邸宅には、平野国臣と小川一敏。
おいおいおいおい!
平野を今更出すんかーーーーい!!

平野国臣は、西郷と月照が錦江湾に入水したとき、西郷を助けた福岡藩士です。それが突然なぜ?
別に、平野でなくとも良さそうな役どころです。

しかもこの人ら、倒幕するとかガバガバしたことを言い出していて、大丈夫なんですかね。

西郷どんは突出して白石邸をあとにして、京都へ。
久々にお虎に会います。

死んだはずの男だ――とコソコソしている描写のあとで、お虎が「西郷はぁ〜〜ん!」とデカイ声で呼びかけるからあまりに台無し。
近藤春菜さんの熱演に合わせてユーモラスなBGMが流れます。
死ぬほど、どうでもええ!

ただ、そこで弟のよろしくない行状を聞きます。
困る顔の西郷。
この信吾も、後の寺田屋事件に参加します。

 

こんなんでいいのか、小西郷

このあとは、西郷どんがキャバクラで遊ぶ弟を止めに行きます。

信吾は、おゆうにデレデレ。
なんというか、まるで魅力のない【小西郷】に成り下がっていて嫌になってきます。

そんな信吾を、吉之助は投げ飛ばします。
と、おゆうの背後に隠れて「助けてくれ」という、情けないにも程がある薩摩藩士・西郷信吾。

兄の【大西郷】には勝てないまでも、それでもすごい【小西郷】という意味なんですが、本作の見せ方ですと、本気で間違ってしまう方もおられるのでは?

しかも、芸者には評判のよい「金離れ」も、原資となっているのは奄美大島の黒糖地獄ということを早くも忘れてません、西郷どん?
顔の形が変わるまで鉄拳制裁でしょうに。

おゆうが西郷どんの噂を聞いているのもガバガバ。
セキュリティがガバガバ。
しかも遊郭でドタバタ大騒ぎするからもう無茶苦茶。

死んだはずの男ならちょっとは自重しましょう。おゆうにも西郷吉之助と名乗っていて、偽名の意味がナッシングという。

 

説得場面となれば、この手しかない!

兄弟で今日もギャーギャー叫び合っております。
説得スキルが絶望的にない西郷どんです。

信吾は、一瞬の隙を突いてトンズラします。

「お代はいくらなのか」とウンザリ顔の西郷に対し、おゆうは「お侍さんで払う人なんていません」と含んだ笑顔。

有馬新七の説得ターンへと続きます。

ここは場面として意味がありません。
どうせ来週が「寺田屋事件」ですから。

しかし!
脚本次第で、本来意味のないはずのシーンに意味を持たせられるのが、史実と違ってドラマのいいところ。

有馬が何を言うか。
西郷が何を言うか。
背後の若い志士たちはどんな表情を見せるか。

ただし、難しいですよね。
だって、有馬新七と西郷吉之助が魂を震わせるようなやり取りって今まで一切なかったですもん。

友情に訴える手はもう使えない(一蔵の土下座)。

と、思ったら、命を預ける――という、本作ど定番の一手でした。
途中、色々と話しますけど、最後には「オレを斬っていけ」というもの。

結局、それか……orz

見てる方も『斬るワケない』と思ってるから全然おもしろくない。
有馬に狂気性でもあれば、いや、吉之助、そういう状態の人に言ったらマズイよ……とドキドキできたのですが。

 

主人公を関わらせないと話が進まない問題

島津斉彬演じる渡辺謙さんのアドリブで「命を大事にしろ」と言われてそう頷いたり。
亡霊・謙さんの遺言まで破って入水したり。

命に関しての基準がブレブレだから視聴者の心も揺さぶられない。

なぜこういう(結果的に)意味がない(と思われた)シーンに時間を割くのでしょうね。
やるべきことは山積みなのに。

本作の致命的な欠点の一つに、主人公を関わらせないと話を転がせない、というものがあります。

本来ここは大久保と有馬のターン。

西郷どんの次ぐらいには大事な大久保のターンすら、西郷どんに使わせるってどういうことですか。
複合的視点で切り替えて行くスタイルのドラマからいろいろ学んで欲しいです。って、プロに言うことじゃないですけど。

 

しつこいぐらいの家族思いはもはやジャマ

このあと西郷どんは弟とお布団並べておやすみなさい。

もう、お腹いっぱいだよ(´・ω・`)
有馬の説得といい、これが本当にイイ場面だと思っているのでしょうか?

毎週西郷どんが家族思い友達思いのナイスガイだとしつこく描いていますけれども。それだけでは話は回りません。

いつものピアノ【わっぜよか場面用BGM】も入りますし、コレが今日のハイライトなんでしょうね。
ジャニーズファンサービスで数字確保ってことなんでしょうか。

で、白石邸で久光が西郷不在に怒ります。
切腹まで叫んでいるとか。

って、そりゃそうでしょーよ!

まぁ、史実どおりなんすけどね。
二度目の流罪が見えてきました。

次は、沖永良部島です。

 

MVP:島津久光

史実でってことかも。
ないごてらっきょう顔とか、馬鹿みたいなこと言われないといけないんですか。

本作の制作陣、ほんとうは島津が嫌いでしょ?

 

総評

アリだー!

 

懐かしのRPG『ロマンシング・サガ2』のプレイ動画をなぜ貼ったか?

と言いますのも、今週はまさにこれ。

地中から巨大アリが湧いてきて戦う、というものなんですけど、一応、選択肢として
【巣穴を塞ぐ】
もあるのです。

しかしあくまで一時しのぎ。
ボスを倒さないと無意味なのです。

今週は、この巣穴を塞ぐだけの作業を延々と見せられた気分なんですよ。

だって来週は「寺田屋事件」だもの。
信吾も有馬も、西郷どんの言葉なんて聞いていないんですよ。

本来は西郷がやってない「戊午の密勅」の件も、その首謀者になってましたが、本作には
【手柄どころか失敗を盛る】
という謎の主人公補正がかかります。

まったく理解できません。

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著:武者震之助
絵:小久ヒロ

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【参考】
西郷どん感想あらすじ
NHK西郷どん公式サイト(→link)等

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