大黒屋光太夫

江戸時代

3700kmを漂流し10年かけて帰国~大黒屋光太夫はロシアで何を見た?

人生いつ何が起きるかわかりません。

ちょっとした行き違いで何もかもダメになってしまうこともあれば、偶然出会った人や物と一生関わることもありますよね。

本日は江戸時代のそんな「未知との遭遇」のお話です。

文政11年(1828年)4月15日はロシア帝国に漂着し、無事に帰国することができた大黒屋光太夫の命日です。

当時はまだ鎖国バリバリの時代。

一度、国外へ出たら最後、二度と戻れないという過酷な状況だったはずなのに、なぜ帰ってくることができたのか。

その生涯を振り返ってみましょう。

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大黒屋光太夫 いきなり約3,700kmも漂流

大黒屋光太夫は伊勢(現・三重県)出身の輸送船・船長。

江戸へ向かう途中、駿河沖あたりで暴風に遭遇してしまったのは天明2年(1782年)のことでした。

それから流れ流れてアリューシャン列島のアムチトカ島に漂着したというのですが……ナンボなんでも流れ方がダイナミックでしょーよ!

グーグルマップで直線距離を計ってみたところ約3,700kmという恐ろしい数字で「事実は小説より奇なり」を地でいっています。

途中で陸地とか見えなかったんでしょうか……というより、よく生きてここまで辿りつけましたよね。

ジョン万次郎の【土佐沖→鳥島(約700km)】の比じゃないゾぉおおお……。

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小舟を作って帰国しようとしたが……

細かい話は置いておくとして、大黒屋光太夫が何とかしてたどり着いた先は全くの異国です。

当然ながら、途方に暮れたことでしょう。

しかし、アムチトカ島の先住民や、狩りに来ていたロシア人と仲良くなり、さらにはロシア語を覚えたことで、光太夫たちは帰国の糸口をつかみます。

この辺のコミュ力、ぱねぇっすね。

人間追い込まれると、馬鹿力を発揮するということでしょうか。

光太夫は、四年ほどそのまま暮らし、漂着から数年後、その辺の材料を使って小船を作り、何とか帰ろうと船出します。

ところがどっこい。北の海は「やらせませんよ!」とばかりに帰国を阻みます。

そして、途中で知り合ったロシア人も加わり、いつしか光太夫たちが主導して陸地を目指すという、何ともしまらない感じになりました。

「だめだこいつら、早くなんとかしないと」と思ったんですかね。

災害時の日本人は強いといわれますが、漂着もそのうちに含まれるんでしょうか。

 


女帝・エカチェリーナ2世にも謁見!

次の船出は何とか成功し、オホーツクからは陸路で西へ向かったようです。

ロシアの領土ほぼ横断とか人間のやることじゃない(褒め言葉)。

そして光太夫一行は、途中のイルクーツクという町で、またしてもロシア人の協力者に恵まれました。

キリル・ラクスマンという博物学者です。

キリルは常日頃から日本に興味を抱いていたそうで、降って湧いた日本人のために骨を折ってくれました。

彼は元々、ときのロシアの女帝・エカチェリーナ2世やお偉いさんとも会ったことがあるくらいの学者さんだったので、光太夫らも大喜び。

さっそく連れ立って首都・サンクトペテルブルクに向かいます。

エカチェリーナ宮殿/photo by Stan Shebs wikipediaより引用

そしてキリルのおかげで無事あのスゴイ女帝にも謁見が叶い、しばらく時間はかかったものの、光太夫たちの帰国は許されます。

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再び彼らが日本の地を踏んだのは、寛政四年(1792年)のことでした。

降り立ったのが根室港だったので、松前藩経由で幕府に報告をしています。

そして寛政五年(1793年)のこの日9月18日に将軍家斉に謁見、ロシアから持ち帰った諸々を献上したというわけです。

大黒屋光太夫が描いたという日本地図/wikipediaより引用

光太夫が持ち帰ったものの中には、ロシアから日本へ通商を求める手紙も含まれていました。

ときの老中・松平定信はこれを好機と捉えたか。

光太夫をツテにしてロシアとの交渉を考えていたようです。実現する前に失脚してしまいましたが。

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ただ、ロシア側からの使者だったキリルの息子アダム・ラクスマンも、帰国&エカチェリーナ2世の死後失脚しているので、どっちにしろ頓挫していたかもしれませんね。

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